いつのまにか「ロック・ソングス・チャート」が復活していた。
2020年の4月頃廃止されたチャートだけど、ロックがまた活性化してきたから復活させたのかも。
...ただ、AJR の最新曲がそこにランクインしてなくてちょっと疑問。
AJR は『ザ・クリック』(2017) 時代もロック・チャートに入ってなかったけど、
ロックに認定されにくいのかな?いろんな音を混ぜすぎて。🎻
アルバム・チャートにおけるアルバムのパフォーマンスを順位・持続性の観点から評価する指標を作りました。
対象とするのは新しいアルバムのみで、2018年からやっているので2018年以降にリリースされたアルバムのデータがあります。
指標、といっても超簡単で、
アルバムが初登場した週から第9週目までの順位を記録し、1800からその総和を引いてポイントで表すものです。
アルバム・チャートは200位まであるので、9週間の記録の和の最大値が1800になり、最大値から順位の総和を引くことでポイントによる評価ができます。
ただ、チャート圏外(201位以下)の週をどう表すかの基準や集計週数(もともと10週間でやっていた)、
そもそものポイント計算方法を1回以上変えているので、指標には統一性・信頼性がありません。
そしてけっこう適当なところもあるので、詳細は省きます。
(※リリースから2か月のロング・ヒット性を測ろうとして9週間に設定しています。9週間でだいたい2か月なので。)
...で、本題ですが、上記の指標でポイントが出ないアルバムがあります。
それはあまりヒットしなかったアルバムですが、特に持続性の欠如がポイントが出ない主要因です。
逆に言えば、順位が低くても持続性があれば余裕でポイントは出ます。
例えば、ブルース・スプリングスティーンの2019年のアルバム『ウエスタン・スターズ』は初登場2位でしたが、アルバム・チャートにランクインしたのは初登場からわずか4週で、すぐにチャート圏外(201位以下)に落ちてしまったのでポイントは出ませんでした。
一方、カントリー・シンガー、ジョーダン・デイヴィスの去年のEP『バイ・ダート』は最高位が86位とかなり低めながら、その後長きにわたってアルバム・チャートの下位をキープしていたのでポイントが出せました。
つまり、この指標は持続性をかなり重視したものになっています。
個人的な好みから、ロック・アルバムのヒット度合いを特に興味を持ってこの指標で調べてきました。
予想はつくかもしれませんが、ロックは特にポイントが出ないアルバムが多かった!その中で、ポイントが出せたアルバムを紹介します。
<2018年>
1.フォール・アウト・ボーイ『マニア』(首位獲得)
2.ブレイキング・ベンジャミン『エンバー』
3.ジャック・ホワイト『ボーディング・ハウス・リーチ』(首位獲得)
4.デイヴ・マシューズ・バンド『Come Tomorrow』(首位獲得)
5.パニック!アット・ザ・ディスコ『プレイ・フォー・ザ・ウィキッド』(首位獲得)
6.ファイヴ・フィンガー・デス・パンチ『アンド・ジャスティス・フォー・ナン』
7.ポール・マッカートニー『エジプト・ステーション』(首位獲得)
8.トゥエンティ・ワン・パイロッツ『トレンチ』
9.グレタ・ヴァン・フリート『アンセム・オブ・ザ・ピースフル・アーミー』
10.ディスターブド『エヴォリューション』
11.イマジン・ドラゴンズ『オリジンズ』
12.マムフォード&サンズ『デルタ』(首位獲得)
13.The 1975『ネット上の人間関係における簡単な調査』
13枚も合格(?)しました。も、というのは、これ以降どんどんポイントが出せるロック・アルバムが少なくなっていくので、今から見るとすごいたくさん合格しているように感じるのです。ポイントの詳細を出すと説得力のある設定でやっていないことがばれたり、説明が面倒になりそうなので詳細は出しませんが、1番成績が良かったのは当時 "Say Amen" や "High Hopes" がヒットしていたパニック!アット・ザ・ディスコ『プレイ・フォー...』で、その次が "Natural" という先行ヒット・シングルを持つイマジン・ドラゴンズ『オリジンズ』、3位はアルバムからのシングルが次々にロック・チャートを荒らしていたトゥエンティ・ワン・パイロッツ『トレンチ』です。どれもシングルのヒットを伴っていて、やはり先行シングルがヒットすることはプロモーションとして重要なんだと思いました。ちなみに、個人的にこの3組(P!ATDは一人体制だけど)こそが今のロック・シーンを代表する「3強」だと思っています。...彼らの新作リリースがあるかないかだけでその年のロックの盛り上がりが決まるくらい。🦅
<2019年>
1.ホージア『ウェイストランド、ベイビー!』(首位獲得)
2.ウィーザー『ウィーザー(チール・アルバム)』
3.スリップノット『ウィー・アー・ノット・ユア・カインド』(首位獲得)
4.トゥール『フィア・イノキュラム』(首位獲得)
5.ザ・ルミニアーズ『Ⅲ』
6.ヴァンパイア・ウィークエンド『ファーザー・オブ・ザ・ブライド』(首位獲得)
7.コールドプレイ『エヴリデイ・ライフ』
約半減で、2019年は7枚です。ただ、その中でも初登場で首位を獲得しているアルバムがけっこうあるので、この時期はまだロックにチャートの首位をとるような力があったといえるでしょう。メタル / ハードロック・アルバムが意外と強いのも特徴です。この年のポイント1位はトゥール『フィア・イノキュラム』。10数年ぶりの新作ということで大いに話題になっていたアルバムで、『フィア・イノキュラム』が初登場する前の週にはテイラー・スウィフトの『ラヴァ―』が1位に初登場していて、テイラー・スウィフトの2週連続1位も予想されましたが、ベテラン・ハードロック・バンドのトゥールが勝ちました。ポイント2位はホージア『ウェイストランド...』で、この人も "Take Me To Church" の大ヒットから久しぶりの新アルバムでしたね。最後に、3位はヴァンパイア・ウィークエンドで、アルバムは3作連続の1位だそう。ヴァンパイア・ウィークエンドの曲は聴いたことがなかったのですが、実は彼らには明確なシングル・ヒットがありません。『ファーザー...』が1位をとったとき、「総合シングル・チャートにランクインした曲がないのに、総合アルバム・チャートで3回も1位をとった初めてのバンド」としてヴァンパイア・ウィークエンドは謎の記録を得ていました。⛪
<2020年>
1.オジー・オズボーン『オーディナリー・マン』
2.テイム・インパーラ『ザ・スロウ・ラッシュ』
3.グラス・アニマルズ『ドリームランド』
4.ブルース・スプリングスティーン『レター・トゥ・ユー』
5.AC / DC『パワー・アップ』(首位獲得)
2020年は5枚、さらに減りました。首位を獲得したのも AC/DC のみで、それも11月のことだったので「このままじゃ2020年はロックのNo.1がゼロで終わってしまう!」という状態でやっと出た1位でした。ポイントでも一番高い AC/DC、詳しい話は知らないのですが「奇跡の再始動」みたいな感じで大いに注目されていたようで、もともと再起不能ともいわれていたみたいです(メンバーの病気等で)。後から調べたらオーストラリアの国民的ハードロック・バンドで、ベストヒットUSAでも取り上げられていたのでさすがに覚えました。"Shot In The Dark" という先行シングルのビデオを見ましたが、高齢とは思えないパフォーマンスで鳥肌が立ちましたね。話を戻して、とはいえロック・シーン全体としてはかなり盛り下がっていた年です。「ロックが死んだ」という言葉があるとしたら、2020年がもっともそれに近い概念といえるでしょう。先行シングルがヒットして、それに乗じてアルバムもヒット、というのもありません。そもそもシングルのヒットがないからです。2020年がピークのロック・ヒットといえば、トゥエンティ・ワン・パイロッツの "Level Of Concern"1択で、その曲はアルバムに収録されない単発シングルだったので、シングルがアルバムのヒットを牽引するという構造は皆無の年でした。💪
<2021年>
1.AJR『OK・オーケストラ』
2.トゥエンティ・ワン・パイロッツ『スケイルド・アンド・アイシー』
3.コールドプレイ『ミュージック・オブ・ザ・スフィアーズ』
4.イマジン・ドラゴンズ『マーキュリー-アクト・1』
2021年、ついにロックNo.1アルバムが生まれませんでした。自分の記憶が正しければ、ロック・アルバムのこの年の最高位はフー・ファイターズ『メディシン・アット・ミッドナイト』やアイアン・メイデン『戦術』の3位で、上記4作は必ずしもすごく順位が高いわけではありませんでした。ただ、2021年ははっきりとロックの復活が感じられた年で、シングルのヒットも比較的多かった年です。AJRは "Bang!"、イマジン・ドラゴンズは "Follow You" という曲がアルバムのリリースに先行してヒットしたので、それがいいプロモーションになったのでしょう。ちなみにポイント1位は AJR ですが、過去3年間のポイント1位アルバムと比べるとポイントが格段に低い!やはりロックのアルバム・チャートにおける影響力は持続的に落ちてきてしまっているわけで、2022年7月現在、この指標でポイントが出せそうなロック・アルバムはレッド・ホット・チリ・ペッパーズの『アンリミテッド・ラヴ』のみとかなり厳しい状況。<2022年>の欄を作ったらレッチリしか挙げられなかった、という事態にもなりかねません。イマジン・ドラゴンズが2年連続となるニュー・アルバムを今年出しましたが、持続的なヒットになるかは不安です。もちろん、なってほしいけど!🐉
(補足、というか意見)
2018年頃から、ロック/カントリー・アーティストの間で「新アルバムを早く買ったら、そのアルバムをひっさげたツアーへのライブ・チケットが同時に安く買える!」という初回購入特典みたいなアルバム・セールス戦略が流行っていました。ロック / カントリー・アルバムが本格的に売れなくなってきたからです。ツアーのチケットをつけなければならないほど業界は不況でしたが、2020年、パンデミックが起きてツアーができなくなり、この戦略も通用しなくなりました。結果、アルバム・チャートでの記録がかなりひどいものになってしまったんだと思います。ボン・ジョヴィのアルバムが全米アルバム・チャートのTop10にも入らないとは思いませんでしたね...。とはいえ、2022年になってツアーも再開されてきたので、この戦略を復活させるのはありだと思います。そうすれば、ロックのアルバム・チャートにおける影響力も幾分か復活するかもしれません。ちょっと卑怯な戦略という感じもありますが、ロック好きとしてはもっとロック・アルバムがチャートで盛り上がってほしいと思うばかりです。最近新しく「ロック/オルタナティブ・アルバム・チャート」が発足しましたが、2022年7月現在、ロックのアルバム・チャートにおける強さは最低ラインにまで来てしまっている気がするので、せっかく発足したチャートも味気ないものになってしまう気がします。2022年は少なくとももう2、3枚、この指標でポイントが出せるアルバムが出てきてほしいですね...。