Kakuma News Reflector 日本語版

カクマ難民キャンプの難民によるフリープレス
翻訳:難民自立支援ネットワークREN
著作権:REN(無断引用転載禁)

2021年6月号 民族過激主義の暴力にも屈しないカクマ難民キャンプのコミュニティー / トロッサ・アスラト(KANEREボランティアライター)8

2021年08月07日 | カクマタウンとケニア
この記事はKECOMNETより委託されKANEREが企画し、2021年の世界報道自由デーに向けて書いたものである。テーマは「公共の利益としての情報」。トゥルカナ郡は首都ナイロビの408マイル北西に位置し、ケニアの47郡のうちで2番目に大きい。面積は1.5976㎢、総国土面積の13.5%を占めている。

同郡の大半の世帯は、農業とトゥルクウェル水力発電所を中心としたエネルギー部門、石油・ガス部門に依存して暮らしている。トゥルカナ西部は多様なコミュニティーの中心地でもある。

現在、トゥルカナ西部のカクマキャンプとカロベイエイ居住区で生活している20万人の出身国は21か国に上り、受け入れ地域の人々と穏やかに共存している。多様なコミュニティーは、文化、言語、経済を豊かなものにする。

カクマにはソマリア、エチオピア、ブルンジ、コンゴ民主共和国、エリトリア、ウガンダ、ルワンダ、南スーダンなど、さまざまな国からの難民が暮らしている。最大グループは南スーダン、ソマリア、コンゴのグループだ。意外にも、これらのコミュニティーは、暴力的な民族過激主義にさらされても回復する力を身につけている。

カクマ難民キャンプには4つのサブキャンプが存在し、開設された順に番号が付けられている。サブキャンプは泥や鉄板でできた家や商業施設が混在していて、小さな町のようだ。

カクマキャンプの住民は国籍によって4つのサブキャンプに分かれて住んでいる。カクマ1、2、3にはそれぞれ異なる人種が住んでいるが、到着したばかりの難民を受け入れているカクマ4は、元は南スーダン人のサブキャンプだった。国際金融公社(IFC)の最近の調査では、カクマ地域の経済を主導しているのは難民で、コミュニティーの多様性が功を奏し、年間の消費総額は17億ケニアシリング(約17.3億円)と推定されている。

カクマは長い年月を経て、多様なコミュニティーを築いてきた。異質のコミュニティーが存在することで、機会が生み出されたが、同時に課題も生じている。

都市化は、カクマに多様なコミュニティーが存在することの利点の一つで、これはトゥルカナ西部に多様な難民の入植地ができたことによる。

最近開始されたカロベイエイ統合社会経済開発計画 (KISEDP)は、受け入れ地域のコミュニティーと難民コミュニティーの双方に利益をもたらすと期待されているが、同時に郡内の多様なコミュニティーに依存するところも大きい。

KISEDPは政府主導、地域密着、コミュニティー中心、市場ベースの戦略で、20万人の難民とトゥルカナ・ウェストの受け入れ地域住民32万人に直接・間接的な利益をもたらしている。

これは2016年にUNHCRとケニア政府の合意のもとに始まった試験的なプロジェクトで、難民とホストコミュにティーの暮らしを向上させ、双方にサービスを提供することで、両者を護り、自立を促進させようというものだ。

この新しいアプローチは、「選択理論」に基づいて構築された。つまり難民と難民を受け入れているホストコミュニティーそれぞれが最大限の可能性を発揮できる環境を整えようというものだ。最近では多様なコミュニティーや市場の増加に伴う都市化で、トゥルカナ西部の町ロドワーが自治体として認定され、カクマ・カロベイエイも自治体として生まれ変わる予定だ。

KISEDPプロジェクトは50万人に恩恵をもたらすと期待され、その40%は東アフリカ諸国からの難民のコミュニティーだ。

KISEDPの資料によると、カクマの多様なコミュニティーの存在と新入植地は、トゥルカナ地域の経済全体に利益をもたらすなど永続的な影響を与えている。同州の地域総生産(GRP)を3%以上押し上げ、総雇用を約3%増加させ、経済統合を促進し、難民受け入れ地域での一人当たりの所得を6%増加させる、と言われている。

一方、多国籍コミュニティーが障害になることもある。主な課題は、民族に基づく暴力的な過激主義の再発だ。カクマはさまざまな国籍や民族のるつぼなので、民族的な過激主義を放置すると、その多様性が紛争の原因にもなる。

カクマでは設立当初から暴力沙汰が起きているが、そうした紛争には複雑な理由がある。貧困、資源、民族、ジェンダーなどが原因で暴力沙汰になる可能性もある。

近年は、民族的過激主義による民族間の暴力が蔓延している。難民キャンプでは民族内だけでなく複数の部族や民族が関与する暴力的紛争が広まり、深刻化している。最近、南スーダンの2つの部族間で起きた紛争がその例だ。

カクマのコミュニティーは、困難な状況や脅威にさらされているにもかかわらず、30年近くにわたり平和に共存する方法を見つけては立ち直ってきた。

私のコミュニティーであるカクマ1は、様々なコミュニティーやサブコミュニティが混在する小さな町だ。考えつく限りの物が買える店や、卸売業者、キャンプ地の住民やNGOスタッフ、観光客に人気のあるエチオピア料理のレストランなど、様々な経済活動が行われている。

カクマのコミュニティーは、民族に根ざした暴力的過激主義と闘うために、コミュニティー、個人、団体間で、さまざまな社会的絆、橋、つながりを築いてきた。

驚くべきことだが、こういったさまざまな平和構築の取り組みが、カクマキャンプの回復力を高めてきた。コミュニティーの回復力、確立されたビジネス、難民の広範な社会的活動には驚かされるものがある。

さまざまな背景を持つ難民が互いに交流し、訪問し合い、異なるコミュニティーの冠婚葬祭に出席し、宗教活動を行っている。

サッカーやボクシングで競い合い、同じ教会やモスクで礼拝をしている。このような活動を通じ、複数のコミュニティーやサブグループが信頼関係を築き、コミュニケーションを取るようになった。

難民の男性が地元のトゥルカナ人女性と結婚した例もある。こういった社会的なつながりが暴力を減らし、コミュニティーの回復力を高め、社会的な結束力を強化していると評価されている。


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