4月28日(土)杉谷昭子(Pf)
クラウディオ・アラウへのオマージュ Vol.1
~アラウ最後の弟子~
浜離宮朝日ホール
【曲目】
♪シューマン/歌曲集「リーダークライス」Op.39~「異郷にて」(キルヒナー編曲)、「春の夜」(リスト編曲)
♪シューマン/歌曲集「ミルテの花」Op.25~「献呈」(リスト編曲)
♪シューマン/幻想曲 ハ長調Op.17
♪リスト/コンソレーション 第3番、
♪リスト/巡礼の年 第1年 スイス~ 第6曲「オーベルマンの谷」
♪ショパン/ノクターン 嬰ハ短調 遺作
♪ショパン/マズルカ イ短調 Op.67-4、Op.17-4
♪ショパン/エチュード ハ短調 Op.10-12 「革命」
♪ショパン/ワルツ 変ニ長調 Op.64-1 「子犬」
♪ショパン/ポロネーズ 変イ長調 Op.53 「英雄」
【アンコール】
♪カルディッロ/カタリ・カタリ
♪ファリャ/火祭りの踊り
♪シューマン/トロイメライ
先週聴いた北川暁子のリサイタルで配られたチラシでこのリサイタルを知った。杉谷昭子も北川暁子同様に、新聞や音楽雑誌の演奏評で、特にブラームスに高い評価を得ているのを何度も読み、北川暁子と並んで、何十年もずっと聴いてみたいと思いながら年月だけが過ぎて行ったもう一人のピアニスト。ブラームスではないが、同類の匂いを持つシューマンもやるし、この機会に長年の「夢」を実現させるべくチケットを購入した。
最初に置かれたのはシューマンの歌曲が3曲。このうち2曲目と3曲目はとてもゆっくりとしたテンポで、ひとつひとつのフレーズを慈しむように歌い紡いでいった。その演奏スタイルは大作の幻想曲でも受け継がれた。様々な表情が入り組んだこの曲を、それぞれのシーンによって弾き分け、ゆっくりめのテンポを基調に、各声部の細部に至るまで丁寧に描いて行く。杉谷さんの曲への思い入れが演奏の隅々にまで伝わってくるが、極端にロマンティシズムに溺れることはなく、むしろ多用されるルバートでも各声部の音はクリアに聴こえてきた。反面、音楽の大きな流れをつかみにくいところもあった。
プログラム後半はリストで始まった。2曲弾いたリストのうち、「オーベルマンの谷」での、深い闇へと沈んで行く演奏が印象に残った。この深くメランコリックな表現は、ショパンの2つのマズルカで更に匂やかで切ない詞情を湛えて語りかけてきた。シューマンの時よりもルバートは少なくむしろ淡々と進むのは、マズルカという舞曲の形式もあるのかも知れないが、そのシンプルさがかえって心に訴えてきた。
アンコールでの「カタリ・カタリ」や「火祭りの踊り」では熱くたぎる情熱がストレートにこみ上げてくるピアノで、杉谷さんの別の一面も体験することができた。
クラウディオ・アラウへのオマージュ Vol.1
~アラウ最後の弟子~
浜離宮朝日ホール
【曲目】
♪シューマン/歌曲集「リーダークライス」Op.39~「異郷にて」(キルヒナー編曲)、「春の夜」(リスト編曲)
♪シューマン/歌曲集「ミルテの花」Op.25~「献呈」(リスト編曲)
♪シューマン/幻想曲 ハ長調Op.17
♪リスト/コンソレーション 第3番、
♪リスト/巡礼の年 第1年 スイス~ 第6曲「オーベルマンの谷」
♪ショパン/ノクターン 嬰ハ短調 遺作
♪ショパン/マズルカ イ短調 Op.67-4、Op.17-4
♪ショパン/エチュード ハ短調 Op.10-12 「革命」
♪ショパン/ワルツ 変ニ長調 Op.64-1 「子犬」
♪ショパン/ポロネーズ 変イ長調 Op.53 「英雄」
【アンコール】
♪カルディッロ/カタリ・カタリ
♪ファリャ/火祭りの踊り
♪シューマン/トロイメライ
先週聴いた北川暁子のリサイタルで配られたチラシでこのリサイタルを知った。杉谷昭子も北川暁子同様に、新聞や音楽雑誌の演奏評で、特にブラームスに高い評価を得ているのを何度も読み、北川暁子と並んで、何十年もずっと聴いてみたいと思いながら年月だけが過ぎて行ったもう一人のピアニスト。ブラームスではないが、同類の匂いを持つシューマンもやるし、この機会に長年の「夢」を実現させるべくチケットを購入した。
最初に置かれたのはシューマンの歌曲が3曲。このうち2曲目と3曲目はとてもゆっくりとしたテンポで、ひとつひとつのフレーズを慈しむように歌い紡いでいった。その演奏スタイルは大作の幻想曲でも受け継がれた。様々な表情が入り組んだこの曲を、それぞれのシーンによって弾き分け、ゆっくりめのテンポを基調に、各声部の細部に至るまで丁寧に描いて行く。杉谷さんの曲への思い入れが演奏の隅々にまで伝わってくるが、極端にロマンティシズムに溺れることはなく、むしろ多用されるルバートでも各声部の音はクリアに聴こえてきた。反面、音楽の大きな流れをつかみにくいところもあった。
プログラム後半はリストで始まった。2曲弾いたリストのうち、「オーベルマンの谷」での、深い闇へと沈んで行く演奏が印象に残った。この深くメランコリックな表現は、ショパンの2つのマズルカで更に匂やかで切ない詞情を湛えて語りかけてきた。シューマンの時よりもルバートは少なくむしろ淡々と進むのは、マズルカという舞曲の形式もあるのかも知れないが、そのシンプルさがかえって心に訴えてきた。
アンコールでの「カタリ・カタリ」や「火祭りの踊り」では熱くたぎる情熱がストレートにこみ上げてくるピアノで、杉谷さんの別の一面も体験することができた。