ピーターラビットのおはなし福音館書店このアイテムの詳細を見る |
映画・俳優さん関係で取り上げたいこともあるけれど、今日はこのニュースを。
一昨日、読売新聞夕刊1面に出た記事です。
「ピーターラビット」翻訳、明治39年の日本語版が最古
ご存知ビアトリクス・ポターの『ピーターラビットのおはなし』、これまで最古の外国語訳は1912年のオランダ語訳というのが定説で、また日本語訳では、1918年雑誌『子供之友』に掲載されたものが最も古いとされて来ましたが、最新の研究により、原作(商業)出版からほんの4年後、1906年(明治39年)『日本農業雑誌』上での翻訳が世界最古であると判明したとのこと。
子供向けの雑誌ではなさそうですが、今から101年前に日本で既にピーターラビットが紹介されていたとは、驚くと共に嬉しくなります。
「マグレガーさん=杢平爺(もくべいぢい)さん」というネーミングも時代を感じさせて楽しいですね。
読売新聞本紙には、その雑誌の当該ページ画像も掲載されていました。
ピーターに始まるポターの絵本シリーズ、日本で一般に知られているのは、いしいももこ(石井桃子)さんの訳による福音館書店版ですが、奇しくも今年は石井さんご自身が百歳のお誕生日を迎えられ、福音館、岩波書店共催で、大手書店またネットショップでも記念フェアが開催されています。
おしらせは下記より。
福音館書店
岩波書店
翻訳と言いご自身の作と言い、私が子供の頃愛読していた数多の著作が、いまなおちゃんと「現役」であり続けているのは素晴らしいです。
ピーターラビット、プーさん、ミッフィーならぬ「うさこちゃん」シリーズ、エリナー・ファージョン作品集、そして『ノンちゃん雲に乗る』……
ピーターラビットに話を戻すと、ポターの絵本はもちろん子供が読んでも面白いし、「かわい~」と受け入れられるものですが、そこには子供のための本であっても子供を甘やかさない、ドライで冷徹な視点が感じられます。
ピーターラビットやいとこのベンジャミンバニー、またその家族を巡るシリーズや、『あひるのジマイマのおはなし』などには、生き物同士が出会うときのどうしようもない「残酷さ」が盛り込まれていますが、だからと言って殊更それを強調するのでもなく、教訓臭もありません。
評伝等を読むと、ご近所からはむしろ「子供嫌い」の人と思われていたそうで、また少女時代から自ら動物の骨格標本まで作ってスケッチしていたという、科学者的な観察眼がその根底にある人だったようです。正確なデッサンに基づいた上でのキャラクター化だったわけですね。
また、大人になって読み返した時、別の見方や読み方が出来るのも、このシリーズの嬉しい所です。
『こねこのトムのおはなし』など、子供の目と大人の目とでは、およそ異なるお話に映るし、『のねずみチュウチュウおくさんのおはなし』の面白さが実感できるのは(身につまされるとも言う)家庭の主婦だと思います。
「残酷さ」で言うと、こねこのトムが「ねこまきだんご」にされかける『ひげのサムエルのおはなし』なんて、幼児に読み聞かせたら軽くトラウマになりますよ。しかし私自身は、子供が良い意味での(と言うのも変な表現ですが)「トラウマ本」を持つのは悪いことではないと思っています。
マニアックな見方として、既存のお伽噺やマザーグース等、元ネタ探しを試みるのもまた一興ですが、別に予備知識などなくても百年前も現代でも面白いというのは、やはり素晴らしいことだと思います。