I am NOBODY! Who are YOU? ~ ぽーぽー的ACIMブログ『エセー』 ~

“ひとのフリ見て我が(ego)フリ直せ” ナマケモノ系acimerの
『NO』奇跡のコース×奇跡講座×奇跡の道なエセー

残夜、アプサンと呑むひと

2024-11-13 | つれづれに よしなしコト
代助は 暑い中を馳けないばかり に、急ぎ足に歩いた。

日は 代助の頭の上から 真直に射下した。
乾いた埃が、火の粉の様に 彼の素足を包んだ。
彼はぢり/\と こげる心持がした。「こげる/\」と 歩きながら口の内で云つた。

飯田橋へ来て電車に乗った。電車は真直に走り出した。
代助は 車のなかで、「あゝ動く。世の中が動く」と 傍の人に聞える様に云つた。

彼の頭は 電車の速力を以て回転し出した。回転するに従つて火の様に ほてつて来た。
是で半日乗り続けたら 焼き尽す事が出来るだらうと思つた。

                            夏目漱石「それから」より




薄暗き酒場の隅に在るひとが
   我に教へし道ならぬ道


・・・目が覚めると そこは 
あかね色一ぱいに染まる 知らないお部屋でした。


誰もいない。

わたし まだ 眠っているのかも。

シーツを 引き寄せ 
顔をうずめると、ひと もりのにおいがする・・・・・・





「 もう一度。
  もう一度、私と夢を見てくれますか 」


   ・・・あゝ
   これは あのひとの 残り香。

   わたし まだ あの夢の続きを 見ているのね。



あけぼのの花により來しそぞろ道

 つうっと 頬に涙がつたう・・・・・・


         そぞろあふ人皆うつくしき 




ちりん 風鈴のそよぐ微風に 
       生花の香りが 微かに交じる 

目を上げると 小さなスツールの上に
うすくれない の 薔薇 が たっぷり 活けてありました。


あのとき あのひとが 剪定 していた あの薔薇かしら。


 火照る そのひと肌に 
      我を忘れ 溺れてしまいたくなる 

秋。 此処は もう そんな季節なのですね。



yama 「a.m.3:21」


魂は人に
むくろは我に露ながら
夏野の夢のなごり くだくる


   あれが ひとよ限りの 夢であったなら 
       どんなに よかったか・・・


   あの日の夜、あのひとは
   わたしに お別れを言いに お見えでした。


「 待たせているひとがいるのです 」

  ここの仕事を辞め、家業を継ぎ 
  落ち着いたら、所帯を持ちますと、おっしゃった


   


まっすぐ さきを 見定める
あのひとは 決然として すがやかな風を 思わせた。


 多くのひとのため
 身を挺してはたらく 貴方 が み得る

 ひとすじに いき そんな貴方の傍らには 
 貴方を愛するひと、貴方によく似た子を抱いている

      「光る風景」

くらい夜の街 えいえいと あらねばならない この人工天国より
風光る その自然な風景にこそ あなたは 相応しい




貴方 どうか 息災で。

貴方の お帰りを待っている
みなさまと 末永く お幸せになって下さい


あなた・・・・・・

燈火のまへに
君ありわれのあり
うれしけれども言の葉のなき



Lisa Ono「 La vie en rose 」


「 駄目だよ。 自分に嘘をついちゃ 」


  いつものように 見送ろうとする わたしに 
  あの御方は ぴしゃりと 窘めた。

    彼は 君の客じゃないだろう
   彼も 君の客と思っちゃいないよ

   綺麗事に 逃げてはいけないな。

   このままでは、
   君にも 彼にも良くない。

   終わらせておいで。
 
   わかっているだろう 君は 「夜のおんな」なのだからね。





あめつちを歌にたたへし日も昨日
   けふは薊の精戀ふる人


身を引くことに慣れた
私の思い上がりを  御前は よく存じていらした。


わたし  彼のみている風景を みてみたかった。


わたしの知らない 光あふれる世界で ほんとうは 

   あのひとと 一緒に いきたかった。


A Trial Plate for Mallarmé's "Un coup de dés" Odilon Redon(1897–1898)


別れ居る心は淋しけだものを飼ひて
生くべき日とよう似たる



一度だけ。

許されるなら
一度だけでいい、お願い。

わたし あなたに 触れてみたい。
夜のおんなではないおんなで ひととき、いさせてください、お願い。


許して。

あのひとは  そんな私の夢を かなえてくださった。



サカナクション 「 ナイロンの糸 」



欄に寄り酒をふくめば
盃の底にも秋の愁ただよふ


「すまない」

あのひの夜のように
着衣のまま お互い我を忘れて 交わった後、ぼそりとつぶやく
彼の長く伸びた髪、日に焼けた首筋、肩、背中、腰に触れ、引き寄せる。

おしゃべりをするより
ほんとうは わたしたち ただ ふたり しずかに
海をみて 波の音をきき 潮の香をかいで 夜の風を感じていられれば それでよかった。




途切れ途切れに吐かれる息をなだめ
火照る その身体の確かさを もっとかんじたくて 目を開けると

荒々しい リビドー から 解放された 彼が わたしを じっと見つめておりました。


すんだ眼。

貴方には なにも 隠しごとができないような 気がする。

     すべてを 見透かすかのような
       此の目 が わたし とても こわかった。




ひとさし指で そのまぶたを なぞる。

みにくいものを
決して み逃がせない この目は かなしい 業の眼

     貴 方あなた


  君は去りぬ
  殘るは
  吾と小さき世の
  月も月かは 花も花かは



Édith Piaf「La Vie En Rose」


その意を 読んだのでしょうか

彼は わたしの顔を 両手で包んで
張りつめたこわばりを 解きほぐすかのように 口づけ、

それが「何」なのか 直に 私の身体に 示しにかかった。

一まい一枚
わたしの衣服を ゆっくりと剥いで
露わになった 無防備な肌に 許しを乞うた。

反応する 私の身体は なんて 正直 でしょう

彼の甘い招聘に 
すべてをゆだねて、受け入れようと 満ちてゆく・・・





やめて。

わたしのなかの ふかい「何か」が 叫ぶ。
      いや。そんなことしないで。 お願い。


私のふかいに 耳を貸さず
反応する箇所に眠る 未開の悦びを 引き出して

彼は 何度も何度も わたしを 追い詰め さらなる 高み に 押し上げた。

たがいの隔たりが 取り除かれた身体に
再び 体を重ね 彼は しずかに 彼自身 を わたしのなかに 沈ませる


 舟を漕ぐように ゆったりと、 それでいて激しく、
      容赦なく さらにさらに 深く進む・・・・・・




      私を見て。

遠くから 聞える 「その声」に 閉じていた目を ひらくと
赤い眼のあのひとが しんを突いた。

忘我よいの波に 引きずられ おのずと 瞼がおちる。


   駄目だ。目を閉じないで。

                  わたしを 観るんだ。

           筋肉を張り詰め 
           脈を打ち 刻むリズムを 加速させる
           彼の赤い眼は だんだんと その光彩を 解き放って しろく発光する

           世界を 
           わたしを 
           みるものすべて 一体ヒとツ に あるものを 彼は 真っ二つに 貫いた。



Cocco「強く儚い者たち 」Cocco 25th ANNIVERSARY ver.



あめつちのみちにははぢぬ我ながら
歌を一人の君にかくしぬ


ここへ来る みつき前 

彼を わたしに ひき合わせてくださった方に お取次ぎを 願いました。

顔の広い方でしたから
どこにいるかわからない あのひとの事を 何かご存知かと思って。


それから ふたつき 

何の音沙汰もなく 諦めかけていたところ 
連絡があり その方と会うことになりました。





約束した ホテルのラウンジには
以前 何度かお会いした 彼のいちの秘書が 既に お待ちでした。

「ながくお待たせして 申し訳ありません。
 あるじは 療養で 離れの別宅におりまして 時間がかかってしまいました。」

   主に せいじつな そのひとのかわらない
   やわらかな声音に 身構えていた わたしのこころは ふっと和んだ。 

   「まあ、
    そうで ございましたか・・・

    あの方の お加減はいかがですか。 
    何も知らず 無理を申し上げ  たいへん失礼いたしました。」


「 他ならぬ貴女からのご依頼でございます。
  主は 大層 お喜びでございましたよ。

  おかげ様で あれから 張りあいを持たれて 随分とお元気になられた。
  主にかわり 御礼申し上げます。
 
 今日は わたくしが これを 主より 言づかって参りました。」
 



すっと さし置かれた その封書を わたしは すぐに 手に取ることができなかった。

 ・・・・・・わたしは ほんとうに これでよかったのか

 お会いできなかった
 その方のお心うちを はかりかね こわくなった。


「主は その方に とても目をかけておいででした。
 自らの後継にと 考えていたようです。

 ですから 貴女に彼をひきあわせた・・・・ ・・・・・・・・・・・

 貴女が いちばん そのことを ご存知のはずです。

 貴女にも 
 わたくしにも
 たがいに 為すべき「つとめ」が 御座いましょう。

 それと、もうひとつ。 貴女に差し上げるようにと これも 与かりました。」




 秘書は 大きなましろい紫陽花の花束を 私に手渡した。


  「 今朝 主みずから 
    庭に立ち 貴女のために 切った花です。

  どうぞ そのお心のままに。

   彼に よろしくと、主は 申しておりました。」



いただいた封書を ひらくと
まいにち「雁塔聖教序」の 臨書を 欠かさないと仰っていた

かつて 政財の人間に 鬼神とおそれられたひとの じつに見事な手蹟で
とある住所が 記されておりました。

 稼業をたたみ、彼は ひとり そこに住んでいる と、 一言添えて。





いかばかり悲しく彼が眺むらむ
  酒場の窓の赤き落日


あかね色だった部屋は だんだんと 宵が深まり 

わたしのからだは 
しぜん ちぢこまり まあるく ちいさくなる。

下腹部にある ほっとり やわらかな このぬくみを 守りたいみたい。


   みなそこに魚の哀傷、
  われに 涙のいちじるく、
  きみはきみとて、
  ましろき乳房をぬらさむとする。



 ひとりねの 「かなしい」あのひとのよるを想った。


       Stéphane Mallarmé:Maquette autographe (avril-mai 1897)



不承であろうと 自らの務めにいそしみ
こころに決めた方と いきようとした あなた

   この日ごろつかふことなく、
  ひさしくわれら靈智にひたる、
  すでに長き祈祷ををへ、
  いまみれば月も皆既なり、


それでも 一途に 何かを こいもとめられる かなしい 貴 方

  多くのおとこの愛撫で つくられた 
  私のからだは 誤魔化せない

  あの悦びは 数多のおんなに学び
    数多の房事を知り尽くした 漁色のせいぎ




   魚の性はせんちめんたる、
  みよ、うみはみどりをたたへ、
  肉青らみ、
  いんいんとして二人あひ抱く、



貴 方あなた  多くのおんなのひとを
        慰みに しなければならなかったの? 

    齒と齒と合し、
   手は手をつがひ、
   もつれつつからまりにつつ、
   いんよくきはまり、


その彼女たちの慰みにも なろうとなさった
彼の あかあかと醒めた あの眼 と あの かなしい手 を想った。





たくさんの そんなよい闇のうちに 
あなたは 自らの ひび を くい与えて 果てるおつもりだったのでしょうか

  魚の浪におよぎて
  よるの海に青き死の光れるをみる


そとの はげしい 蝉しぐれはやみ 
いまは あきむしの すがしいうたが 聞こえる。

誰かが 煮炊きしているみたい。なつかしいにおいのする・・・

  そぞろにも逍遙ふ野邊の朝ぼらけ
  山西にはれて虹の彩ほそき


   
   A Trial Plate for Mallarmé's "Un coup de dés" Odilon Redon(1897–1898)


      ・・・・・・こどもの頃

      日が落ちるまで 遊んで帰ると 

      母は 夕ご飯をつくっていて 
      父が いつもの時間に 帰宅すると
      家族みんな そろって ごはんを食べた。


どこにでもある 
ささやかな  あたりまえの幸せ のなか 

いきてゆく そんな ジブン を かつてのわたしも 信仰しておりましたわ、

      ココにきた・・・・・ ソコの貴方・・・・・


   


ふしあわせな ひとは 不幸せ だからこそ

  愛を
  幸せを 
  神や まことを 
  自分と「同じ」 不幸せ な 誰かと 

与え奪い合って 「よく深く」つがわなければ いきてゆけない

よい「私」たちは それゆえに
こうして 何度も 繰り返し 幸せな 「よい」夢を みつづけられる

この「しあわせ」こそが ひととしていきるための 因業よい だったから



Épreuve de l'édition d'Ambroise Vollard (juillet 1897)



たづたづし暗きにおつる身の果を
なぐさめ得なば足らむ我幸


   貴方と
   わたしは だから
   こんな かなしい ひとの夢

   こうして 何度も 何度も みなくてはならない

   かなしいね、あなた
   かなしいね、幸せな 私たち


       人 間カミ と いう いきものは。



Anoushka Shankar - Lovable (Lyric Video) ft. Ibeyi


野より今うまれける魂をさなくて
 一人しなれば神もあはれめ



※ 文中の 青字の和歌は 萩原朔太郎
桃字の詩は 萩原の「月蝕皆既」からデス♨