12月8日(金)
グルック/歌劇「オルフェオとエウリディーチェ」(1774年 パリ版)
~北とぴあ国際音楽祭2017~
北とぴあ・さくらホール
【配役】
オルフェオ:マティアス・ヴィダル/エウリディーチェ:ストゥキン・エルベルス/アムール:鈴木美紀子
【ダンス】ラ ダンス コントラステ 【振付】中原麻里
【管弦楽&合唱】
寺神戸 亮 指揮レ・ボレアード
【舞台監督/プロダクション・マネージャー】大平久美
【照明デザイン】加藤 学【映像デザイン】高橋啓祐【衣装】武田園子
北とぴあ国際音楽祭の目玉、レ・ボレアードによるオペラ公演は毎年楽しみに出かけている。今年の演目「オルフェオとエウリディーチェ」は以前やったかも、と思ったが、あれはモンテヴェルディの「オルフェオ」だった。でもグルックのこの有名なオペラ、レ・ボレアードならとっくにやっていてもよさそうなだけに、オケも合唱もとても手慣れた感があった。
ただ「手慣れた感」とは、必ずしもポジティブな表現として使われるわけではない。今夜の寺神戸亮指揮のレ・ボレアードの演奏は、優美で自然な息遣いはいいが、前半ではいつも聴かせてくれる溌剌とした生気がいまひとつ。突っ込み、パッション、アグレッシブな熱気といったもので物足りなさを感じた。これは歌手も同様で、出番が突出して多いオルフェオ役のヴィダルの歌も、張りと輝きのある美声を聴かせはするが、もつひとつ訴えかけてくるものが乏しく、妻の死を嘆く様子や、黄泉の国へ迎えに行く場面での本気度が足りない気がした。瑞々しく張りのある合唱は充実していたが…
しかし、休憩後の後半では、オケも歌もテンションが高まってきた。黄泉の国からオルフェオがエウリディーチェを連れ帰ろうとする場面での二人の葛藤は、緊迫感や焦燥感が募り、テンションが高まった。そして、掟を破って振り返ってしまい、エウリディーチェをもう少しのところで失ってしまったオルフェオが歌う悲しみのアリア「エウリディーチェを失って」での、胸の奥底から、情愛がこもった悲しみが溢れ出るヴィダルの表現力は絶品だった。この美しい、一見甘いラブソングにも聴こえる歌が、こんなにも悲しみ迫る音楽であることが伝わった。寺神戸亮指揮のレ・ボレアードの演奏も熱く胸に迫ってきて歌を盛り立て、最初の「手慣れた感」という印象は消え去った。その後もオケは合唱と共にとても冴えた演奏を聴かせ、物語が終わったあと、バレエ付きで演奏される後奏も、溌剌とした生気に溢れていて、オペラは大いに盛り上がって幕となった。
ただ、全体を振り返ってみると、いつものレ・ボレアードのオペラ公演と比べて、物足りなさやある種の不満は否めない。物足りなさは、前半でのオケのテンションの低さと、あと2人の歌手のインパクトの薄さ。それに、「パリ版」による上演ということで、ふんだんに登場したラ ダンス コントラステによるバレエ自体は良かったが、「セミ・ステージ形式」であるためオケがピットに入らず、手狭なステージで、時には合唱団も一緒になって所狭しと踊り回るため、せわしない印象を与えた。
「霞」をステージに送り出す送風の音が気になったのも不満だったが、何よりの不満は、終始ステージ後方のスクリーンと、天井から垂れ下がる布に投影されたCGによる様々な模様の動画だ。これははっきり言って邪魔だった。これほど雄弁なグルックの音楽や歌に一体どんな「説明」を付け加える必要があるのだろうか。音楽に集中したいのに、絶えず後方で色んな模様がうごめいていて、集中力が削がれ、最後の方は目を閉じて音楽に耳を傾けた。オペラ公演であってもやはり主役は音楽だ。演出は、音楽の盛り立て役に徹してもらいたいものだ。今回は「セミ・ステージ形式」で欲張り過ぎたことが不満要因を助長してしまった気がしてならない。
レ・ボレアードの「ドン・ジョヴァンニ」~北とぴあ国際音楽祭2016より~(2016.11.25 北とぴあ・さくらホール)
♪ ♪ ♪
スタバ王子駅前店でのサプライズミニライブ
開演前、王子駅前のスタバに入ったら、店員さんが席を回って「開店17周年記念」ということで、豆乳とショウガ入りコーヒーを、手書きのメッセージカードと共に配りに来た。ここのスタッフはみんなにこやかで感じがいい。
それから、店員さんの一人がギターを抱え、弾き語りによるミニライブが始まった。クリスマスソングや尾崎豊のカバー曲に、17周年の感謝を込めたオリジナルソングなどを披露して、飾り気のない澄んだキレイな声が和やかな空気を運び、最初は戸惑っていた風のお客さんもだんだん乗って来た。最後は再びオリジナル曲を手拍子と共にみんなで合唱。一人でちょっと恥ずかしかったが僕も声を合わせ、お店を出るとき、歌ってくれた店員さんに「覚えましたよ!」と歌を交えて声をかけたら、とても嬉しそうにしてくれた。スタバみたいな、マニュアル重視のチェーン店で出会ったアットホームなおもてなしに心がほっこりした。あの「♪すぺしゃる・うぇるかみんぐ」のフレーズが今も頭の中で流れている。
CDリリースのお知らせ
さびしいみすゞ、かなしいみすゞ ~金子みすゞの詩による歌曲集~
拡散希望記事!STOP!エスカレーターの片側空け
グルック/歌劇「オルフェオとエウリディーチェ」(1774年 パリ版)
~北とぴあ国際音楽祭2017~
北とぴあ・さくらホール
【配役】
オルフェオ:マティアス・ヴィダル/エウリディーチェ:ストゥキン・エルベルス/アムール:鈴木美紀子
【ダンス】ラ ダンス コントラステ 【振付】中原麻里
【管弦楽&合唱】
寺神戸 亮 指揮レ・ボレアード
【舞台監督/プロダクション・マネージャー】大平久美
【照明デザイン】加藤 学【映像デザイン】高橋啓祐【衣装】武田園子
北とぴあ国際音楽祭の目玉、レ・ボレアードによるオペラ公演は毎年楽しみに出かけている。今年の演目「オルフェオとエウリディーチェ」は以前やったかも、と思ったが、あれはモンテヴェルディの「オルフェオ」だった。でもグルックのこの有名なオペラ、レ・ボレアードならとっくにやっていてもよさそうなだけに、オケも合唱もとても手慣れた感があった。
ただ「手慣れた感」とは、必ずしもポジティブな表現として使われるわけではない。今夜の寺神戸亮指揮のレ・ボレアードの演奏は、優美で自然な息遣いはいいが、前半ではいつも聴かせてくれる溌剌とした生気がいまひとつ。突っ込み、パッション、アグレッシブな熱気といったもので物足りなさを感じた。これは歌手も同様で、出番が突出して多いオルフェオ役のヴィダルの歌も、張りと輝きのある美声を聴かせはするが、もつひとつ訴えかけてくるものが乏しく、妻の死を嘆く様子や、黄泉の国へ迎えに行く場面での本気度が足りない気がした。瑞々しく張りのある合唱は充実していたが…
しかし、休憩後の後半では、オケも歌もテンションが高まってきた。黄泉の国からオルフェオがエウリディーチェを連れ帰ろうとする場面での二人の葛藤は、緊迫感や焦燥感が募り、テンションが高まった。そして、掟を破って振り返ってしまい、エウリディーチェをもう少しのところで失ってしまったオルフェオが歌う悲しみのアリア「エウリディーチェを失って」での、胸の奥底から、情愛がこもった悲しみが溢れ出るヴィダルの表現力は絶品だった。この美しい、一見甘いラブソングにも聴こえる歌が、こんなにも悲しみ迫る音楽であることが伝わった。寺神戸亮指揮のレ・ボレアードの演奏も熱く胸に迫ってきて歌を盛り立て、最初の「手慣れた感」という印象は消え去った。その後もオケは合唱と共にとても冴えた演奏を聴かせ、物語が終わったあと、バレエ付きで演奏される後奏も、溌剌とした生気に溢れていて、オペラは大いに盛り上がって幕となった。
ただ、全体を振り返ってみると、いつものレ・ボレアードのオペラ公演と比べて、物足りなさやある種の不満は否めない。物足りなさは、前半でのオケのテンションの低さと、あと2人の歌手のインパクトの薄さ。それに、「パリ版」による上演ということで、ふんだんに登場したラ ダンス コントラステによるバレエ自体は良かったが、「セミ・ステージ形式」であるためオケがピットに入らず、手狭なステージで、時には合唱団も一緒になって所狭しと踊り回るため、せわしない印象を与えた。
「霞」をステージに送り出す送風の音が気になったのも不満だったが、何よりの不満は、終始ステージ後方のスクリーンと、天井から垂れ下がる布に投影されたCGによる様々な模様の動画だ。これははっきり言って邪魔だった。これほど雄弁なグルックの音楽や歌に一体どんな「説明」を付け加える必要があるのだろうか。音楽に集中したいのに、絶えず後方で色んな模様がうごめいていて、集中力が削がれ、最後の方は目を閉じて音楽に耳を傾けた。オペラ公演であってもやはり主役は音楽だ。演出は、音楽の盛り立て役に徹してもらいたいものだ。今回は「セミ・ステージ形式」で欲張り過ぎたことが不満要因を助長してしまった気がしてならない。
レ・ボレアードの「ドン・ジョヴァンニ」~北とぴあ国際音楽祭2016より~(2016.11.25 北とぴあ・さくらホール)
スタバ王子駅前店でのサプライズミニライブ
開演前、王子駅前のスタバに入ったら、店員さんが席を回って「開店17周年記念」ということで、豆乳とショウガ入りコーヒーを、手書きのメッセージカードと共に配りに来た。ここのスタッフはみんなにこやかで感じがいい。
それから、店員さんの一人がギターを抱え、弾き語りによるミニライブが始まった。クリスマスソングや尾崎豊のカバー曲に、17周年の感謝を込めたオリジナルソングなどを披露して、飾り気のない澄んだキレイな声が和やかな空気を運び、最初は戸惑っていた風のお客さんもだんだん乗って来た。最後は再びオリジナル曲を手拍子と共にみんなで合唱。一人でちょっと恥ずかしかったが僕も声を合わせ、お店を出るとき、歌ってくれた店員さんに「覚えましたよ!」と歌を交えて声をかけたら、とても嬉しそうにしてくれた。スタバみたいな、マニュアル重視のチェーン店で出会ったアットホームなおもてなしに心がほっこりした。あの「♪すぺしゃる・うぇるかみんぐ」のフレーズが今も頭の中で流れている。
CDリリースのお知らせ
さびしいみすゞ、かなしいみすゞ ~金子みすゞの詩による歌曲集~
拡散希望記事!STOP!エスカレーターの片側空け