6月10日(木)ブラームスのピアノ四重奏曲全曲演奏会
~紀尾井の室内楽 vol.24~
紀尾井ホール
【曲目】
1.ピアノ四重奏曲第1番ト短調Op.25
2.ピアノ四重奏曲第3番ハ短調Op.60
3.ピアノ五重奏曲第2番イ長調Op.26
Vn:樫本大進/Vla:川本嘉子/Vc:趙静/Pf:小菅 優
今僕が最も注目しているピアニストの小菅優と、ベルリン・フィルのコンサートマスターに就任して躍進目覚しい樫本大進が出演するうえに、ヴィオリスト、チェリストとして真っ先に名前が上がりそうな川本嘉子と趙静が出演してブラームスのビアノカルテットを3曲全部やるというコンサート、これは絶対聴き逃せない今年トッブクラスの買いだ。会場にはNHKのテレビカメラが入っていた。
4人のプレイヤーはみんな素晴らしかったが、今夜の演奏会はやっぱり小菅優を抜きには語れない。最初の第1番、ユニゾンで演奏される冒頭数小節のシンプルなピアノを聴いただけで、小菅優ならではの魅力が即座に聴こえてきた。それは磨かれて引き締まった音と、今まさに音が生まれ出たような新鮮さ。小菅のピアノは演奏会を通してアンサンブルの表でも裏でも、どんなに弱音のパッセージを弾いていても生き生きとした存在感を示し、アンサンブルの呼吸を司っているように見える。
アンサンブルのいい波に乗って余裕の表情で楽しそうにノリノリで弾いている姿や、第1番の終楽章に出てくるカデンツァ風のパッセージを、激しい情熱を込めて一息で弾き上げてしまう鮮やかさなんてアルゲリッチみたい!
樫本のヴァイオリンも素晴らしい。弓の根元から先端まで伸び伸びと自由に使いこなし、色彩感のある濃厚な音でしなやかに生き生きと奏でる。ピアノと弦との掛け合いになると俄然リーダーシップを発揮し、ピアノと弦のスリリングなやりとりを先導する。川本のヴィオラも相変わらず頼もしい。ハッとするような豊かな音色で、熱くて深い歌を何度も聴かせてくれた。趙静のチェロの素晴らしさを一番感じたのは、やっぱり第3番の第3楽章だ。裾の広がったロングドレスを着こなした美女が、優雅な舞を踊っているような、美しくしなやかで気高い歌が聴こえてきた。
そんな4人が奏でるブラームスのピアノカルテットは、4人がそれぞれの腕前を発揮しながら、ひとつの彫刻作品を仕上げていくよう。彫りの深い線が、くっきりと活き活きと、しなやかなカーブを描いて刻まれ、立体感とムーヴマンのある像が姿を現す。
第1番の終楽章や第3番の第2楽章で聴かせたようなエネルギッシュでスリリングな演奏も本当にすごいが、こうした彫像的な造形美の活き活きとした表現や、第3番の3楽章で聴かせてくれたようなデリケートで優美な世界の表現こそ、他が真似できないこのアンサンブルならではの境地だと思う。これほどの魅力溢れる充実しきった演奏に、聴衆はブラボーと大きな拍手で反応したが、ヨーロッパならきっとスタンディングオヴェーションものだろう。ブラームスの室内楽演奏の頂点に立つのではないだろうか。 質・量ともにボリューム満点の演奏会をこなした彼らの体力と気力にも脱帽。
第1番と3番はなじみがあったが、第2番は聴いたことはあるはずだが殆ど記憶に残っていなかった。音楽は長大でちょっとばかり難物。これ1曲が後半に置かれた訳がわかった。NHKで放送したら録音してじっくりまたこの曲を、他の2つとあわせて聴いてみたい。それと、今夜と同じメンバーでブラームスが書いた珠玉のソナタ(ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ)も是非聴いてみたくなった。
~紀尾井の室内楽 vol.24~
紀尾井ホール
【曲目】
1.ピアノ四重奏曲第1番ト短調Op.25
2.ピアノ四重奏曲第3番ハ短調Op.60
3.ピアノ五重奏曲第2番イ長調Op.26
Vn:樫本大進/Vla:川本嘉子/Vc:趙静/Pf:小菅 優
今僕が最も注目しているピアニストの小菅優と、ベルリン・フィルのコンサートマスターに就任して躍進目覚しい樫本大進が出演するうえに、ヴィオリスト、チェリストとして真っ先に名前が上がりそうな川本嘉子と趙静が出演してブラームスのビアノカルテットを3曲全部やるというコンサート、これは絶対聴き逃せない今年トッブクラスの買いだ。会場にはNHKのテレビカメラが入っていた。
4人のプレイヤーはみんな素晴らしかったが、今夜の演奏会はやっぱり小菅優を抜きには語れない。最初の第1番、ユニゾンで演奏される冒頭数小節のシンプルなピアノを聴いただけで、小菅優ならではの魅力が即座に聴こえてきた。それは磨かれて引き締まった音と、今まさに音が生まれ出たような新鮮さ。小菅のピアノは演奏会を通してアンサンブルの表でも裏でも、どんなに弱音のパッセージを弾いていても生き生きとした存在感を示し、アンサンブルの呼吸を司っているように見える。
アンサンブルのいい波に乗って余裕の表情で楽しそうにノリノリで弾いている姿や、第1番の終楽章に出てくるカデンツァ風のパッセージを、激しい情熱を込めて一息で弾き上げてしまう鮮やかさなんてアルゲリッチみたい!
樫本のヴァイオリンも素晴らしい。弓の根元から先端まで伸び伸びと自由に使いこなし、色彩感のある濃厚な音でしなやかに生き生きと奏でる。ピアノと弦との掛け合いになると俄然リーダーシップを発揮し、ピアノと弦のスリリングなやりとりを先導する。川本のヴィオラも相変わらず頼もしい。ハッとするような豊かな音色で、熱くて深い歌を何度も聴かせてくれた。趙静のチェロの素晴らしさを一番感じたのは、やっぱり第3番の第3楽章だ。裾の広がったロングドレスを着こなした美女が、優雅な舞を踊っているような、美しくしなやかで気高い歌が聴こえてきた。
そんな4人が奏でるブラームスのピアノカルテットは、4人がそれぞれの腕前を発揮しながら、ひとつの彫刻作品を仕上げていくよう。彫りの深い線が、くっきりと活き活きと、しなやかなカーブを描いて刻まれ、立体感とムーヴマンのある像が姿を現す。
第1番の終楽章や第3番の第2楽章で聴かせたようなエネルギッシュでスリリングな演奏も本当にすごいが、こうした彫像的な造形美の活き活きとした表現や、第3番の3楽章で聴かせてくれたようなデリケートで優美な世界の表現こそ、他が真似できないこのアンサンブルならではの境地だと思う。これほどの魅力溢れる充実しきった演奏に、聴衆はブラボーと大きな拍手で反応したが、ヨーロッパならきっとスタンディングオヴェーションものだろう。ブラームスの室内楽演奏の頂点に立つのではないだろうか。 質・量ともにボリューム満点の演奏会をこなした彼らの体力と気力にも脱帽。
第1番と3番はなじみがあったが、第2番は聴いたことはあるはずだが殆ど記憶に残っていなかった。音楽は長大でちょっとばかり難物。これ1曲が後半に置かれた訳がわかった。NHKで放送したら録音してじっくりまたこの曲を、他の2つとあわせて聴いてみたい。それと、今夜と同じメンバーでブラームスが書いた珠玉のソナタ(ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ)も是非聴いてみたくなった。