ザクロ売りの露天が並ぶ道路を走ると秦の始皇帝陵が左手に見えてくる。皇帝が即位すると同時に70万人動員して造らせたもの。高さ55m、周囲2000mもあり小さな山である。盗掘を防ぐための様々な工夫が凝らされていると言う。陵を登っていく観光客の姿が見える。我々は残念ながら素通りして華清池に向かう。
華清池は古い温泉地で唐時代玄宗皇帝が楊貴妃と過ごした場所、興味はなかったが発掘された浴槽跡等見て回る。火山がない中国では温泉が珍しいとのこと。1元で湧き出ている温泉に手足を浸すことができる。何より庭のザクロが見事だった。
華清池見物を終えバスに戻ると絵はがきや仏像売りが待ち構えている。日本人と分かると「絵はがき10組1000円!」と日本語で盛んに売りつける。彼らの表情には何が何でも売らなければと言った気迫が満ちている。負けずに断るのだが相手もあきらめずに次々やってくる。
西安市内に戻り,昼食を取る。最初にオードブル、肉、野菜、ご飯、パン、うどん、スープ、デザートの順、日本人に合う味付けであった。テーブル毎にビール2本つくのが良かった。
食後は隣接する土産屋に案内される、と言うより収容されると言った方が適切。絹織物から絨毯、玉、白檀、陶磁器、扇子、お茶何でもある。値段も高く、金を持っている日本人を相手にしている様子。ちょっとでも立ち止まって商品を見ると流暢な日本語で説明してくれ、その後は「買え」と言う。「いらない」と断るといくらなら買うのかと聞いてくる。冷やかし気分で半分くらいの値段を言ったらそれでいいから買えと言う。値段はあってないようなもの、相手に合わせて値段を決める中国流販売手法である。
買う人は良いが買う気がない私は居場所がない、仕方がなく椅子に座って休んでいるとすかさず店員が売る込みにくる。側にいた妻が機転を利かせて日本語が上手だがどこで習ったのか聞くと香川県の短大に留学したとのこと、話題が日本のことになったら店員の顔が普通のやさしい女性の顔になり、香川県のことを懐かしそうに話していたのが印象的だった。
土産販売の収容所から解放されて我々一行は西の城門に向かった。城門の中庭にバスを止め階段を上って壁の上に出る。明時代に造られたこの城壁は周囲12キロメートル、上部は1メートルもあり、マラソン大会にも使われているとのこと。唐時代には縦10キロメートル、横1キロメートル、周囲38キロメートルあったとのこと。今の3倍以上のスケールである。
長安目指して日本からやってきた留学僧は城壁の大きさに、そして唐と言う国の大きさに圧倒されたであろう。土産物屋になっている城門に入る。現天皇も見たと言う、2階の窓から砂塵でかすむ道路の先を見て、遥か東ローマ帝国のイスタンブールまで繋がるシルクロードに思いを馳せた。
予定していた陜西歴史博物館見学が国立西安美術館見学に変更になる。美術館に着くと休館中だが特別に見せると言う。言われるままに美術館に入ると西安の大学の日本語講師と称するいかにも怪しげな日本人の案内で中国現代絵画を見て回る。30分位見て回ると次に工芸品を見せると別の部屋に案内される。ショーケースが沢山並び中には玉や陶磁器等の工芸品が並んでい
る。このケースごと80万円で売ると言い出した。いよいよ本性を現したと様子を伺う。文化財級の名品なので中国で展示会を開催する時は貸してもらうことになるがそれで良いかと言う。だめ押しに購入した日本人のお礼の手紙も披露する手の込みようであった。同行の夫婦が購入した。ガイドに取ってリベートが重要な収入になるのであろうが団体ツアーの欠点である。
気分を変えて大雁塔に向かう。大雁塔は玄奘三蔵がインドから持ち帰った経典や仏堂を納めるために建てられた。高さ64メートルあり最上階の7階まで登ることができると言われ、入場料を払い二人で登る。階段が上に行くに従って狭くなり登りにくい。息を切らしてようやく最上階へ、早速窓から下界を覗いたがここでも黄砂のためかシルクロードを望めなかった。
夕食は「東来順飯店」で西安名物の火鍋、コンロ付きの鍋が銘々つき沸騰した湯に肉や野菜を入れ数種類のたれを付けて食べるもの、日本のしゃぶしゃぶである。あっさりして美味しい。皆気に入った様子であった。
夕食後、西安空港に向かう、国内線待合室には手頃な土産品が沢山あった。19時50分西安発、海南航空HU-7827便はウルムチに向け離陸。機内には中国人とウィグル人でほぼ満席、弁当スタイルの軽食が出る。飲みのもサービスにはビールがなかった。国内線ではアルコールがでないようだ。我々二人に取っては大変不満であったがやむを得ない読書と睡眠で過ごす。
ウルムチに23時10分到着、時差1時間だから2時間20分のフライトであった。
ウルムチ空港には体格の良い漢人ガイドが出迎えてくれる。各自荷物をバスまで運び乗り込む。
ウルムチは高層ビルが林立していた。小さな街を想像していたが大都会であったことにビックリさせられた。繁華街にある城市大酒店に0時到着、部屋は18階で見晴らしが良い。風呂に入ってバルコニーで外の夜景を見ながら二人でビールを飲む。砂漠の中のオアシス都市であることを忘れさせる光景であった。
気になった人々
◯よろいを着けない弓矢避け代わりの下級兵士の俑
◯高松の短大に留学した経験がある土産屋さんの女店員
◯美術館で会った大学の日本語講師と称する新手の土産屋
◯二人に抱えられてホテルのエレベーターに乗り込んできた若い酔っぱらい
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