3月5日(木)エサ=ペッカ・サロネン指揮 フィルハーモニア管弦楽団
川口リリア・メインホール
【曲目】
1.シベリウス/交響詩「フィンランディア」Op.26
2• ブラームス/ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 Op.77
【アンコール】
バッハ/無伴奏ヴァイオリンパルティータ 第3番ハ長調~「ジーグ」
Vn:ヒラリー・ハーン
3. ベートーヴェン/交響曲第3番「英雄」変ホ長調 Op.55
【アンコール】
シベリウス/悲しきワルツ
サロネン指揮フィルハーモニア管弦楽団の演奏会を聴くのは2年ぶり。魅力的なプログラムな上に、ブラームスのコンチェルトを大好きなヒラリー・ハーンが弾くコンサートが、リリアならサントリーと比べてA席で5000円も安く聴けるので、これは買いだ!と決めた。
最初の「フィンランディア」で熱気のある濃密な音がホールを満たした。「粘り」と「伸び」が際立ち、それが不思議なパワーとして結集し、大きなものを楽々と動かして行くよう。底力を備え、彫りが深く、パッションが炸裂する充実した演奏だった。アクロバティックなパフォーマンスで目立ったティンパニ奏者も印象深い。
続いてヒラリーが登場。5年前には同じ組み合わせでチャイコフスキーを聴いたが、ブラームスとヒラリーとの相性は更にいい。ヒラリーのヴァイオリンは変わらぬ格調の高さを湛え、淀みない口調で音を紡いでゆく。その紡がれるヴァイオリンの歌には、たっぷりの滋養が含まれた「おいしい」味わいがあり、それまでのヒラリーのヴァイオリンに、ふくよかな響きが加わったように感じた。サロネン/フィルハーモニア管はここでもたっぷりと濃い味を聴かせた。第2楽章の管楽アンサンブルなども出色の出来で、全ての演目を通じてオーボエの抒情豊かな味わいのある歌が印象に残った。
残念だったのは、空調の音だろうか?終始低音の弱いノイズが会場全体に響いていて、演奏に集中できなかったこと(後述)。おかげでせっかくのヒラリーのアンコールも台無しになってしまった。
後半の「エロイカ」で、サロネンは前半とは全く違うアプローチを見せた。2年前に聴いたベートーヴェン(7番)と共通するが、音楽の構造を細かく分け、それぞれのパーツの「味」と「風味」を聴(効)かせつつ、全体を再構築する。気の利いたコントラストをつけ、快調なテンポで軽快に進んで行った。楽器ではバルブのないナチュラルトランペットと、小ぶりなティンパニが前半とは異なっていたが、その他はモダン楽器のままでのピリオド的なアプローチ。
最も心に迫ってきたのは第2楽章。音楽の短いパーツがそれぞれ少しずつ違う表情で切々と語りかけてきて、それがじわりじわりと心の奥に入り込んで来た。その一方で、快調に進んでいくところではもっとアグレッシブなパンチ力が欲しくなった。ガツンと重量級のパンチが欲しいところで軽石が飛んでくるような軽さ、これはどうも物足りない。すっきりと軽快に、楽しげな気分で進むにしても、ガツンと一発決めるところは決めてほしかった。
「悲しきワルツ」は2年前と同じアンコール。ここでは一転して香りと哀愁を湛えたしっとりしたホレボレする演奏だった。
前半の会場のノイズの話に戻るが、休憩時間にダメもとでホールの人に「何とかしてほしい」と訴えた。そのおかげか、後半の「エロイカ」の第2楽章あたりからノイズは気にならなくなった。静寂が鍵となるようなアンコールも堪能することができ、ホール側の迅速な対応には感謝したい。しかし!前半が台無しになってしまったことは取り返せない。以前井上陽水のライブをこのホールで聴いたときにハウリング音に悩まされた記憶が蘇ってしまった(あれはホールの責任ではないが)。完全な静寂が求められるクラシックの演奏会では、空調音などには特に気を配ってもらいたい。「安かろう悪かろう」になってしまっては悲しい。
サロネン指揮 フィルハーモニア管弦楽団 2013.2.7 東京オペラシティコンサートホール
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川口リリア・メインホール
【曲目】
1.シベリウス/交響詩「フィンランディア」Op.26
2• ブラームス/ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 Op.77
【アンコール】
バッハ/無伴奏ヴァイオリンパルティータ 第3番ハ長調~「ジーグ」
Vn:ヒラリー・ハーン
3. ベートーヴェン/交響曲第3番「英雄」変ホ長調 Op.55
【アンコール】
シベリウス/悲しきワルツ
サロネン指揮フィルハーモニア管弦楽団の演奏会を聴くのは2年ぶり。魅力的なプログラムな上に、ブラームスのコンチェルトを大好きなヒラリー・ハーンが弾くコンサートが、リリアならサントリーと比べてA席で5000円も安く聴けるので、これは買いだ!と決めた。
最初の「フィンランディア」で熱気のある濃密な音がホールを満たした。「粘り」と「伸び」が際立ち、それが不思議なパワーとして結集し、大きなものを楽々と動かして行くよう。底力を備え、彫りが深く、パッションが炸裂する充実した演奏だった。アクロバティックなパフォーマンスで目立ったティンパニ奏者も印象深い。
続いてヒラリーが登場。5年前には同じ組み合わせでチャイコフスキーを聴いたが、ブラームスとヒラリーとの相性は更にいい。ヒラリーのヴァイオリンは変わらぬ格調の高さを湛え、淀みない口調で音を紡いでゆく。その紡がれるヴァイオリンの歌には、たっぷりの滋養が含まれた「おいしい」味わいがあり、それまでのヒラリーのヴァイオリンに、ふくよかな響きが加わったように感じた。サロネン/フィルハーモニア管はここでもたっぷりと濃い味を聴かせた。第2楽章の管楽アンサンブルなども出色の出来で、全ての演目を通じてオーボエの抒情豊かな味わいのある歌が印象に残った。
残念だったのは、空調の音だろうか?終始低音の弱いノイズが会場全体に響いていて、演奏に集中できなかったこと(後述)。おかげでせっかくのヒラリーのアンコールも台無しになってしまった。
後半の「エロイカ」で、サロネンは前半とは全く違うアプローチを見せた。2年前に聴いたベートーヴェン(7番)と共通するが、音楽の構造を細かく分け、それぞれのパーツの「味」と「風味」を聴(効)かせつつ、全体を再構築する。気の利いたコントラストをつけ、快調なテンポで軽快に進んで行った。楽器ではバルブのないナチュラルトランペットと、小ぶりなティンパニが前半とは異なっていたが、その他はモダン楽器のままでのピリオド的なアプローチ。
最も心に迫ってきたのは第2楽章。音楽の短いパーツがそれぞれ少しずつ違う表情で切々と語りかけてきて、それがじわりじわりと心の奥に入り込んで来た。その一方で、快調に進んでいくところではもっとアグレッシブなパンチ力が欲しくなった。ガツンと重量級のパンチが欲しいところで軽石が飛んでくるような軽さ、これはどうも物足りない。すっきりと軽快に、楽しげな気分で進むにしても、ガツンと一発決めるところは決めてほしかった。
「悲しきワルツ」は2年前と同じアンコール。ここでは一転して香りと哀愁を湛えたしっとりしたホレボレする演奏だった。
前半の会場のノイズの話に戻るが、休憩時間にダメもとでホールの人に「何とかしてほしい」と訴えた。そのおかげか、後半の「エロイカ」の第2楽章あたりからノイズは気にならなくなった。静寂が鍵となるようなアンコールも堪能することができ、ホール側の迅速な対応には感謝したい。しかし!前半が台無しになってしまったことは取り返せない。以前井上陽水のライブをこのホールで聴いたときにハウリング音に悩まされた記憶が蘇ってしまった(あれはホールの責任ではないが)。完全な静寂が求められるクラシックの演奏会では、空調音などには特に気を配ってもらいたい。「安かろう悪かろう」になってしまっては悲しい。
サロネン指揮 フィルハーモニア管弦楽団 2013.2.7 東京オペラシティコンサートホール
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