連日『オーストラリア』やヒュー・ジャックマン情報の追っかけに忙しく、この映画の感想が書けずにいましたが、それも一段落したので上げておきます。そうこうしているうちに、公開の終わってしまった劇場もあるかも。
『彼が二度愛したS』公式サイト
ストーリー:舞台はニューヨーク。会計士ジョナサン(ユアン・マクレガー)は、様々な会社やオフィスで主に短期派遣の仕事をしていた。恋人はおろか親しい友人もいない孤独な日々。そんな或る夜、大手弁護士事務所でひとり残業中の彼に、ワイアットという男(ヒュー・ジャックマン)が声を掛けて来る。
最初から気やすく言葉を交わし、昼はテニス、夜はナイトクラブと誘い出すワイアットに、ジョナサンが心を許すのに時間はかからなかった。
或る時、出張へ向かうというワイアットと携帯電話を取り違えたことをきっかけに、ジョナサンは会員制秘密デートクラブの存在を知る。ワイアットの許可も得て、そこに属する多くのセレブ女性たちと次々逢瀬を重ねるジョナサン。
その一方で、彼は地下鉄駅で出会った謎の女性「S」(ミシェル・ウィリアムズ)にも心惹かれていた。
しかし、そんな彼をおそるべき罠が待ち受ける──
というわけで、一応「サスペンス」に属する話ですが、前半はそれなりにハラハラさせてくれるものの、終盤は何とも締まらない感じでした。これが日本のテレビのサスペンス劇場なら、まあ見られるレベルですが、劇場用映画としては困ったものです。
随分前から撮影中の画像が流出していたり、それどころか公式画像までもがかなりのネタバレだったせいもあって、後半の展開にも驚きはありませんでした。
この映画の困った点については、某掲示板の作品スレッドでうまくまとめてくれていたので引用させて頂きますが、ネタバレ全開につき伏せておきます。
疑問点1
・どうやってヒューは大企業のうなるような裏金の隠し場所やら何やら知ったの?
・どうやってヒューは中国人街の奴らに口裏合わせさせたの?
・どうやってヒューはあのリヒターの絵のある部屋に入り込んだの?
あの老婆をどうやって丸め込んだの?
・どうやってヒューはユアンの部屋に入り込んだの?しかも2回も
・そもそもどうやってヒューはあの会社に入り込んで幹部クラスの人間と楽しく談笑する仲になったの?
疑問点2
・何でユアンは縛られてる画像持っていって警察に相談しないの?アホなの?
・何で一般人のユアンが偽造パスポートなんか入手出来たの?
・何でユアンは先に銀行に行って全額引き出しておかないの?アホなの?
・何でユアンは2、3回会っただけの女の為にあそこまで命張れるの?
・しかも自分を殺しかけた奴とグルだった女とニヤニヤ恋愛再開ってこいつアホなの?
・何でユアンは金全部置いて行くの?これからのニート人生どうするの?
その他疑問点
・あ、忘れてた、既に2人殺して自分も殺され掛けた奴に丸腰で会いに行くユアンは馬鹿なの?
・何でヒューは金融屋の娘を殺すとかそんな無意味な事するの?
・殺人犯に仕立てようとしたり爆殺しようとしたり何がしたいの?
・何で2000万も預金がある口座の解約条件みたいな重要な事が何の書面での契約も無しにコロコロ変えられるの?
その確認がヒューの所に行かないの?
スペインの銀行はザルなの?
いちいちごもっともで、あまり反論の余地もありません(笑)。
疑問点1の2つ目なんて、エドワード・D・ホックなら、そのネタだけで短編の一つも(勿論もっとちゃんとロジカルに)書いてくれますよ。実際そういう作品もあるし。
それにワイアットによる「ジョナサン」のサインもねえ……『太陽がいっぱい』のリプリーどころか、『氷の華』のヒロインにだって(原作の方ね。TVドラマは未見)ちゃんと「努力」する描写はあったのに、あれでいいんですかね?
そうは言っても、ヒューの悪役っぷりは、ファンとしてはなかなか見ものでした。
ふと思ったけど、ヒューは『ソードフィッシュ』の「あちら側」をやってみたかったんでしょうか。ワイアットには、あの自称ガブリエルほどの得体の知れない不気味さや凄みはないけれど、本気で「わ、コワイ!」と思うシーンもありました。
まあ前述の通りあまり出来がいいとは言えない脚本にプロデューサーでもあるヒューが飛びついたのは、「悪役がやりたい!」ということだけだったのかも知れない、という気もしますが。
それと、自分はミシェル・ウィリアムズもけっこう好きなんです。あのふてくされたような眼差し、上向き加減の鼻、ちょっと品のない笑顔。それに金髪!美脚!──って、何だかオヤジ目線ですみません
ユアンの「冴えない男」っぷりも可愛かったし(それだけに、後半の変身はもっと鮮やかに見せてほしかったです)、それぞれの俳優さんのファンなら、それなりに楽しめる部分もありました。
逆にそれ以外は見るべきところがない、とも言えるわけで、これだけの俳優さんを集める意味があったのか疑問です。主演3人はまだしも、シャーロット・ランプリングやマギーQは「無駄遣い」としか言えない扱いで、本当にあれでいいんでしょうか?
そう言えば、原題が『Deception』というありふれたものに落ち着くまでには、『The Tourist』→『The List』と変遷がありましたが、古今東西の美人女優を集めたこの「リスト」自体、実はあまり意味ないものでした。
だってこれって、ジョナサンとワイアットの関係に絞るなら、「リスト」なしでも成立する話ですよ。たとえばジョナサンがゲイだったなら?むしろその方が話題性はあったんじゃないか、なんて思います。
とまあ、アラを探すならいくらでも探せる映画で、トンデモ展開と言われつつ『プレステージ』は緻密な作品だったなあ、と改めて思いました。
『タロットカード殺人事件』についても、自分は批判的なことばかり書きましたが、好き嫌いはともかくウディ・アレン印のビター・コメディとしては楽しめる作品になっていましたしね……
これが初監督作だというマーセル・ランゲネッガーの演出には才気の感じられる部分もあっただけに、返すがえすも脚本の弱さが残念です。
そうですね…悪役なら悪役で、もう少し何とかならなかったんでしょうか?
あれだけ大きいオフィスなら、はいって来る時には客のふり、ジョナサンの前ではそこのスタッフのふり、ということも出来るかも知れませんね。
でも、他はやっぱり……です
>にいな様
リヒターの家は、『スティング』で見た或る方法を使えば何とかなるかも知れないし、サインのくだりも事前に「努力」はしたのかも知れない……と、観る側が補完しなくてはいけないのも困ったものです。
ミステリやサスペンスは、そういうディテールの積み重ねこそが肝心なのに。
ヒューやユアンの演技自体は悪くなかったので、いろいろ残念でした。
>くまんちゅう様
何しろ、例の「リスト」がメインプロット自体には殆ど何の意味もなかったということが致命的でした。
「あの二人」があれからどうやって生きて行くつもりなのかも気になります。やはりスペインはいろいろザル……で片付けちゃまずいと思います
疑問は成る程どれももっともですね
先が読めるサスペンス以前に粗が多かったんですね
キャストに気を取られて見逃しちゃったかな?
まあそれも含めて普通評価な作品でした
リヒターの絵の家は、あのおばさんが入院中とか不在の間に使ったとかね。
私、サスペンス度はプレステージ>S>タロットかと思っていましたが、プレステージ>タロット>Sなのかな~
ツッコミどころ満載だけど、ヒューやユアンのファンには楽しめる作品ですね。
マギーQやランプリングさんは本当に使われ方がもったいなかったですね。
それから『氷の華』テレビ版、ヒロインは努力してましたよ~。
ひとつ。
ビジネスの世界だと、「この人誰だったっけ?」っていう人とでも知り合いの如く談笑ってありえると思います…。
過去に名刺もらってても顔忘れてたりするし(^^;
そこをうまく利用したんでしょーね、とか思いましたけど。
他はやっぱり…。