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井上陽水 LIVE 2012

2012年04月12日 | pocknのコンサート感想録2012
4月12日(木)
井上陽水 LIVE 2012 
Hello, Goodbye

~川口総合文化センターリリア~

曲目
東へ西へ、 Power Down、 Make-up Shadow、 ボクの事務所はCAMP、MAP、自然に飾られて、なぜか上海、海へ来なさい、夏まつり、リバーサイドホテル、ジェラシー、愛の装備、クレイジーラブ、新しいラプソディー、最後のニュース、ミスキャスト、氷の世界、少年時代
アンコール
渚にまつわるエトセトラ、Happy Birthday、招待状のないショー、いっそセレナーデ、夢の中へ

陽水の歌を初めて意識して聴いたのは70年代半ばの中学のとき。小学生の頃は歌謡曲ばかり聴いていた僕にとって、陽水の歌の世界は大きな衝撃だった。FM放送をチェックして、夜中にヘッドホンで初めて「心もよう」を聴いたときは、金縛りにあったように身じろぎひとつできずに陽水の歌の世界に引きずり込まれる感覚を味わったことを鮮明に覚えている。

歌謡曲はもちろん、その頃ニューミュージックと呼ばれ、陽水と同系列のジャンルにくくられていたほかの歌からは明らかに隔絶した孤高のオリジナリティーが、曲からも詩からも臭い立っていた。当時はテレビには絶対出なかったし、ラジオにも滅多に出ることなく、ライブ盤のMCで聞く陽水の肉声は、無口で不機嫌そうで近寄りがたい雰囲気を漂わせていたことも、孤高のイメージを強めた。レコードもずいぶん買ったし、FM番組をチェックしてはカセットにエアチェック(録音)して聴いた。

麻薬事件で一時活動を休止した前後で、陽水の音楽は孤高で厭世的な世界からサウンドも一変した。昔の陽水を懐かしみながらも、新しい陽水の魅力も感じ、アルバム「9.5カラット」なんかは相当聴き込んだ。その後もヒット曲を次々と世に送り出す陽水の衰えぬ創作力は誰もが知るところ。

陽水はクラシック以外では一番よく聴いてきたアーティストであるにもかかわらず、ライブは一度も行ったことがなかった。去年の暮れ、初めて山下達郎のライブに行って感動したとき、ふと「そう言えば陽水のライブに行ったことないな~、行きたいな~」と思い立った。テレビで聴く陽水の声は、もうだいぶ前から昔に比べればやっぱり高音はちょっと辛そうなところもあるし、今のうちに聴いておかねば、という思いもあった。そして今回のツアーの先行予約に応募したら、すんなりチケット2枚を取ることができた。

川口リリアで行われたライブは全国ツアーの初日。会場も満員で熱気に包まれていた。よくあんな簡単にチケットが取れたものだ。席は1階の一番後ろ近くだったが、そんなバカでかくないこのホールならオペラグラスなしでも十分楽しめる。バンドメンバーに続き陽水がステージに登場、初めて陽水をナマで見てやっぱり感動。オープニングは「東へ西へ」。早速会場は手拍子で盛り上がる。「♪目覚まし~時計は~」のところでは「パン・パ・パン」と手拍子のリズムを変えると思ったが、そんな聴衆間のルールはないようで、同じ調子が続いた。でも最初から気分はノリノリ!

陽水は、最近でこそいろいろしゃべるが、イメージとしてはやはり無口。今夜のライブもMCは殆どなく、あっても短かった。ということで殆ど歌い続け。嬉しかったのは、最近の曲は知らない曲もいっぱいあるはずだが6割以上は知っている曲を歌ってくれたこと。5人編成のバンドの充実したサウンドをバックに歌われる歌もよかったし、唯一、アコースティックギター一本で弾き語りしてくれた「夏まつり」では、「ひと昔、ふた昔」よりはるか昔の日に瞬時に連れて行かれた。NHKの「ぶらタモリ」でおなじみの「MAP」の、マリンバのトレモロに乗ってたゆたう世界も心地いい。「最後のニュース」での淡々としていながらぐさりと心に突き刺さってくる言葉の力にも圧倒された。終盤は音程を上げていたが、同じ調子で最後まで通したほうが逆に効果的だとは思ったが…

名曲「少年時代」を歌い終えた陽水は、客席に手を振って退場。「えっ? もうおしまい?」と思って時計を見たら、もう8時45分過ぎ。まだ1時間ぐらいしか経っていないように思えたほどあっという間の1時間45分。でも、その後アンコールを立て続けに5曲もやってくれた。「Happy Birthday」で客席はスタンディング。僕らの座っていた後方は立つ人が少なかったが、ここは立ちあがって手拍子に加わった。ロマンチックな2曲を挟んで、最後の「夢の中へ」では後方の客席も総立ちとなり、ステージと客席は完全一体となって熱く盛り上がった!

陽水の数々の歌を久しぶりにまとめて、しかも初めてのライブで聴いて、井上陽水というアーティストは、作曲にも作詞にも稀有の才能を持ち、それを余すことなく使いこなすスキルにも長けた超ビッグアーティストであることを改めて思い知った。音楽と詩の多様性やメッセージ性は、一人のアーティストのものとは思えないほど広くて深い。そして、それを歌として伝える声と歌いまわしの素晴らしさ!若い頃の声の張りと持続力はそりゃあ多少は後退しても、それに代わって余りある歌いまわしの妙は、オペラ歌手が歳を重ねてリートの世界で聴く者の心を深く捉えることがあるのと同じだ。こうして深化を続けるアーティストのライブにはまた是非来たいと思った。

超迷惑!ありえないハウリング

このライブではあり得ないことが起きた。コンサートが始まる前から、会場にはキーンという超高音のハウリング音が鳴っていた。これはコンサートが始まっても止まず、結局最後の最後まで鳴り続けていた。「気になる」のを超えて「苦痛」だった。特に静かな曲では音楽が台無しになってしまった。演奏の間隙を縫って、少ないMCの時に大急ぎで近くのドアマンのところまで行って訴えたが無駄だった。

田舎の公民館のカラオケ大会じゃああるまいし、ハウリングを出さないなんて音響の基本中の基本だろう。いったいこのコンサートの主催者はどうなっているんだろうか。陽水を聴きに来るのは中高年が多いし、この周波数の音は聞こえないとでも思っていたとしたらとんでもない話だ。あんまり気にしすぎてはせっかくのコンサートが楽しめなくなってしまうので、途中からはあきらめてコンサートに没頭するようにしたが、プロの仕事としてはあり得ない。

終演後、あらためてスタッフに苦情を伝えた。応対したスタッフによれば、ハウリングは確かに出ていて気になったが、コンサートが進行してしまってどうしようもなかった、とのこと。殆ど説明にはなっていないが、今後は絶対このようなことは起こらないようにする、という言葉と、名前を名乗ってとりあえず応対には誠意が感じられたので暴れるのはやめておいた。

それにしても、他のお客はこの音、気にならなかったんだろうか?絶対会場中に聞えていたはずだ。「ハウリングなんとかしろー!」ぐらい叫ぶ客がいても良さそうだが、大人しくしているのがポップス系コンサートのマナーなのだろうか。でも、おれみたいに途中でスタッフに訴える人が他にもう少しいれば、途中で改善されたかも知れないではないか。いいコンサートはお客も一緒に作っていくべき。聴衆はもっと声を上げたほうがいいのでは?

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2 コメント

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ハウリングについて (坂本千夏)
2012-04-20 11:36:01
私も川口ライブに伺いましたので、貴殿のライブレポートを興味深く拝見させていただきました。私もジェラシーあたりからハウリングで頭痛がしてきて、ライブを楽しむどころではなくなってきました。他の方々が音響について言及されないので、貴殿のブログを拝見して、力を得た次第です。
陽水ライブの音響は。ご指摘の通り余り褒められたものではありません。最近は、諦めの境地で……。でも、陽水の声が、年齢を重ねて変化しているだけに、悔しくてなりません。
クラシックでなくとも、他の方のライブ等では無いような酷い音響と言ったら語弊があるでしょうか?でも、それが、陽水ライブの実情です。ファンは何時まで我慢しなければならないのでしょうか?
あ、長々、愚痴を申し上げて失礼しました。又、今後とも宜しくお願い申し上げます。
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Re: ハウリングについて (pockn)
2012-04-20 17:11:10
坂本千夏さま
川口のライブから1週間以上が過ぎましたが、あのハウリングのことはこちらのブログにも全く反響はなく、他のブログを眺めても誰も触れていないので、もしかすると多くの人はあれが聞こえなかったのかと諦めかけていたところに、コメントを頂けて救われました。

陽水のライブにはよく行っていらっしゃるご様子、これまでも同様なことに悩まされていたと知り、驚きを禁じ得ませんが、僕としては、当日クレームに応対したスタッフの方の約束を信じ、次に期待したいとは思っています。

陽水のライブはまだ1度だけしか行っていませんが、どうぞよろしくお願いいたします。
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