不格好オヤジの日中のぼやき

主に日本と中国の話題についてぼやきます。

さすが「玉ひで」の親子丼

2016-03-04 10:39:12 | グルメ
 昨年末、郊外の自宅から狭いながらも水天宮や人形町に近い都心に事務所(といってもただの小さなマンションの部屋)を移したが、引っ越したことによって食事処の楽しみが倍増した。人形町・水天宮界隈は、今時の大手外食チェーンやラーメン屋などどこにでもある店もそれなりにはあるが、江戸の昔から栄えただけあって老舗レストラン、独特の雰囲気を醸し出す小店も多い。夜の一杯も悪くはないが、新規開拓はどちらかというとお手頃価格で済むランチ中心に行っている。

 老舗の中でも一番の有名どころは、「玉ひで」であろう。人形町の地下鉄駅から出てすぐ目の前にあるこの店は、創業宝暦十年(1760年)と言われ、昼時ともなるといつも長蛇の行列ができる。正式には軍鶏(シャモ)鍋等、軍鶏を使った鳥料理を前面に打ち出しているのだが、明治の昔に鳥鍋の残りに卵をとじて食べる客にヒントを得て、五代目当主の妻(店内に写真あり)が考案したといわれる親子丼が今となっては店のトレードマークとなっている。「玉ひで」は親子丼発祥の地なのである。

 



「玉ひで」を紹介するTV番組も何度かは目にはしてはいたが、ランチで並ぶのには抵抗もあったし、何より店の入り口に置かれた価格表(親子丼で1500円~2200円)を目にして、親子丼ごときに1000円以上払えるか?というケチ臭い気持ちから、しばらくの間入店を見送った。

 


 ただ、本当に昼時はいつも行列である。やはり、これだけ並ぶ親子丼がどんなものか気になる。まあ、せっかく近くで仕事しているので、話のタネに一度は試してみるかとばかり1月下旬に初めて行列に並んだ。時間は11時45分頃、前に20人ほどが並んでいたが、皆親子丼一杯食べて立ち去るためであろう、それほど待たされることもなく15分~20分程度で、店の中に入った。と思いきや店の廊下にも人が並んでいた。





 店の廊下の途中に前払いで注文精算する場所があり、そこで一番ノーマルかつ低価格(と言っても1500円)の親子丼を2つ注文した。言っておくが、一人で二杯食べるのではない。もう一杯は連れの分だ。店内廊下は10分程度だったと思うが、想像より待たされることもなく、席に案内された。







 ちなみに、「玉ひで」は13時までに行列していないと、中に入れてもらえずシャットアウトとなる。13時以降行列は突如なくなるが、打ち切られているからである。私の前に並んでいた老夫婦はかつてここで並んでいて、自分たちの何列か前で打ち切られた経験をされたとのことだった。



 そんな調子なので、店側としては稼働率、回転率を高めるため、4人未満の少人数だとほぼ間違いなく相席での案内をしている。もっとも昼は基本、親子丼一杯で立ち去るわけで相席で十分だと思う。席はきれいだし、ギュウギュウ詰めでもないのでご安心あれ。

 席に座ると、茶と軍鶏で取った鳥スープの2つの茶碗が運ばれてくる。鳥スープには若干の塩味が効いていて、まあ、その辺の鳥鍋屋のものとそれほど変わらない感じである。廊下で注文した時点で、店の女中さんが誰が何を注文したかを把握しており、席で再度注文内容を告げる必要はない。



 いよいよ親子丼が運ばれてくる。蓋を開けるとトロトロの卵と軍鶏肉がうまく絡み合って見た目も大いに食欲をそそる。口の中に入れても、素材と割り下、また、お米が抜群のハーモニーを生み出し、何とも言えない味わい深い味である。



 

 なお、「玉ひで」の親子丼は、卵と軍鶏肉それに割り下(+お米)以外は一切使用しておらず、他の店で普通入っている玉ねぎや三つ葉等は入っていない。昔は玉ねぎも三つ葉もそう簡単には手に入らなかったであろうし、この親子丼が考案された明治時代の味をそのまま引き継いでいるともいえるであろう。いずれの素材も厳選されたものを使い、余計な香りに邪魔されず軍鶏と卵(まさに親子丼)のもつおいしさを最大限引き出すべく様々な工夫がなされているのであろう。とにかく味は格別である。食して見るまでは親子丼にしては値段が高すぎと疑いの目を持っていたが、コストパフォーマンスで考えれば、十分納得できるものであり、これまで玉ひでさんには誠に失礼であった。

 ところで、玉ねぎや三つ葉など箸で絡めないと食べにくい素材が入っていないからであろうか?テーブルの上には箸が準備されておらず、小さなしゃもじが置かれていているだけである。皆この小さなしゃもじだけで親子丼を食している。これなら、箸が使えない欧米人でも問題ない。



 さて、「玉ひで」の親子丼は絶品だが、育ちざかりの若者や食欲旺盛な人には、間違いなく量的に物足りないだろう。かくいう私もその1人である。昼は親子丼以外にサイドメニューもないので、どうしても腹に貯めたい若者は玉ひでの後、甘酒横町にある柳屋のたい焼きでも食べたら良いであろう。大食の友達を連れていくと、「1500円出したのに腹いっぱいにもならない」との反応になるかもしれないが、小食の彼女を連れてのデートや老母などを連れて食せば、満足感、達成感は得られるはずだ。

その後も玉ひでには二度行って、「三昧親子丼」「上レバ親子丼」を食した。いずれも絶品であるが、私のお勧めは「親子丼」または「三昧親子丼」である。時間が立つと無性に恋しくなる味である。


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