4、5年前に好きになったアーティストについて。
21サヴェージが、いっこうにアルバムをリリースする気配がない。
ドレイクとのコラボアルバムは成功したし、他の人の曲にゲスト参加は今でも多いけど、ソロ作品は全然...。
一方で、R&Bシンガーのアリ・ゲッティーはいつの間にかデビュー・アルバムを出していた。
2019~2020年に活躍した彼、数年後、忘れられたころに再登場してまた売れてほしい。
読者を最も置いてけぼりにする、地獄の企画が再び...。
今回のテーマは、「10年代前半デビューの既得権益、ストリーミング時代における変遷」。
ストリーミング消費が活発化した10年代後半以降に、それまでの(セールスで売れていた)既得権益はどうなったか、といった具合です。
対象は、2011~2015年にデビュー・アルバムをリリースし成功したR&Bシンガーやラッパー(集計しやすいため)で、
かつ2016年以降に3枚以上アルバムをリリースしている人です。
1回目を読んでもらえると助かりますが、一応引用で説明を貼っておきます。
人気アーティストが新アルバムをリリースした際、その収録曲がシングル・チャートになだれ込むことがあります。
これを私は適当に「大規模チャートアクション」と呼んでいるのですが、大規模チャートアクションは逆に、アーティストの人気も示します。
より多くの収録曲がランクインするほど、またより上位にそれが発生するほど、そのアーティストの人気は高いといえるでしょう。
これを使ってアーティストのキャリアの波(今はどんな状態か)が推測できると思い、グラフ化してみました。
グラフの見方です。ザ・ウィークエンドを例にとります。
グラフの縦軸はビルボードのチャートを表していて、0こそ入ってしまっていますが一応1~100位を示しているつもりです。横軸はアルバムのリリース年で、ザ・ウィークエンドの場合それぞれ2016年、2020年、2022年にアルバムをリリースした際の大規模チャートアクションを表しています。大規模チャートアクションに関しては、紫の点で収録曲が当時何曲シングル・チャートにランクインしたか、またはどのポジションにランクインしたかを示していて、点は多ければ多いほど良く、また上に集まっていればいるほど良い、といった直感的解釈が可能です。なお、横軸のカッコ内の数字は紫の点の数、すなわち何曲ランクインしてたかをカウントしたものです。
ザ・ウィークエンドの場合、2016年にアルバム『スターボーイ』をリリースした時から絶好調でした。紫の点は50位より上に密集しているので、アルバムの収録曲の大半は50位より上にランクインしたことになり、いきなり大記録を打ち立てています。そして2020年も、ランクインした全体数こそ減ったものの、30位より上の、より上位にランクインが密集していることが見てとれ、前作の成功を確実に維持していると解釈できます。ただ、2022年においては、全体数は変わっていませんが上位への密集が弱くなっていると見受けられ、大規模チャート・アクションは前作ほどの勢いではありません。このことから、ザ・ウィークエンドの現段階を評価すると、「ピークアウト(↘)」となります。もちろん彼のキャリアの波を評価する方法は他にも星の数ほどありますが、この指標においてはこういった評価になりました。では、これ以降、他の対象アーティストについても同様のことを行っていきます。
※なぜ「全体数」か(読み飛ばし可!!!)
収録曲がシングル・チャートになだれ込むということで、何曲なだれ込んだかをカウントし評価の材料にしていますが、それはアルバムの収録曲数に依存するのでは?と疑問を持たれることがあると思います。特に、アルバムをリリースするごとに収録曲の全曲がランクインするような大物は、確かに収録曲数が大事でしょう。どちらも全曲ランクインしたのに、収録曲数が20曲(前作)と12曲で違うせいで評価が「右肩下がり」となったらよくありません。なので、その場合は「収録曲数に占めるランクイン数の割合」ではかった方が正確な判断ができるでしょう。ただ、逆にそこまで大物でもないアーティストで、アルバムをリリースするごとに毎回2、3曲がランクインする等人気は維持できている方の場合、「収録曲数に占めるランクイン数の割合」ではかるとうまくいかない可能性があります。どちらも数で見たアクションのレベルは同じくらいなのに、収録曲数が12曲(前作)と18曲で大きく違うとこれまた「右肩下がり」となり、これも正確ではないかと思われます。そのため、「全体数」でも「収録曲数に占めるランクイン数の割合」でもデメリットがあるわけで、分析はメインストリーム上のアーティストを対象にしているとはいえやはり大物の方が少ないので、前者を測定方法として選んだ形になります。ご了承願います。
事例①:ミーク・ミル
評価:「ピークアウト(↘)」
2018年の『チャンピオンシップス』が明らかにピーク。だけど、2021年も急落ではない。
事例②:タイラー・ザ・クリエイター
評価:「急騰(↗)」
急落の逆って、何ていうんだろう?...急騰?2019年『イゴール』がそんな感じ。
事例③:トラヴィス・スコット
評価:「人気上昇中(↗)」
分かりやすく密集域が上方にシフト。2016年1曲だけがかなり意外だった。
事例④:J.コール
評価:「人気上昇中(↗)」
ハイレベルな前作のアクションをさらにハイレベルで上回り続ける化け物。確かに J.コールは絶頂が分からない。
事例⑤:マシン・ガン・ケリー
評価:「ピーク維持(→)」
途中からロックに転向したけど、ストリーミングも強かったので。2020 → 2022 はそんな変わっていないと判断。
事例⑥:2チェインズ
評価:「ピークアウト(↘)」
最初の方は良かったけど、徐々に新時代の波に飲まれ...的な?もちろんこういう事例もある。
事例⑦:フューチャー
評価:「急騰(↗)」
継続的に大規模チャート・アクションを起こしてきたフューチャー氏。だけど 2020 → 2022 はさすがに急変だと思う。
事例⑧:リル・ダーク
評価:「ピーク維持(→)」
超苦労人...。2020年の2作目は年末リリースで、ちょうどこのころドレイクの "Laugh Now Cry Later feat. リル・ダーク" が大ヒットしていたから、やっぱりこれが大きな契機だったのかも。
結果
ザ・ウィークエンド含む9組のケーススタディーを実施したところ、
↗ ・・・ 4件
→ ・・・ 2件
↘ ・・・ 3件
確認された。
なお、他に条件が揃ったアーティストに関して、フレンチ・モンタナ、ラス等がいたが、
大規模とはいえない微小なアクションにとどまっていたため、グラフ化はしなかった。なお、いずれも「ピークアウト(↘)」である。
10年代前半にメジャー・デビューした者は、ストリーミング時代において波が2極化している可能性があるといえる。