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ラモーのオペラ「プラテ」 ~北とぴあ国際音楽祭2014より~

2014年11月07日 | pocknのコンサート感想録2014
11月7日(金)ラモー/歌劇「プラテ」
~北とぴあ国際音楽祭2014~
北とぴあ・さくらホール
【配役】
プラテ:マティアス・ヴィダル(T)/アムール、ラ・フォリー:ベツァベ・アース(S)/サティール、ジュピテル:フルヴィオ・ベッティーニ(Bar)/ジュノン:小野和歌子(MS)/シテロン:与那城敬(Bar)/メルキュール:安冨泰一郎(T)/クラリーヌ:鈴木美紀子(S)/モミュス:小笠原美敬(B)/タリー:高橋美千子(S)/テスピス:石川洋人(T)他
【演出】寺神戸亮

【演奏】寺神戸亮指揮レ・ボレアード

寺神戸亮率いるレ・ボレアードによるバロック~古典オペラ上演は、毎年の北とぴあ国際音楽祭での目玉公演。今年は、没後250年という記念の年を迎えたラモーのオペラが取り上げられた。この作品に接するのは初めてだったが、素晴らしい音楽と演奏だった。

寺神戸さん自らが書いたとても詳しく分かりやすい解説にあるように、ラモーの音楽は切れ味がよく比類ない。高いセンスと軽妙なウィットがそこここに散りばめられ、コメディータッチのこのオペラの面白さ、楽しさだけでなく、人間の深い喜怒哀楽を巧みかつ自然に伝える。ソロだけでなくアンサンブルや合唱の活躍の場も多く、そこで歌われる言葉は、フランス語の発音やリズムの特徴を、巧みに面白く音楽に取り入れる効果も見事。そしてオーケストラパートの充実ぶりが素晴らしい。バレエを想定したような長い聴かせどころがいくつも用意されていて、歌と器楽を総動員して、哀れで健気な水の精のカエル、プラテをめぐる物語がドラマチックに繰り広げられていった。

そしてこのオペラの上演の担い手達がまた素晴らしかった。海外からも著名な歌手を招いて盤石の布陣で臨んだ歌手陣はもちろんだが、特筆したいのが寺神戸率いるレ・ボレアードの演奏。管弦楽は軽妙な語り口で瑞々しい歌とハーモニーを奏で、また、おどけた仕草や激しい感情の高揚の表現も見事。更には動物の鳴き声や嵐の様子など、ありとあらゆる描写を実にリアルで鮮やかに聴かせ、あらゆるシーンで当意即妙に歌を盛り立てる。

合唱の明るく澄んだ響きと生き生きと溢れ出る生命力も、一度聴くと忘れられないほどの鮮烈なイメージを残す。少人数の合唱だが、オペラの大切なシーンの担い手として大きな存在感を示していた。これほど優れた音楽集団が、年に一度の北区の音楽祭のために結成されたというのはすごいことだが、レ・ボレアードのメンバーの多くがバッハ・コレギウム・ジャパンなどで活躍する、とりわけこの時代の演奏に長けた強者どもの集まりとなれば、その腕前に納得。

指揮の寺神戸亮もBCJでコンサートマスターを勤めているが、この公演では見事な指揮ぶりだけでなく、オペラの一役者としても大活躍。カツラや衣装まで身に付けた名演技が客席を沸かせた。この人、こんなオモロイキャラだったんだ!
優れた歌手陣のなかでも特に印象に残ったのは、主役プラテ役のマティアス・ヴィダル。硬軟巧みに織り混ぜた機転の利く名唱が、笑いを誘う名演技と共に心に残った。

この公演はセミ・ステージ形式ということで、オケはピットでなくステージ後方に陣取り、セットとしては椅子などの小道具と後方スクリーンでの映像の投影に絞られたが、制約がある中で客席フロアまで使い、音楽に合わせて動きのある生き生きした舞台を作り出していた。ただ、合唱のメンバーによるダンスや傘を開閉するパフォーマンスが「一糸乱れぬ」とまでは行かなかったのは仕方ないとして、器楽だけの間奏が「ちょっと長いな」と感じたのは、そこでの視覚的な面白さが乏しかったせいかも知れない。

このオペラ公演がとても充実したものだったことに疑いの余地はないのだが、良い公演の後に感じる幸福度や満足度は高いとは言えない。それは、今夜の出演者のせいではなく、主人公プラテへの余りに無慈悲な扱いに引っかってしまったせい。ジュピテルとの婚礼の場に嫉妬心を燃やしたジュノンが、プラテの素顔を見たときの「この容姿じゃ相手にもならない」というあからさまな反応や、それに輪をかけて揶揄する周囲…

プラテは道化役だし、寺神戸さんが解説で書いているように「打たれてもあの元気だったら彼女は大丈夫」という見方もあるだろうが、いじられるだけいじられ、ただ馬鹿にされるのを面白がるストーリーに、現代のいじめの問題が重なってしまったのは大袈裟だし場違いかも知れない。ただ、もしモーツァルトがこの台本に作曲していたら、きっとプラテにも心からの愛情を注いだに違いない、なんて思ってしまった。

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2 コメント

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プラテ (一静庵)
2014-11-13 16:52:28
私も観ました。
演奏の素晴らしさと、寺神戸さんのキャラにおどろきました
でもなんだか後味がすっきりしないと思ったことは、pocknさんのご感想を読んで、そうだと納得しました。
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Re:プラテ (pockn)
2014-11-14 16:43:46
一静庵さん、お久しぶりです!
同じ気持ちでいらしたのですね。プラテには最後に
かわいいプラティーナちゃんをあてがってあげれば
ハッピーエンドになりますが、それはこのオペラの趣旨に反してしまうんでしょうか…
返信する

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