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クリスティアン・テツラフ 無伴奏ヴァイオリン・リサイタル

2024年10月12日 | pocknのコンサート感想録2024
10月7日(月)クリスティアン・テツラフ(Vn)
紀尾井ホール

【曲目】
1.バッハ/無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第2番二短調 BWV1004
2.バッハ/無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第3番ハ長調 BWV1005
♪ ♪ ♪
3.クルターグ/「サイン、ゲームとメッセージ」~
 「バッハへのオマージュ」、「タマーシュ・ブルムの思い出」、「無窮動」、「カレンツァ・ジグ」、「悲しみ」、「半音階の論争」
4.バルトーク/無伴奏ヴァイオリン・ソナタ Sz.117
(アンコール)
♪ バッハ/無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第2番イ短調 BWV1003~第3楽章アンダンテ

過去にコンチェルトとカルテットで聴いたことのあったテツラフのヴァイオリンを、今夜は無伴奏のソロリサイタルで聴いた。譜面台が1台置かれただけのステージに登場したテツラフにスポットが当たり、そこでヴァイオリンを奏でる姿と演奏からは「孤高」という言葉が浮かんだ。

バッハの無伴奏が始まって最初に浮んだイメージは、細い筆でさらさらと綴る美しい草書体の文字。その線は格調高く、伸びやかでスマートで勢いがある。音をひとつひとつ刻むのではなく、滑らかに連ね、速いテンポでフレーズを塊として捉える。その塊が連なっていくのを聴き進んでいくと、筆書きのスマートなイメージから、もっと立体的で力強いダイナミックな音像がイメージされるようになった。先月ベルリンのノイエ・ヴァッヘでケーテ・コルヴィッツ作の「戦争で死んだ息子を抱く母親像(ピエタ)」を観たときの静謐で研ぎ澄まされた感覚が蘇ってきた(写真)。


テツラフのヴァイオリンの音は骨太ではなく、細くて強くて研ぎ澄まされた音だ。そんな音で奏でられるバッハのパルティータ第2番の速いテンポの楽曲での、息もつかせず前のめりに突き進む切迫感は誠にリアル。「シャコンヌ」では力強くしっかりと刻まれるテーマと、それを取り巻く、スリリングなほど滑るように速いパッセージが一体となって大きな起伏を作り出した。その一方で、ソナタ第3番のラルゴでは、澄み切った音で極上の柔らかな調べを奏でた。終楽章は快速に進む中にも彫塑的な彫りの深さがあり、それが確かな手ごたえとして響いてきた。

プログラム後半に置かれたのはハンガリーの作曲家、クルターグとバルトークの作品。クルターグの短い曲はどれもエモーショナルな音楽。テツラフは無駄のないアグレッシブなアプローチでそれぞれの曲の息吹を生々しく表現した。バルトークの無伴奏では、様々な技巧を駆使して、厳しさや優しさ、緩徐楽章では静謐な空気など、実に多彩な表現を聴かせた。多声部を明晰なコントラストで弾き分けるだけにとどまらず、声部間では緊迫したバトルが繰り広げられた。一瞬の隙もなく、一音も聴き逃してはいけないという気持ちになるライブならではの醍醐味に溢れた演奏だった。

これまで殆ど聴いたことがなかったバルトークの無伴奏ヴァイオリン・ソナタがこれほどの名曲であると感じることが出来、この世には一生かけても聴き切れない未知の音楽の宝があることを実感した。

P.ヤルヴィ指揮ドイツ・カンマー・フィル(Vn:C.テツラフ)2014.12.11 東京オペラシティ
テツラフ・カルテット 2014.10.7 紀尾井ホール

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