まちかど逍遥

私ぷにょがまちなかで遭遇したモノや考えたコトなどを綴ります。

花鳥苑に泊まる

2022-11-09 23:19:50 | 建物・まちなみ
渡邊邸から高速でビューンと三豊へ移動し、古民家ゲストハウス「花鳥苑」へ。ここが今宵の宿である。


鳥取家はこの地方の名家で、こちらは分家だけれども、すぐ近くにある本家は高円宮妃久子さまのご実家である。
「花鳥苑」という名は、現ご当主のお祖父さんが敷地の一角に温室を作って葵の栽培や小鳥の飼育を
やっていて、主催していた葵同好会の名が「花鳥園」という名だったことによる。
葵も改良品種がたくさんあって品評会にも出していたそう。
現ご当主の鳥取さんは以前よりこの建物を残したいという強い思いを持っておられ、あるときお友達を
泊めたことを機に2016年から民泊を始められた。
去年10月に文化財登録も済ませておられるが、なんと敷地内の12建物が登録文化財というからすごい!
実はここに泊まった約1か月後に、文化財登録を手掛けられた設計士さんの説明つきの建物見学会&マルシェ
が行われ再訪してきたので、そのときの写真も交えて紹介していこう。

明治前期に建てられた母屋は鉄板で覆われているが元は茅葺で、「四方蓋」と呼ばれる香川県に多く見られる
屋根形式である。


離れの方が客室となっている。もともとあった門が焼けてしまった跡地に大正末期から3~4年かけて集会用の
建物として建設、昭和初期に完成した。民泊は1日一組のみの貸切なので気兼ねなく過ごすことができる。


裏には洋室もついていた。


中に入ってみると・・・1階には広い続き間の座敷があり、片方の部屋にはすでにお布団を敷いてくれていた。
この部屋は三方が全面障子。建具は幅が1/4間と通常の半分サイズで、しかも横スライドの雪見障子になっている。なんとクール!!


擬宝珠つきの階段の親柱。


階段の横には控室のような小さな部屋があった。


押し入れの襖を開けると、床の間が現れる。枠に竹が使われていたり壁がブルーだったりしておしゃれ
なのだが、それだけではなかった。


掛け軸をずらすと・・・何とそこには棚があったのだ!ここにへそくりなどを隠しておくわけだな(笑)


さて2階へ。


2階の座敷はとても明るくて風通しのよい空間だ。


繊細な組子細工が美しい丸窓。


厚みのある欄間は表と裏どちらから見ても立体的に彫られている。ただこれは近年作られたもの。


居心地よさそうな窓際のソファコーナー。


欄干には透かし彫りが施されている。


中庭に面した廊下の欄干はさらに凝っていて、花や風景、昆虫などの透かし彫りはすべて違う柄なのだ!
素敵~~


さて、風呂場棟は離れ座敷から裏へ出たところにあるのだが、この渡り廊下が面白い。


横から見るとこのように風呂場棟の吹きさらしの廊下の上に板が乗っている感じ。この板が外れるのだろうと
いうことは想像がつくが、何と建屋の床下へスライドしてすっぽりと収納されるようになっているのだ!
面白いなぁ~


焚口の横のドアを開けるといきなりお風呂場だ。えっ、服を着たまま!?(笑)。実際に入浴するときは
廊下をぐるっと回って裏側の脱衣所から入ることになるが、脱衣所は後回しにして先にお風呂を見ていこう。


こちらが、花鳥園名物の五右衛門風呂!客人用のお風呂としてつくられたので豪華な仕様だ。
湯気抜き付の折り上げ天井になっていて、傘天井のように竿縁が放射状に広がる。洗い場の床はいちめん
無釉モザイクタイルのカーペット貼り~~~!花模様を全面に散らしてボーダー模様の縁取りもかわいいね!


そして、脱衣所からの入り口の部分は、オレンジと赤のこんな派手な市松模様。


ドアが2方向にあるのもまた変わっている。左のドアは脱衣所へ、右のドアはトイレの方につながっている。
焚口の横のドアと合わせて3ヶ所もドアがあるなんて。どこからでも入れて便利だけど、入っているときに
開けられそうで落ち着かない!?(笑)

なお、花鳥苑では薪割り体験や、その薪で五右衛門風呂を焚いて入浴も体験することができる。
それもいいがやっぱり泊まってこのお風呂を独占で長風呂するのがいいね~~(笑)

こちらがお風呂の奥にあるこじんまりとした茶室のような脱衣所。こんな飾り窓もある。
ここで髪結いをしてもらっていたとの話で、壁には床屋のような造り付けの鏡と台が今も残っていた。


こちらはトイレ。木がふんだんに使われて雰囲気あるね~~内部は白無地タイル。
廊下に面した観音開きの板戸はスイングドアになっている。


手洗い場もお風呂と同じ無釉モザイクタイルが使われていて、ちゃんと花柄も入っているのがしゃれている。
昔の造りなのでちょっと低いためボウルを置いているそう。垂直面はトイレの壁と同じ白無地タイル。




母屋の大テーブルでコーヒーを頂きながら、大嘗祭や牛レンタルの話、民泊運営の話などご夫婦から聞いたり、
見てきた渡邊邸の話などをしたのも楽しい時間。
見学会の日には土蔵前に休憩スペースも作られていて、帰り際にちょっとのんびり座って休憩した。


ご当主の努力により美しく手入れされ状態よく保たれている花鳥苑。素晴らしい建物に泊まれるのは
とても嬉しいことだ。あぁ満喫した!

続く

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