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映画・舞台の感想や俳優さん情報等。基本各種メディア込みのレ・ミゼラブル廃。近頃は「ただの日記」多し。

『ピュア』(2002)

2006-12-28 02:07:42 | DW出演作品レビュー

あらんどぅあさんの所やすなみさんの所で、既にご紹介下さっていますが、デイヴィッド・ウェナムが出演した2002年の英国映画 "Pure" の日本版が、タイトルはそのまま『ピュア』として、さる12/22リリースされたようです。但しレンタル・オンリー。

詳細はこちら、また上記お二人のブログをご覧下さい。
字幕付き、日本語吹替えも有り、というのが嬉しいですね。でも、ツタヤのこのストーリイ紹介、ちょっと違うんじゃないかという気が……
普通のキーラファンがこれを信じて観てしまったら、ショックを受けると思いますよ。

あらんどぅあさんのブログでは、"300" アートブックもご紹介下さっていますので、そちらもご覧になって下さいね(私はこれを米Amazonで予約しましたが……日本で申し込んでおけば良かったかも)。

さて日本版『ピュア』、私も近所のツタヤで探しましたが、見つかりませんでした……
言いたくないけど、韓流が棚どころか列(?)二つ分、あれこれのUSドラマシリーズが一つ分占有しているってどうなんだ?と言いたくもなります(結局言ってるし)。

実はDVDは豪版を持っています。そちらはR指定。英国では十八禁だったようですが、それは性的描写のためではなく(そっちは直接描写なし)、これがドラッグ問題を取り扱った映画であり、その「使用法」のディテールなどがはっきり描かれているためと思われます。

以下、前ブログで一度(昨年6月頃)記事にしたレビューを、一部修正を加えて再掲載します。但し英語字幕もない版を観てのレビューですから、勘違い等あると思いますので、その点を留意の上でお読み下さい。

ロンドンはイーストエンドに、母親と弟と三人で暮らす十歳の少年ポール。
ヘロイン中毒の母メルの元には、死んだ父の旧友レニーが始終訪れて来る。実はヤクの売人でもあるこの男、クスリ代を取り立てに来るだけでなく、メルのカラダも頂き、時には顔が腫れるほどの暴力もふるっていた──

前半はとにかく、クスリに依存し、それを持って来る暴力男に依存し、幼い息子にまで依存するメルのダメっぷりと、ポールの健気さ(と言うより痛々しさ)が対比して描かれます。
決してお涙頂戴式のベタな描かれ方ではないので、悲しさよりも、なんでたった十歳の子がこんなものを背負わされなくてはいけないのか、という怒りとやりきれなさがふつふつと湧いて来ます。
しかし、やはりレニーの客だった友人がヤクのやり過ぎで死亡、更に、自分のせいで息子がどれだけ追いつめられていたかに気づいたメルは、遅ればせながらクスリを断ち、更正しようとするのです。

ここで重要なのが、警察やソーシャルワーカー、そして亡き夫の両親(ポールの祖父母)といった、「家庭」外の大人たちの関わりや働きかけ。やはり第三者の、または社会の側からの適切な介入というのは必要なことなのです。これは、DVや幼児虐待等の事例に於ても同様でしょう。

とは言え、西原理恵子の傑作『ぼくんち』のような、悲惨の底を突き抜けた叙情をひそかに期待してしまっていた私にとっては、やや肩すかし感もあったことは否めません。
しかしこれは、勝手にそんなものを期待していた自分が悪いので、この映画に対してはないものねだりというものでしょう。

刑事が子どもを麻薬捜査の囮に使うくだりには疑問の声もあるようですが、警察の人間が自らの職分の範囲内で、ひとりの大人としてあの子に関わろうとしたら、ああいう形しかないんじゃないでしょうか。
それに、ポールが自分自身の手できっちりヤツに引導を渡してやらないことには、彼はそのしがらみを断ち切れないだろうということも、刑事さんにはわかっていたんじゃないかな。

さっきから「その男」だ「ヤツ」だと言っている売人のレニー。これを演じるのが、我らのデイジー、デイヴィッド・ウェナム。
いや、「デイジー」なんて呼びたくなくなるくらい、半端じゃなく怖かったです。

"The Boys" のブレットも怖いけど、ああいう「壊れた」空っぽの人間の怖さではなくて、一見スマートな優男で、それなりの社会的生活を送りながらも、「悪党」としか言いようのない人間の怖さです。
ブレットみたいな人間には、初めから近づかなければいいとも言えますが、レニーみたいなタイプの悪党は、知らず知らず向こうから近寄って来て、気がついたらがんじがらめ、という羽目になっているかも知れません。

何しろポールの憧れの人でもあるウェイトレスのルイーズ(これがキーラの役)をヤク漬けにし、妊娠させた上、殴る蹴るして流産させちゃうんだから、キーラファンから剃刀くらい送られて来るかも、と思ってしまうほどです。
まあ、薄っぺらな悪党ではなく、ちゃんとリアリティある「怖さ」を感じさせてくれるのが、デイヴィッドの演技力というものなのでしょうが、それにしてもねえ…
当ブログ10/2付エントリーでちらっと触れましたが、キーラがこの映画に出たことで演技者としての自信がついたと語ってくれているのが、せめてもの救いかも知れません。

しょっぱなの「あっぴばーすだい」( "Happy Birthday" のこと)と言い、すごいコックニー(ロンドン下町訛り)に、声も他のどの役とも違った感じで、現在でも「もしかして吹き替え?」説と「いや本人の声だろう」説があって、決着を見ていません。

なおこの映画では、サッカーが登場人物たちの「夢」や「明るい世界」の象徴として扱われています。
アメリカでは2005年6月に限定公開されましたが、プロサッカー後進国アメリカでそれが通じたかどうか…そのあたりも「限定公開」の理由の一つかも知れませんね。

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4 コメント

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地元には3つありました (mahito)
2006-12-28 08:42:26
こんにちは!
 私もあらんどぅあさんのところで記事を見かけて早速借りてみたのです。UK版を持っているので既に見てはいるんですが日本語で見ることが出きるなんてビックリでした。
 
 一番驚いたのはポール役のハリーくんが『オリバー・ツイスト』ではかなり人気がある役だったので成長したなぁってことでした^^

 地元のツタヤでは3本あって割と見やすい位置にあったのが更に驚きでした。
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レンタル… (Q)
2006-12-29 00:32:17
mahitoさん、こんばんは。
3本も入れてくれたとは、なんて良いお店でしょう!
同じツタヤでも、入荷状況は、店舗や仕入れ担当の人の趣味、見識に左右されることが多いんでしょうか?
私も年明けにでもまた行ってみますが、それでもなかったらオンライン・レンタルも考えるかも。
でも、本当はそれよりセル版を出して欲しいです。

ところで、ハリー・エデンくんって『オリバー・ツイスト』にも出ていたんですね。
DW→ハリーくん→『オリバー・ツイスト』→ポランスキー監督→DW(マラケシュ繋がり)という、不思議な円環も出来てしまったような……
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その後いかかですか? (あらんどぅあ)
2006-12-29 22:01:39
こんばんわ、その後見つかりましたでしょうか?
私の近所のレンタル屋も「TUTAYA」で、それもそんなに大きくもないのに、韓流が3列も4列もハバをきかせ、とうとう洋画新作は奥に追いやられるということに。
そして、そのまた奥に「未公開新作」ってコーナーがあって、もうそこしか頼るものがない私は、「なにがいねが~?」と食い入るように眺めておりました。頭の中はディジーの映画のタイトルを次々回転させて。
隅にありませんか?ちなみにオンライン検索では、その店の在庫はありません(笑)。
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駄目かも (Q)
2006-12-30 01:33:11
こんばんは。
私も「新作」コーナーや「未公開」コーナーを、くまなく探してみましたが、見つかりませんでした。
そこは『ダスト』も『ハーモニー』も置いてくれていたので、期待したんですが……
年内はもうお店には行けないと思いますが、年が明けたらまたトライしてみます。
それも駄目なら、やはりオンラインしかないかも知れません。
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