どうもこんばんは、令和無色です。
今回紹介する小説はこちら。
『連続殺人鬼カエル男』
古本屋で背表紙を見た時、数年前に実写映画化された
「ミュージアム」という映画の原作だと思ってました。
でも記憶の奥底で確かミュージアムの設定だと
「雨の日にだけ事件を起こす」みたいな犯人だったと思い出す。
何も調べずに失敗してしまうのはこれで二度目である。
しかしこれを手に取ったことは僥倖だった。
<設定>
新人警察官の古手川は猟奇的な殺人事件の捜査に当たった。
現場には幼稚な文字で書かれたメッセージが残されていた。
閑静な分譲マンションの13階に死体となってフックで吊るされてた女性に
関して班長渡瀬と共に調べていくと、第二の殺人事件が起きてしまう。
現場には犯人を特定する証拠もなく、ただメッセージだけが残されるだけ。
次々と犠牲者が出ていく中で、古手川は犯人を捕まえることが出来るのか...
ここからネタバレが含まれます。
<感想>
まず、ハッピーエンドでは終わりません。
それどころか正直胸糞悪い展開もある。
R-15というか少し子供には伝わりにくい性的虐待の描写もあるので、
特に物語とか読むときに感情がのめり込む人は少々辛いかもしれません。
とはいえ、やはりミステリーというわけあって、
最後はすごい驚きの連続。
作中、多分コイツ犯人やろと思った奴が実は黒幕に操作されてたと思ったら、
さらに黒幕はその黒幕に操作されているという三重構造でした。
どこか既視感がありましたが、古畑任三郎のなかでこういうトリックが
あったことが後で思い出した。
登場人物がたくさん出てくるので、ちょっとまとめてみた。
上は警察と犯人やその原因となった人物、ちょっと登場する脇役
下は事件の犠牲者の方々。死に方に沿って書いた。
「よくそんなこと思いつくなぁ」ってぐらい惨い。
死者の尊厳が1ミリも感じられない、こんなことするのは異常者...
そう、異常者...
このミステリーの面白いところは、
人物の精神障害や、刑法39条に関する視点である。
事件の犯人である、当真勝雄と有働さゆりは言ってしまえば精神障害を持った
人物。ただし先天的なものと後天的なものと種類は別である。
当真勝雄は14才の時に幼女を殺害、どうやら漢字の読み書きが出来ない。
有働さゆりは小学生の頃、父親の性的虐待によるストレスから
小動物などを殺して生命を奪う快感を覚えてしまい、
近くに引っ越した妹分を殺害。
しかもどちらとも無罪で医療刑務所に入り、セラピーを受けて出所している。
当真勝雄の方は詳しいバックボーンが描かれていないため、
断定が難しいが、有働さゆりの場合は普通に可哀想である。
そして刑法39条では、
心神喪失者の行為は罰せない心神耗弱者の行為は、その刑を減軽する。
責任能力があるかどうかというのが関わってくる。
被害者遺族からしてみれば悪法にしか見えないだろう。
私もこの法には疑問を持った反面、
どういうキッカケで心神喪失、耗弱になったかは結構大事だと思う。
親の虐待や同年代からのイジメがキッカケなら悪いのは本人だけではなく
トリガーを引かせることになった原因の人物も同罪である。
でもその辺を見極めるのはほとんど不可能なのかもしれない。
o(`ω´ )o「だって人の心は複雑なんだもん。」
推測は出来ても、真相は本人しか知らない。
あとは舞台となる街の市民が暴徒化して警察署を襲うシーンや
古手川の当真戦、そして有働戦は臨場感が凄かった。
てか、古手川さんのしぶとさは本当に凄い。
渡瀬班長の強キャラ感が半端ない。
いろんな蘊蓄知ってるし、機転を効かせられる感じは凄い頼もしい。
古手川でも気付かなかった、事件の真相に気づいたが、
黒幕の黒幕である御前崎教授は一切殺人を犯してないので
捕まえられず、勝利宣言されて終わる中で、最後に
「復讐するのは人じゃない、神だ。」と言い残す。
実は渡瀬が最後に御前崎に言った一説は仏教では「因果応報」に通ずる
意味を持っている。
そして最後、逮捕された当真勝雄が心の中で、出所したら
次は御前崎教授(黒幕の黒幕)を殺そうと企てるエンディングで幕が閉じる。
最後の最後まで面白かった。
すごい考えさせられる1冊でした。