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セイネンキレジェンド16話

2024-06-29 06:58:25 | 小説セイネンキレジェンド


リングの上に立つ直也は何かを祈るかのように深呼吸をしている。プロテスト前の康志は直也に言葉を掛けずに直也の姿を見つめるだけだ。リングサイドについたコーチと康志に直也は首を縦に振り笑顔を見せる。
「え?直也が笑った?どうして」
優子は直也は誰にも心を開く事がなかったのにと胸の内で思った。一時的なものだがルールのある戦いの中からから直也の成長が始まったのだ。
「カーン!」とゴングが鳴ると直也の眼つきは変わった。
眼(ガンツケ)を飛ばす眼ではなく冷静な覚めた目つきでリングの中央に向かう。ジム関係者によって勝利への策は作られる。あと直也がどう動いていくか試合をどう進めていくかである。さすがに2年目の選手がフットワークで直也の動きを崩そうとする。しかし直也は何かに取りつかれたように相手の動きに冷静についていく。相手の選手は自分のフットワークについてこられる事に直也に対しイライラしているようだった。直也のフットワークは相手の選手の動きに楽について行ける。直也は何かに気づいたようで距離を測り始めた。相手の選手は、よほどイライラしていたのだろう。先にジャブ(パンチ)を出して来たのは相手の方だった。
「いける、いけるぞ誘いにのった」と直也の中で何かが動き始めていた。直也のフットワークは相手をうわまり瞬時に相手のパンチに反応する。直也は軽く手を伸ばすだけで自分の体力を考えていたに違いない。
「カーン」と1ラウンド終了のゴングが鳴る。自分のコーナーの椅子に座り直也は笑っていた。
「直也!いけるか?」「当り前のこと聞かないで下さいよ」
「・・・」リングサイドからの声に直也が答えると誰も何も言う事が出来なかった。2ラウンド目のゴングが鳴ると直也は一気に走リ相手の胸ぐらの近くまで入った。身長差があるというのに不利な事を知りながら相手の懐に入り腰を低くしボディボディボディと直也のボディに相手は苦しかったのか顔色を変えガードが下がったところでジャブジャブの連打で相手の動きを止めようとした。相手がガードを上げたところで再びボディボディボディの3連打を直也は打った。相手の選手は膝をつきダウン立てずカウントが始まり直也は両手を挙げコーナーへ戻る。
「もう終わったよ、ふー」
直也は深い深呼吸をし2回戦目は2ラウンド目で約一分で終わった。この2回戦で観客の応援の声の中に優子が叫ぶよう直也への応援の声が出てきた。「大島!直也ー!大島!直也ー!」直也への声援が増えていった。
「・・・・・」 「やあ、ん」
直也はコーナーに座った後で思惑通りいかなかった相手と抱き合い握手を求めていた。この光景を見た観客やサポーターの応援団達は直也に向けて拍手をしていた。ボクシングで無名であった直也を認める事になったようだ。


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