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WESTERN MOUNTAINEERING BISON GWS

2011-01-01 00:00:00 | キャンプグッズ


槍ヶ岳をバックに、陰干し中のバイソン

私は寒がりですので、シュラフだけは多少重くても暖かいものを担ぎ上げるようにしてます。
長い山行での酷い疲れや体調を崩したら、まず寝ることです。駐車場まで10時間もかかるようなところでは、そうするしかありません。

ですので、シュラフは非常に重要な携行品として自分は位置づけています。




そこで今回紹介しますのが、WESTERN MOUNTAINEERINGのBISON GORE Wind Stopper(ウェスタンマウンテニアリング・バイソン)というモデルです。
オーダー時にサイズとジッパーを左右どちらにするのかが選択できます。
GORETEX WINDSTOPPER (GWS)のシェルに、850フィルパワーの良質なダウンが封入されており、極地での使用を想定したモデルです。

私は同社のPumaというモデルをICI石井の神保町店で買い求めてから20年近く使っており、当時の価格で13万円もしたのを覚えています。
その後、Pumaの上位モデルにあたる同社のトップラインとしてこのバイソンが登場しました。

まず驚いたのが、そのPumaがまだ同社のラインナップにあること、そして、そのPumaと比較して、Bisonはボックス構造が全く同じということです。
それほど同社はこのデザインに自信があるのでしょう。

他社は数年もしないうちに、構造をあれこれと改良と称して試行錯誤している中、
この頑固なまでのこだわりは、さすがは多くの遠征隊をサポートしてきた自信の現れといえます。



Bison Super DL(赤)と20年使用してもまだ現役のPuma Super DL(青)


ここで紹介するバイソンの購入は2006年。まだゴアもしっかりしていて、あと10年は使えると考えると、
コストパフォーマンスは良いと思います。


なぜ、Bisonは900フィルパワーではなく、850なのか?

バイソンのダウンロフトは850FPだそうですが、個人的にはこのフィルパワーというものは購入動機として当てにはしてません。
20年前は、750FPくらいが最高だったのですが、今や、850、いや900という勢いでどこまでいくのでしょう。

実は、このフォルパワーはかなりトリッキーなものだったりするのをご存知でしょうか?

2006年以前の検査法で850FPとされたダウンを、新しく開発された蒸気を用いた現在の検査法で測定すると900FPとなるという報告があります。
この新しい検査法は、よりばらつきが少ない安定した結果を出すのだそうで、それ自体決して悪くはなく、むしろ歓迎されるべきでしょう。
ただ問題なのは、これまでの850FPだったものが測定すると50FP上乗せされた900FPという結果になるという差異をどう取り扱うかです。

メーカーによっては、これを商機ととり、これまで850FPでうっていたダウンを900FPとして売りだします。
この際、検査法の違いなど面倒な説明は抜きです。
2006-2007年あたりに突如、いくつかのメーカーから900FPのダウンが登場した背景にはこの事情が関係しているようです。

一方、バイソンの発売は2000年。その当時から850FPをうたってますので、すなわち900FPに相当するという見方もできますが、
ウェスタンマウンテニアリング社はあえてそうしてません。この目先の変化にいちいち追従しないストイックさに好感がもてますね。
ほか、ヴァランドレやフェザーフレンズといったダウン製品をメインに持つブランドもこの50FPアップをあえて訴求しませんでした。

そして現在も、ウェスタンマウンテニアリング社のダウンで900FPを謳う商品はありません。

ダウンの質は、FPだけで評価するのではなく、そのダウンがどう採取され(手摘みなのか?それともマシンなのか?など)、どう処理され(脱脂とか)、
そういうプロセスを総合的にみて評価するべきでしょう。

ましてやシュラフの対応温度はもっとあてになりません。メーカーによってそれぞれ異なる評価方法に従いこの対応温度を決定しており、
これを統一させるような規制もありません。ですので、同じメーカー内でのグレード比較にとどめるのが無難といえるでしょう。
A社のシュラフは-20℃までで、一方のB社のは-25℃だから、B社のほうが耐寒的に優れているといえるのかどうか、はなはだ疑問です。




バイソンに話しを戻しますが、こちらは秋の槍にはオーバースペック、涸沢では暑すぎで、ジッパーを開放して布団がけスタイルで使用しました。
ゴアテックスなので、そのまま外で寝ることもできると思いきや、日夜の寒暖差が激しい山では、テントのフライが朝露でぬれるのと同じく生地がびしょびしょに濡れてしまうので、おすすめできる利用方法ではありません。

サイズ的には171センチの私の場合で、サイドをジップクローズした状態でも膝を曲げて寝られる広さがあり、窮屈さを感じません。
広げると意外に大きく、オートキャンプなどでは夏場なら掛け布団スタイルで2人就寝できます。


唯一問題なのは重さ。カタログ上では長さにもよりますが2100gくらいあります。以前は携行物の一番重いものといえば、
テント、その次にザックだったわけで、ついにテントとザックは2つ足しても1kg以下で抑えられるようになりました。
今となってはシュラフの重さが一番の悩みの種です。

といってもこればっかりは、ダウンの封入量を減らして暖かさを犠牲にするわけにはいかず。。
学びとしては、シーズンやシチュエーションにあったシュラフをチョイスすることでしょうか。

このバイソンは、明らかに厳冬期以外ではオーバースペックと言えるでしょう。


Made in the USAを頑に守り続けるということ




多くのメーカーがアジアや最近ではCEEMEAに生産拠点を移している中、まだ頑固にMade In USAでやってますね。
デザインの発想場所と生産場所が同じところにあるというのは、ユーザーのフィードバックがダイレクトで良いものが作れると
個人的に感じてます。


2006年の記事によると、28名の縫製を行うスタッフを含めた総勢35名という規模で、この世界的に有名な企業を運営しているそうです。
経営者の息の届く生産体制故に、よい品質のものができるのでしょう。
しかし、場所が手狭なのか5年以降(2011年~)に今の場所からの移転の可能性について触れてますので、
もしも遠くまで離れるとなると年配の熟練したスタッフ全員を新天地へとつれてゆくのは困難が予想されますが、
創始者の経営理念を読む限り、今の家族的な企業経営から脱するようなことはしないでしょう。




ちなみに、Made In USAであっても、使っているマテリアルの多くは海外からの輸入ものだそうで、例えばジッパーはYKK(日本製)、
ゴアテックスファブリックは最近では香港から輸入とはいえ、日本のテイジン社製のものを使っているようです。


要は工業製品な部分は大量生産設備の整う海外で、そして縫製など人の手が加わるところは自分のところで、という品質的には理想的な分業がはかられているように思えます。

むろん、アークテリクスのように地元カナダでこだわっていた縫製すらも海外に移転せざるおえなかった企業事情の背景には、
増加する需要にあわせて企業活動を拡大しつづけたがために、かかる間接コストがこれまで以上に利益を圧迫し、結果的に製造コストを下げて利益を確保しようとする極自然な流れといえます。

しかしウェスタンマウンテニアリング社はこの路線をあえてとらない潔さに自分は共感するものがあります。
これには創始者である経営者の頑固一徹な企業理念、コアバリューによるものが多いでしょう。

同社にとってチャレンジなのは、じきに迎える経営者の世代交代のときといえます。





キャンプファニチャーで有名なByer of Maine社は、1880年に創業しオーナー家系で3世代続いた後、家系とは関係のないヨットのセールス経験のある新オーナーへと売却。
その途端にハンモックやら鳥の巣箱やらと商品ラインナップが拡大し、ついには海外への製造委託という道をたどりました。

さすがに100年も前の、顔の知らない血のつながらない創業者の熱意や意向など、”時代が違う”で片付けられる要素なのでしょう。
いつの時代も変わらないのは、顧客のニーズを最重要視することに変わりないのですが。。

もしかしていつか、またリプロダクション(復刻)を謳ってMade In The USAを出すかもしれませんが、既に工場を手放しているByer社にとっては、
結局はどこか米国内で生産委託をすることになると思われます。また、Made In The USAにこだわるならば、ナイキがやったように海を越えたプエルトリコでもかまわないという選択も考えられます。
そこまでしても復刻したいという場合、その動機は決して顧客が望むからやってみようというのではなく、利益が期待できるからという意外に動機付けは考えられないでしょう。
何せビジネスですから。


いずれにしても往年のByerを好んだコアなファンにとって、今のベトナムからの輸入ものは別ものととらえていることでしょう。私もその一人です。

そして、ウェスタンマウンテニアリング社もこうした展開が未来にないといえません。




専用の携行用スタッフサックはもう少し大きいのですが、小さいものに押し込めばここまでコンパクトになります。
これだと、ザックの下に横にして収納することができます。




保管時はロフトを失わないよう、圧縮せずに専用の保存用スタッフサックに入れておきます。
これで10年以上使えます。こちらコットン素材のスタッフサックも色は違えど20年前とかわらないデザイン。

優れた品質、よい品です。

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2 コメント

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わたしも寒がりです。 (LACOFIMS)
2013-08-29 15:52:55
何年か前に、九月に劔沢でテント内が3度になったことがありました。雪渓だから寒いの当たり前だ、自分はあたまわるいなぁ。って、震えながら寝ていました。テントはナンガ450というのを使っているのですが、アルミマットを忘れて、温度を保てなかったです。あたたかくないと、ねれないですもんね。わたしのテント1600グラムです。テントよりおもいんです。。。
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Unknown (MONOLITH)
2015-07-07 01:10:04
LACOFIMSさん、こんにちは。コメントが大変遅くなり申し訳ありません!
この重さのシュラフとテントを劔沢まで担いで行かれるとは、かなりの健脚とお見受けしました(^^)確かにシュラフだけは重さを犠牲にすると、寒い夜に大変な思いをしますね。
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