中国の国内線に搭乗する時、いつも思うが、何故乗客に「上海証券報」(新聞)を配っているのであろうか?今日も上海浦東空港の搭乗口(北京行)でほぼ全乗客に配っていた。日本で言ったら、株式新聞を国内線の乗客みんなに配っているようなものであり得ない話だ。そんなことをしたらすぐに航空会社がマスコミの批判の標的になるし、文部省辺りが教育上も、風紀上も宜しくないと抗議し、国土交通省が航空会社に行政指導で即刻ストップをかけるであろう。しかし、中国ではこれに対して何らの批判も起きないし、誰も不思議がらない。中国に長くいると不感症になるのか、日本人駐在員ですら、さほど不思議に思っていないようだ。
とにかく、中国の人は総じて投資の話、お金儲けの話が大好きだ。新中国の成立(1949年)から小平の改革・開放政策(1978年~)が始まるまでは、公然とお金儲けの話をすることは資本主義の道を進むことと見なされ大きなリスクが伴った。そのため皆沈黙を保っていたが、元はといえばある種、何千年の歴史を持つ商人国家でもある。特に90年代初頭以降は社会主義市場経済という大義名分の下に、社会主義を標榜しながら、実際にはかなり泥臭い資本主義の道を歩んできた。この間、副作用として共産党幹部の腐敗は目を覆いたくなるほど蔓延し、格差はどんどん拡大していったが、それでも人民(国民)が総じて豊かになっていたため、何とかここまで政権が持ちこたえてこれたのだと思う。
お金の話は日常の生活の中に本当に良く出てくる。日本人だと普通訊かないこと、例えば給与やボーナスなどについて「自分はいくらもらっているが、お前はいくらもらっている?」などと平気で(親しくない人にも)訊いてくることがある。また、日本だと商売や株、不動産などで大金を儲けても公然と言わない人が多いし、それが美徳とされているような気がするが、中国では公然と人前で金儲けについて自慢する。さらに「誰々が不動産でいくら儲けた」等他人の金儲けの話までも日常会話の話題に良く上る。日本人からするとまことに嫌らしい文化だと思うが、中国では金儲けに成功したことそれ自体が、自分の人生の成功の証、自らに対する評価と考えている人が多く、自分を成功者に見せることで、さらに大きな金儲けのチャンス(多くの人が群がってくる、商売チャンスが広がる)が巡ってくると信じている人も多いのであろう。
今回訪中時に一部知識人、学識者と呼べるような人にも会ったが、そうした人も投資や金儲けに関心が強かった。「日本の不動産は、どうやったら買えるのか?」「日本の不動産売買の税金やコストはどうなっている?」「今買っておけば東京オリンピックまでに上がるのではないか?」「日中関係が改善すれば、中国の資金は日本にいくぞ」等等。不動産バブルで豊かになった人が増えている一方で、中国の不動産には高値警戒感があること、加えて為替が大きく円安に振れたため日本の不動産を相対的にものすごく安く感じているようで、日本の不動産への関心はとても強いものを感じた。日本で学者や知識人が、そうした金儲けや投資に関する話を人前で語ると、下品なヤツとの烙印を押され、軽蔑されること間違いなしだと思われるがそんなことは中国ではお構いなしだ。そもそも、日本の学者や知識人で海外の不動産相場に関心を持ち、アンテナを張っている人がどれだけいるであろうか?
一方気になることがある。中国では金儲けに成功し、急速に富裕層は拡大しているが、その富裕層の半分近くが海外移住を考えていることが複数の調査機関の調査で明らかになっている。実際に多くの人の話を聞いても(私の友人はシンガポールへの移住手続きを行っている)、多くの富裕層が自らの資産を海外に移転することに必死になっていることは明らかだ。どんどん中国で豊かになっているのに、その人々が中国の国籍を捨てて海外移住するというのは一体どういう理由からなのだろう。
おそらく様々な要因があると思う。1つは現共産党政権が将来どうなるかわからないということに関する不安。もし何らかの政変が起き、大混乱に陥った場合、自らの中国での資産が没収され、没収されなくても大きく減価する可能性があるという不安、また、中国でビジネスに成功している人は政府との関係の中で商売をしている場合も多く、権力闘争や汚職に巻き込まれるリスクが付きまとうため、その時に備えてリスクヘッジをしておくこと。その他、子供の教育、環境、食の安全、ビザの問題(自由に海外を移動できる)、汚職役人が単に海外逃亡したい等様々な要因があると思う。ただ、こういった富裕層が海外移住後、中国との関係を完全に断ち切るのかと言えばそうではないだろう。それは香港返還の時に、多くの香港人が海外国籍を取ったものの、商売は外国国籍の中国人として同じ香港で継続しているのと同じである。国籍に対する考え方が全く日本人と異なり、自らがまた家族が、この世に生を受けている間、上手に生きていくための、うまく立ち回るための手段の1つとして考えているにすぎないのであろう。中には家族で違う国籍を取得するなどの例も非常に多い。自国に対する愛国心、忠誠心はどこにいってしまったのだろうかと思うが、ある意味、発想は非常にグローバルだ。
なお国連の報告書によると中国人移民数は2013年時点で930万人に達し、移民先で人気なのはアメリカとカナダ(胡潤の報告書)だという。日本の人口の13分の1がすでに移民してしまっているというのは驚きだが、そういう国家では現共産党政権も長く持たない、と習近平総書記も考えているに違いない。「トラもハエも叩く」でおなじみの反腐敗運動は当初の期待以上に大物も捕まえ一定の成果を上げている。それもあり中華民族の偉大な復興という中国の夢をスローガンに掲げる習近平政権は、中国ではかなりの世論の支持を得ている(と言っても、マスコメディアによる支持率統計も普通選挙もないが)と思う。しかし、ある種ビジネスの成功者ともいえる富裕層の多くが、中国の国籍をいとも簡単に捨てて海外移住していく現象は、せっかく誕生した多くの人材や資産が流出しているという点で、国家運営上の失敗といえなくもないのではあるまいか?共産党政権を維持しながら、豊かになった人々をいかに中国籍にとどめることができるか?習近平政権は今、大変な難題に直面している。
とにかく、中国の人は総じて投資の話、お金儲けの話が大好きだ。新中国の成立(1949年)から小平の改革・開放政策(1978年~)が始まるまでは、公然とお金儲けの話をすることは資本主義の道を進むことと見なされ大きなリスクが伴った。そのため皆沈黙を保っていたが、元はといえばある種、何千年の歴史を持つ商人国家でもある。特に90年代初頭以降は社会主義市場経済という大義名分の下に、社会主義を標榜しながら、実際にはかなり泥臭い資本主義の道を歩んできた。この間、副作用として共産党幹部の腐敗は目を覆いたくなるほど蔓延し、格差はどんどん拡大していったが、それでも人民(国民)が総じて豊かになっていたため、何とかここまで政権が持ちこたえてこれたのだと思う。
お金の話は日常の生活の中に本当に良く出てくる。日本人だと普通訊かないこと、例えば給与やボーナスなどについて「自分はいくらもらっているが、お前はいくらもらっている?」などと平気で(親しくない人にも)訊いてくることがある。また、日本だと商売や株、不動産などで大金を儲けても公然と言わない人が多いし、それが美徳とされているような気がするが、中国では公然と人前で金儲けについて自慢する。さらに「誰々が不動産でいくら儲けた」等他人の金儲けの話までも日常会話の話題に良く上る。日本人からするとまことに嫌らしい文化だと思うが、中国では金儲けに成功したことそれ自体が、自分の人生の成功の証、自らに対する評価と考えている人が多く、自分を成功者に見せることで、さらに大きな金儲けのチャンス(多くの人が群がってくる、商売チャンスが広がる)が巡ってくると信じている人も多いのであろう。
今回訪中時に一部知識人、学識者と呼べるような人にも会ったが、そうした人も投資や金儲けに関心が強かった。「日本の不動産は、どうやったら買えるのか?」「日本の不動産売買の税金やコストはどうなっている?」「今買っておけば東京オリンピックまでに上がるのではないか?」「日中関係が改善すれば、中国の資金は日本にいくぞ」等等。不動産バブルで豊かになった人が増えている一方で、中国の不動産には高値警戒感があること、加えて為替が大きく円安に振れたため日本の不動産を相対的にものすごく安く感じているようで、日本の不動産への関心はとても強いものを感じた。日本で学者や知識人が、そうした金儲けや投資に関する話を人前で語ると、下品なヤツとの烙印を押され、軽蔑されること間違いなしだと思われるがそんなことは中国ではお構いなしだ。そもそも、日本の学者や知識人で海外の不動産相場に関心を持ち、アンテナを張っている人がどれだけいるであろうか?
一方気になることがある。中国では金儲けに成功し、急速に富裕層は拡大しているが、その富裕層の半分近くが海外移住を考えていることが複数の調査機関の調査で明らかになっている。実際に多くの人の話を聞いても(私の友人はシンガポールへの移住手続きを行っている)、多くの富裕層が自らの資産を海外に移転することに必死になっていることは明らかだ。どんどん中国で豊かになっているのに、その人々が中国の国籍を捨てて海外移住するというのは一体どういう理由からなのだろう。
おそらく様々な要因があると思う。1つは現共産党政権が将来どうなるかわからないということに関する不安。もし何らかの政変が起き、大混乱に陥った場合、自らの中国での資産が没収され、没収されなくても大きく減価する可能性があるという不安、また、中国でビジネスに成功している人は政府との関係の中で商売をしている場合も多く、権力闘争や汚職に巻き込まれるリスクが付きまとうため、その時に備えてリスクヘッジをしておくこと。その他、子供の教育、環境、食の安全、ビザの問題(自由に海外を移動できる)、汚職役人が単に海外逃亡したい等様々な要因があると思う。ただ、こういった富裕層が海外移住後、中国との関係を完全に断ち切るのかと言えばそうではないだろう。それは香港返還の時に、多くの香港人が海外国籍を取ったものの、商売は外国国籍の中国人として同じ香港で継続しているのと同じである。国籍に対する考え方が全く日本人と異なり、自らがまた家族が、この世に生を受けている間、上手に生きていくための、うまく立ち回るための手段の1つとして考えているにすぎないのであろう。中には家族で違う国籍を取得するなどの例も非常に多い。自国に対する愛国心、忠誠心はどこにいってしまったのだろうかと思うが、ある意味、発想は非常にグローバルだ。
なお国連の報告書によると中国人移民数は2013年時点で930万人に達し、移民先で人気なのはアメリカとカナダ(胡潤の報告書)だという。日本の人口の13分の1がすでに移民してしまっているというのは驚きだが、そういう国家では現共産党政権も長く持たない、と習近平総書記も考えているに違いない。「トラもハエも叩く」でおなじみの反腐敗運動は当初の期待以上に大物も捕まえ一定の成果を上げている。それもあり中華民族の偉大な復興という中国の夢をスローガンに掲げる習近平政権は、中国ではかなりの世論の支持を得ている(と言っても、マスコメディアによる支持率統計も普通選挙もないが)と思う。しかし、ある種ビジネスの成功者ともいえる富裕層の多くが、中国の国籍をいとも簡単に捨てて海外移住していく現象は、せっかく誕生した多くの人材や資産が流出しているという点で、国家運営上の失敗といえなくもないのではあるまいか?共産党政権を維持しながら、豊かになった人々をいかに中国籍にとどめることができるか?習近平政権は今、大変な難題に直面している。
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