ボブ・ディラン 2014年3月31日 Zepp DiverCity初日ライヴレポート by菅野ヘッケル
2014.04.01
見逃すな、この奇跡。世界がうらやむ日本限定特別公演ZEPPツアー!ついにスタート!!
東京初日となる3/31、ZEPP DiverCity超満員!圧巻のステージ。
風に吹かれて、転がる石のように約半世紀・・・ロックの時代を作り、時代を変革し、様々な人々の人生に影響を与え続ける、ロック界最重要アーティスト・ボブ・ディラン。2010以来4年ぶり、1978年の初来日公演以来通算7回目の来日公演が実現した。現在72歳、2014年5月24日には73歳となるディラン。今でも世界各地で年間100ヶ所以上のライブツアーを行い、それはファンの間で“NEVER ENDING TOUR”と呼ばれているが、1988年以来行われている、ディランの終りなきツアーには、日本だけ特別にまたもやライヴハウス・ツアーが実現。3月31日から4月23日まで東京、札幌、名古屋、福岡、大阪と24日間でなんと5都市17公演。会場は全てZEPP。
菅野ヘッケルさんからのライヴレポートです!!
【ボブ・ディラン、2014年3月31日Zepp DiverCity初日ライヴ・レポート】
驚きだ! 2014年日本ツアーの初日を見て、最初に感じたのはディランの声の良さだった。昨年11月末にロンドンで見たときよりもいい。4ヶ月間の休みの効果だろう。マイアミでレコーディングをしていたといううわさ話もあるのだが。ヒキガエルを押しつぶしたような声、と皮肉っぽく形容されることもあった最近の特徴的なヴォーカルはすっかり消えていた。代わって時には優しく、時には力強く、時には60年代を思い出させるような若々しいヴォーカルを聞かせてくれた。
午後7時、場内暗くなると同時にスチュ・キンボールが弾くアコースティックギターのリフが流れはじめる。薄暗いステージにグレーのスーツを着たメンバーが出てくる。最後に黒い衣装を着たディランが現れ、中央のマイクスタンドの前に立った。昨年秋のツアーでも着用していた両袖と前身頃に大きな刺繍が施された黒いジャケット、両側に白い飾りの入ったパンツを着ている。靴は白と黒のコンビ。
オープニング曲は、予想通り「シングス・ハヴ・チェンジド」だ。2曲目は「シー・ビロングズ・トゥ・ミー」。この曲ではハーモニカを吹き、60年代を思い出させるような引き延ばしたヴォーカルも聞かせてくた。ボブがグランドピアノに移動し、3曲目「ビヨンド・ヒア・ライズ・ナッシン」、4曲目「ホワット・グッド・アム・アイ」と続けた。ここまでは昨年秋後半のツアーと同じだ。5曲目にボブはステージ中央に移って「ブラインド・ウィリー・マクテル」をストップ&スタートを2回も取り入れていて歌った。すばらしい。ぼくの大好きな歌だが、歌詞の一部が書き換えられているように聞こえたのであとで調べてみなければ。
この後、「デューケイン・ホイッスル」「ペイ・イン・ブラッド」と最新作『テンペスト』収録曲が続いた。そして代表作「ブルーにこんがらがって」「ラヴ・シック」が歌われ、9曲、50分の前半が終わった。ボブが「サンキュー・フレンド。これから休憩をとる。15分で戻ってくるから、帰らないでくれ」と言い残して、ステージから消えた。メンバー紹介をしなくなったので、ボブのしゃべりが聞けるのはこのときだけだ。
きっかり15分後、「ハイ・ウォーター」で後半は始まった。背景に雲のような模様が投影される。つづいて「運命のひとひねり」。比較的新しい歌が中心になっている最近のコンサートなので、この歌には重みを感じる。次は「アーリー・ローマン・キング」では、ボブのピアノがリードをとる。伸びのあるヴォーカルとハリのある声によって、この歌は圧倒的な迫力のブルースナンバーに仕上がっている。かつてコンサートの大半を占めていたヘヴィなロックやジャムバンドを彷彿させるようなアレンジが少なくなった最近のステージでは、際立つ1曲に聞こえる。
後半4曲目はがらりと変わって、感傷的な「フォーゲットフル・ハート」。『トゥゲザー・スルー・ライフ』を代表するぼくの好きな歌だ。ハーモニカのイントロにつづいてトニーのストリングベースが重々しく響き、ボブのヴォーカルがていねいにことばを伝える。続く「スピリット・オン・ザ・ウォーター」で
「頂点を過ぎたと思ってるんだろ、絶頂期は過ぎ去ったと思ってるんだろ」
のくだりでは、お決まりの観客の叫び声が一部で上がる。会場全体から上がるともっといいのに。6曲めは今夜のハイライトのひとつ「スカーレット・タウン」。まさにバラッドとはかくあるべきとでも言いたくなるほど、みごとなできだ。ストーリーを伝えるボブのヴォーカル力のすさまじさを感じさせてくれた。後半の最後は「ロング・アンド・ウェイステッド・イヤーズ」。この歌のときだけ照明が明るくなりどうにかボブの表情をみることができる。「寂しき4番街」を連想させる短いフレーズを繰り返すこの歌は、ギターが中心のヘヴィナンバーに仕上がっている。マイクスタンドに片手を添えてポーズを決めまくるボブ。最後は「今夜はどうだった?」とでも言いたげなドヤ顔に見えたのは、ぼくだけだっただろうか。
アンコールは定番の「見張り塔からずっと」と「風に吹かれて」。何度聞いても飽きない。そして最後はステージ前方にボブを中心にメンバーが横一列に並ぶ恒例の「あいさつ」。もちろん、一言も発しない。ファンの喜ぶ顔を見回して、そのまま会場から去っていった。ありがとう、ボブ。
昨年秋のコンサートとセットリストはほとんど同じで、休憩もあった。収容人数2500人のライヴハウスで9日間、いったい二日目以降はどんな風になるのだろう。(菅野ヘッケル)
<ボブ・ディラン日本公演初日3月31日Zepp DiverCityセットリスト>
1.Things Have Changed シングス・ハヴ・チェンジド
(『Wonder Boys"(OST)』2001/『DYLAN(2007)』他)
2.She Belongs to Me シー・ビロングズ・トゥ・ミー
(『ブリンギング・イット・オール・バック・ホーム/Bringing It All Back Home』1965)
3.Beyond Here Lies Nothin' ビヨンド・ヒア・ライズ・ナッシング
(『トゥゲザー・スルー・ライフ/Together Through Life』2009)
4.What Good Am I? ホワット・グッド・...アム・アイ?
(『オー・マーシー/Oh Mercy』1989)
5.Blind Willie McTell ブラインド・ウィリー・マクテル
(『ブートレッグ・シリーズ第1~3集/The Bootleg Series Volumes 1?3』)
6.Duquesne Whistle デューケイン・ホイッスル
(『テンペスト/Tempest』2012)
7.Pay in Blood ペイ・イン・ブラッド
(『テンペスト/Tempest』2012)
8.Tangled Up in Blue ブルーにこんがらがって
(『血の轍/Blood on the Tracks』1975)
9.Love Sick ラヴ・シック
(『タイム・アウト・オブ・マインド/Time Out of Mind』1997)
休憩(約15分)
10.High Water (For Charley Patton) ハイ・ウォーター(フォー・チャーリー・パットン)
(『ラヴ・アンド・セフト/Love and Theft』2001)
11.Simple Twist of Fate 運命のひとひねり
(『血の轍/Blood on the Tracks』1975)
12.Early Roman Kings アーリー・ローマン・キングズ
(『テンペスト/Tempest』2012)
13.Forgetful Heart フォゲットフル・ハート
(『トゥゲザー・スルー・ライフ/Together Through Life』2009)
14.Spirit on the Water スピリット・オン・ザ・ウォーター
(『モダン・タイムス/Modern Times』2006)
15.Scarlet Town スカーレット・タウン
(『テンペスト/Tempest』2012)
16.Soon after Midnight スーン・アフター・ミッドナイト
(『テンペスト/Tempest』2012)
17.Long and Wasted Years ロング・アンド・ウェイステッド・イヤーズ
(『テンペスト/Tempest』2012)
Encore:
18.All Along the Watchtower 見張塔からずっと
(『ジョン・ウェズリー・ハーディング/John Wesley Harding』1967年)
19.Blowin in the wind/風に吹かれて
(『フリーホイーリン・ボブ・ディラン/The Freewheelin' Bob Dylan』1963)
ボブ・ディラン (Bob Dylan) :Vocal, Harmonica,Piano
トニー・ガーニエ (Tony Garnier) :Bass
スチュ・キンボール (Stu Kimball) :Guitar
ドニー・ヘロン (Donnie Herron) :Pedal Steel,Banjo, Violin, Mandolin
ジョージ・リセリ (George Recile) :Drums
チャーリー・セクストン (Charlie Sexton) :Lead Guitar