3月10日(金)バッハ・コレギウム・ジャパン 第121回定期演奏会
J. S. バッハ:教会カンタータ・シリーズ vol.71
~ルター500プロジェクトⅢ~
東京オペラシティコンサートホール タケミツメモリアル
【曲目】
♪バッハ/前奏曲とフーガ ロ短調 BWV544
♪バッハ/「心よりわれこがれ望む」BWV727
♪バッハ/「我ら苦しみの極みにある時も」BWV641
Org:鈴木優人
♪ ♪ ♪
♪シュッツ/葬送の音楽Op.7~「平安と喜びをもって、私は逝こう」
♪プレトリウス/使者たるポリュヒュムニアと讃歌~「平安と喜びをもって、私は逝こう」
♪ヴァルター/コラール「キリストは、死の縛めにつきたもう」
1. バッハ/カンタータ第125番「平安と歓喜もて われはいま」BWV125
2. バッハ/カンタータ第33番「ただ汝にのみ、主イエス・キリストよ」BWV33
3. バッハ/カンタータ第1番「深き苦悩の淵から、私はあなたを呼びます」BWV1
【演 奏】
S松井亜希/A:ダミアン・ギヨン(カウンターT)/T:櫻田 亮/B:ドミニク・ヴェルナー
鈴木雅明 指揮 バッハ・コレギウム・ジャパン
宗教改革500周年を記念して2年に渡って行われているシリーズ「ルター500プロジェクト」の3回目は、いよいよ記念の年を迎えての公演となった。
演奏された3つのカンタータはどれも深い信仰と結びついた作品だが、性格は三者三様に異なる。BCJは、これ以上望むものはないほどのクオリティーの高さで、それぞれのキャラクターを見事に捉え、それぞれの空気、色、香りを伝え、音楽に宿る魂を呼び覚ますような演奏を聴かせてくれた。折しも、東日本大震災の日がまた巡りくる日にかけて東京と神戸で2日間に渡って行われることになったこの演奏会は、メンバーの思いも込められ、演奏にも特別な意味が加わった。カンタータの前に演奏された、関連のオルガン作品とコラールも、この祈りの「儀式」により明確な意味を与えた。
救いがもたらされたことを、歓びを以て見届け、心静かに死を受け入れる覚悟が歌われる125番は、魂が厳かに、穏やかに、昇華して行くような静謐さで満たされ、孤高の美しさを湛えた演奏だった。名高いコラールをベースに進む冒頭合唱では、穏やかに満たされた気分が心のヒダに染み入り、ダミアン・ギヨンが歌ったアルトのアリアは、死を前にした厳粛さがひしひしと静かに胸に迫ってきた。
苦難のなかで救いを求める33番は、一心に神様にすがる真剣さ、張りつめた厳しさに貫かれていた。ここでもダミアン・ギヨンの研ぎ澄まされた歌唱が心の琴線に触れた。
そして、マリアの受胎の歓びを歌う珠玉の名作の1番では、冒頭合唱から終結コラールまで、終始柔らかな光を放ち、伸びやかに生き生きと歌い上げ、幸福感で心を満たしてくれた。とりわけ心に響いたのは、松井亜希さんの歌ったアリア。柔らかな色香を湛え、希望の光が天から優しく降り注いでくるようだった。
BCJが奏で、歌うバッハを聴いていると、演奏者一人一人が心を一つにして輪を作り、大きな福音をもたらすように感じられる。そのメッセージは謙虚でありながら確信に満ちている。言葉を伴わない楽器の演奏でも、短いフレーズの一つ一つが明確な言葉として雄弁に語りかけてくる。それは、メンバーの一人一人がイエスの使徒であるかのよう。僕はクリスチャンではないが、BCJの演奏を聴いていると、揺るぎのない清らかで温かな思いで心が満たされるのを感じ、何より、バッハの音楽の崇高さ、美しさを無条件で実感するのだ。
これほどの優れた演奏でバッハのカンタータを、この日本で身近に聴けることの幸運に感謝したい。
バッハ・コレギウム・ジャパン 第113回定期演奏会 2015.6.6 東京オペラシティ
CDリリースのお知らせ
さびしいみすゞ、かなしいみすゞ ~金子みすゞの詩による歌曲集~
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2. バッハ/カンタータ第33番「ただ汝にのみ、主イエス・キリストよ」BWV33
3. バッハ/カンタータ第1番「深き苦悩の淵から、私はあなたを呼びます」BWV1
【演 奏】
S松井亜希/A:ダミアン・ギヨン(カウンターT)/T:櫻田 亮/B:ドミニク・ヴェルナー
鈴木雅明 指揮 バッハ・コレギウム・ジャパン
宗教改革500周年を記念して2年に渡って行われているシリーズ「ルター500プロジェクト」の3回目は、いよいよ記念の年を迎えての公演となった。
演奏された3つのカンタータはどれも深い信仰と結びついた作品だが、性格は三者三様に異なる。BCJは、これ以上望むものはないほどのクオリティーの高さで、それぞれのキャラクターを見事に捉え、それぞれの空気、色、香りを伝え、音楽に宿る魂を呼び覚ますような演奏を聴かせてくれた。折しも、東日本大震災の日がまた巡りくる日にかけて東京と神戸で2日間に渡って行われることになったこの演奏会は、メンバーの思いも込められ、演奏にも特別な意味が加わった。カンタータの前に演奏された、関連のオルガン作品とコラールも、この祈りの「儀式」により明確な意味を与えた。
救いがもたらされたことを、歓びを以て見届け、心静かに死を受け入れる覚悟が歌われる125番は、魂が厳かに、穏やかに、昇華して行くような静謐さで満たされ、孤高の美しさを湛えた演奏だった。名高いコラールをベースに進む冒頭合唱では、穏やかに満たされた気分が心のヒダに染み入り、ダミアン・ギヨンが歌ったアルトのアリアは、死を前にした厳粛さがひしひしと静かに胸に迫ってきた。
苦難のなかで救いを求める33番は、一心に神様にすがる真剣さ、張りつめた厳しさに貫かれていた。ここでもダミアン・ギヨンの研ぎ澄まされた歌唱が心の琴線に触れた。
そして、マリアの受胎の歓びを歌う珠玉の名作の1番では、冒頭合唱から終結コラールまで、終始柔らかな光を放ち、伸びやかに生き生きと歌い上げ、幸福感で心を満たしてくれた。とりわけ心に響いたのは、松井亜希さんの歌ったアリア。柔らかな色香を湛え、希望の光が天から優しく降り注いでくるようだった。
BCJが奏で、歌うバッハを聴いていると、演奏者一人一人が心を一つにして輪を作り、大きな福音をもたらすように感じられる。そのメッセージは謙虚でありながら確信に満ちている。言葉を伴わない楽器の演奏でも、短いフレーズの一つ一つが明確な言葉として雄弁に語りかけてくる。それは、メンバーの一人一人がイエスの使徒であるかのよう。僕はクリスチャンではないが、BCJの演奏を聴いていると、揺るぎのない清らかで温かな思いで心が満たされるのを感じ、何より、バッハの音楽の崇高さ、美しさを無条件で実感するのだ。
これほどの優れた演奏でバッハのカンタータを、この日本で身近に聴けることの幸運に感謝したい。
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