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のち
地響きがする──と思って戴きたい。
これぞ京極夏彦の怪作!
ファンにはもはや説明不要ですが、1990年代後半の日本のミステリやエンターテインメントの話題作を、タイトル、内容ともパロディにした作品が収められています。
著者自身と似た名前の各話の「作者」が次の話では作中人物として登場する、という形式のメタフィクショナルな連作で、その内容の下らなさたるや、筆舌に尽くしがたいものがあります。
いえ、私自身は、作者の悪意や稚気や企みに満ちた、こういう作品はかなり好きですが、2000年に単行本が出た当時、「京極堂シリーズ命!」みたいな真面目なファンの皆さんからは、かなりのお怒りと失望を買ったと記憶しております。今でも、読んで怒りだす人や、読後投げつける人は多いかも知れません。
まあ、ギャグはけっこうベタだしねえ。故意にすべってる面もあるし。でも、トリックや「ミステリ」の構造としては、案外しっかりしてるんですよ。とほほ……
今やノベルス版の『(安)』や文庫版の『。』も出ていますが、この単行本『(仮)』は祖父江慎のブックデザインが見事!本全体が分厚い上に(全500ページ超!)しりあがり寿の装画はあくまでも暑苦しく、断ち切りは角がなくて「丸く」、よく見りゃ栞までもが「太め」になってます。まさに「完全肥満。くびれなし!」(作中作「脂鬼」の帯の惹句。)
でも、そんな「デ○」本なのに、さくさく一気に読めてしまうのはさすがと言うか何と言うか。
「理油(意味不明)」にも死ぬほど笑いましたが、「すべてがデブになる」がいちばん好きかな?
ところで、何で今頃この本を紹介する気になったかと言うと、今冬があまりにも寒かったから……
ではなくて──
えーと、京極氏のお名前で検索されて、いきなりここに迷い込んでしまったかた向けに解説しますと、当ブログで先日来話題にしている、フランク・ミラー原作、ジェラルド・バトラー主演で、先頃撮影が終了した "300" という映画(2007年公開予定)があるんですが、これがまあ、現在ネットで公開中の動画や画像を見ると、
「革の褌とブーツ(&時々赤マント)以外殆ど何も身に着けていない男どもがひしめきあっている」
という、暑苦しいことこの上ない代物でございまして……
あれらを見て真っ先に思い出したのが、京極先生のこのお作、特に巻頭の「四十七人の力士」だったのですよ。
ああ、しかしこのネタを出すには少し時期を逸したな…せめて初場所中に出しておくんだった……
これは、それだけの話なのである。
だから──怒らないで貰いたい。
やはり好みが似てるのか?「理油(意味不明)」と「すべてがデブになる」が受けましたです、元ネタよりも好きです。
しかもこんな時期から300に関連付けていたんですね、お見事!と言っておきます。
いや私も、思いがけずそちらでその記事を拝見して、思わずTB送らせて頂きました。あれは、たまに読み返すとやっぱり笑ってしまいます。
オフザケながら、ちゃんと元ネタを踏まえたパロディになっているところはさすがですね。
ところで、『姑獲鳥』(←一発で変換できました!)映画、自分はどうしても観る気がしませんでしたが(原作が何であれ「実相寺昭雄の」映画になってしまうことは判りきっていたので)、『魍魎』は観に行ってもいいかな……という気になっています。