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足繁く通う演奏会の感想等でクラシック音楽を追求/面白すぎる台湾/イタリアやドイツの旅日記/「ドイツ留学相談室」併設

草津夏期国際音楽アカデミー&フェスティヴァル2012(8/27)

2012年08月27日 | pocknのコンサート感想録2012
今年の第33回草津夏期国際音楽アカデミー&フェスティヴァルは、僕がローラント・バーダーの合唱クラスに参加にするために初めてここを訪れた年から数えて30回目にあたる。その頃と比べればはるかに充実したホールや練習場で、当時と変わらぬ活発で内容の濃いレッスンやコンサートが連日続く涼しい草津で、関先生の別荘にご厄介になりながら、コンサート、マスタークラス、公開レッスンの聴講と、音楽三昧の2日間を楽しんだ。



8月27日(月)ウェルナー・ヒンクが弾くモーツァルト:ディヴェルティメント ニ長調
草津音楽の森国際コンサートホール

【曲目】
1. モーツァルト/デュポールのメヌエットによる9つの変奏曲ニ長調 K.573(オルガン独奏版)
2.モーツァルト/ヴァイオリンとバスのためのトリオ(アダージョとメヌエット)変ロ長調 K.266(271f)
3.モーツァルト/フルート四重奏曲 ト長調 K.285a
4.モーツァルト/フルート四重奏曲 ニ長調 K.285
5.モーツァルト/行進曲ニ長調 K.290(167AB)&ディヴェルティメント ニ長調 K.205(167A)

【アンコール】
同上の行進曲

【演 奏】
Vn:ウェルナー・ヒンク、パオロ・フランチェスキーニ(2)/Fl:ウォルフガング・シュルツ/Vla:ルカ・ラニエリ/CB:クラウス・シュトール/Fg:岡崎耕治/Hrn:森雅彦、高野哲夫/Org:クラウディオ・プリツィ


今日の演奏会は、このフェスティバルの常連客ともいえる天皇、皇后が臨席するということで、車はホールから1.5キロほど手前までしか入れず、そこからはホールまで歩くハメに(本当はホールまでのシャトルバスがあったが、交通規制を見越して早めに来たので歩くことにした)。

演奏会はフルートの名手シュルツを迎え、嬉しいオールモーツァルトプロ。常連のヒンクに加え、コントラバスにベルリン・フィルを定年となったシュトールが初登場というのも魅力。

最初はおなじみプリツィのオルガンで、愛らしいデュポールのバリエーション。普段はビアノで演奏されるこの曲を、プリツィはレジストレーションを駆使して、多彩な音色の楽しいアンサンブル作品に仕立て上げた。お茶目な表現を散りばめて、会場の雰囲気をなごませ、演奏会の前口上としても効果を上げた。

続く弦楽三重奏は、名手が3人揃った割りには精彩を欠く演奏だった。瑞々しさや活力の欠けたモーツァルトは気の抜けたビールのようだが、シュルツを迎えて演奏された続くプルート四重奏曲では弦も持ち直してきた。中でもシュトールのコントラバスがいい。軽やかで楽しげに低音がスウィングし、アンサンブルに生気を与えていた。シュルツのフルートはもっと活きがほしいが、柔らかで細やかなニュアンスの表情が耳を引いた。4人が寄り添いながら心を合わせて親密なアンサンブルを紡いでいく姿に好感を持った。

休憩後、両陛下を迎えて演奏されたニ長調のフルートカルテットでは、俄然演奏に生気が加わったのはエンペラー効果だろうか。アンサンブルはより伸びやかになり、ヒンクのヴァイオリンも語り口の味わい深さと共に瑞々しさが出てきた。シュトールは相変わらず楽しげなスウィングが冴えていたが、この曲ではヴィオラのラニエリが存在感を発揮した。密度の濃い音でくっきりとフレーズを描き出し、アンサンブルの要の役目を担っていた。シュルツは本調子とは言えないものの、フルートから醸し出されるニュアンスのさじ加減はさすがに絶品。柔らかく優しい音色は天使の歌声をイメージさせた。4人によるアンサンブルの親密度がより深まり、呼吸もとても自然で、天上で戯れているような幸福感がこの曲にはいかにも相応しい。

最後のディヴェルティメントも、肩の力が抜け、伸び伸び活き活きとしたいい演奏だった。自然な息遣いで、プレイヤー達がアンサンブルを楽しんでいる様子が伝わってきた。モーツァルトをこんな風にリラックスして楽しく演奏できるのは、6人のプレイヤーが卓越した腕前とセンスを持ち合わせていることは間違いないが、ウィーン・フィルで長年コンマスを勤めたヒンクのさりげないフィーチャーが一役買っていたのだろう。 シュトールの活きのいいコントラバスはここでも光っていたが、これに岡崎さんのファゴットが加わることで、バスラインにツヤとコシが出て、全体がより充実した響きになった。アンコールで再演した行進曲は更にノリノリの演奏になり、楽しい気分でコンサートを終えた。


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