江戸末期、大坂(大阪市)に蘭学塾「適塾」を開いた緒方洪庵(1810-63)の義弟で医師だった緒方研堂(郁(いく)蔵、1814-71)が往診に使ったという鏡付き螺鈿(らでん)(貝細工)の薬箱が福岡市中央区薬院2丁目の曾孫宅で見つかった。
往診用は一代限りで研堂没後は子孫の家にこれまで秘蔵されていたため今回の西日本新聞への公表で約140年ぶり、日の目をみたことになる。専門家は「現存の洪庵薬箱よりモダン。鏡・螺鈿付きは豪華。往診用としては全国的にも珍しい」と言っている。
見つけたのは曾孫緒方道彦さん(元九大名誉教授・故人)の妻・世喜子(せきこ)さん(78)。最近研究者から、薬箱存在の指摘を受けて道彦さんの書斎を“捜索”、「往診用薬箱」と書き込みがあった棚の奥の古い布包みから薬箱を発見した。
世喜子さんは「結婚後50年、生前の夫から一度も、薬箱の存在を聞いてなかったので驚きました」と語る。研堂の死後、本籍を福岡市に移した養子・道平‐孫・大象(政治家緒方竹虎実兄)‐曾孫・道彦の3代が「往診用の薬箱」として引き継いできたとみられる。
高さ17センチ、横20センチ、奥行き26センチ。薬入れの引き出しは、六つ。薬類は残っておらず、施錠できる左上引き出しは秘薬類入れに使ったとみられる。両脇には持ち運びに便利な丈夫な取っ手が付いている。
注目されるのは、観音開きの左右扉に付いた鏡と緒方家の蔦(つた)紋を図案化したとみられる螺鈿細工。往診用にしては装飾的過ぎるという印象があるためだが、世喜子さんは「墨絵の掛け軸を残した研堂さんの絵心が表れたのでは」と、ぜいたくな特注品で言い伝え通り往診用とみる。
一方、中冨記念くすり博物館(佐賀県鳥栖市)の山川秀機館長(66)は「鏡が付いた往診用薬箱は聞いたことがない」と関心を持ち、「現在展示中の有馬藩医の薬箱は実用的でシンプル。往診用になぜ“鏡”がついたのか、贅(ぜい)を尽くしたものとしかいいようがない」と話している。
江戸・明治の薬学資料を所蔵する「内藤記念くすり博物館」(岐阜県各務原市)の伊藤恭子学芸員は「鏡付きでしかも螺鈿入りは約60点の当館薬箱にもなく、全国的にも珍しい」と指摘している。
■大戸(おおど)茂弘九州大学薬学研究院教授の話
研堂の往診用薬箱は美術的価値があると同時に医(薬)学史上意義ある発見と思う。幕末の婚礼道具に家紋入りで美術品級の薬箱があり、そういう薬箱との比較研究の余地も残されている。
3/3 西日本新聞
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往診用は一代限りで研堂没後は子孫の家にこれまで秘蔵されていたため今回の西日本新聞への公表で約140年ぶり、日の目をみたことになる。専門家は「現存の洪庵薬箱よりモダン。鏡・螺鈿付きは豪華。往診用としては全国的にも珍しい」と言っている。
見つけたのは曾孫緒方道彦さん(元九大名誉教授・故人)の妻・世喜子(せきこ)さん(78)。最近研究者から、薬箱存在の指摘を受けて道彦さんの書斎を“捜索”、「往診用薬箱」と書き込みがあった棚の奥の古い布包みから薬箱を発見した。
世喜子さんは「結婚後50年、生前の夫から一度も、薬箱の存在を聞いてなかったので驚きました」と語る。研堂の死後、本籍を福岡市に移した養子・道平‐孫・大象(政治家緒方竹虎実兄)‐曾孫・道彦の3代が「往診用の薬箱」として引き継いできたとみられる。
高さ17センチ、横20センチ、奥行き26センチ。薬入れの引き出しは、六つ。薬類は残っておらず、施錠できる左上引き出しは秘薬類入れに使ったとみられる。両脇には持ち運びに便利な丈夫な取っ手が付いている。
注目されるのは、観音開きの左右扉に付いた鏡と緒方家の蔦(つた)紋を図案化したとみられる螺鈿細工。往診用にしては装飾的過ぎるという印象があるためだが、世喜子さんは「墨絵の掛け軸を残した研堂さんの絵心が表れたのでは」と、ぜいたくな特注品で言い伝え通り往診用とみる。
一方、中冨記念くすり博物館(佐賀県鳥栖市)の山川秀機館長(66)は「鏡が付いた往診用薬箱は聞いたことがない」と関心を持ち、「現在展示中の有馬藩医の薬箱は実用的でシンプル。往診用になぜ“鏡”がついたのか、贅(ぜい)を尽くしたものとしかいいようがない」と話している。
江戸・明治の薬学資料を所蔵する「内藤記念くすり博物館」(岐阜県各務原市)の伊藤恭子学芸員は「鏡付きでしかも螺鈿入りは約60点の当館薬箱にもなく、全国的にも珍しい」と指摘している。
■大戸(おおど)茂弘九州大学薬学研究院教授の話
研堂の往診用薬箱は美術的価値があると同時に医(薬)学史上意義ある発見と思う。幕末の婚礼道具に家紋入りで美術品級の薬箱があり、そういう薬箱との比較研究の余地も残されている。
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