この曲を初めて聴いたときは、さほどのインパクトはなかった。だが、ソニーのウォークマンに入れて聴いているうちに、この曲の良さがだんだん分かってきた。地味ではあるが、聴けば聴くほどスルメのように味が出てくる。いや、ひょっとしたら、アメリカの学校で音楽の教科書に載っているかも、という気さえしてきた。
何回も聴いているうちに、これは誰かの思想・生き方に似ているような気がしてきた---そうだ、『人間喜劇』や『我が名はアラム』で知られているウイリアム・サロイヤンの作品中の人物、特に、母親がわが子に語るセリフと共通する世界だ。自然と共存の暮らし・家族愛・人間愛・神への愛---これが、じんわりと滲み出てくる作品ではないか?Paul Overstreet という人は純朴なクリスチャンなのであろうか、そんな気がする。
以前に "No-no Song" を紹介したが、こちらは、それと対極にある歌と言ってもいい。
この曲の題名は一言では説明しがたい。手元にあるCD『RCA ホット・カントリー・アメリカ VOL.1.』では、⑨「ソーイン・ラブ/ポール・オーバーストリート」とあり、どこかに「ソー・イン・ラブ」ともあったので、So In Loveと思っていた。それにしても、"So"が意味不明だ。もしかしたら誤植で、"Sawing Love"かなと思ったりもした。それでは過激でシュールな命名で、歌詞の内容に合わない。
それが、活字の歌詞を見て誤解が分かった。Google の検索で "Paul Overstreet-Sowin' Love"と入力すれば直ぐ Lyrics などが出てくる。2段目の You Tubeのでは、動画入りで曲が丸ごと無料で聴ける。p.2 2段目の "metrolyrics"のも ”LISTEN NOW"をクリックすれば,"Ringtones---Not Available In Your Country"と有りながら、明確に最後までバッチリ聴ける。---聴けば聴くほど良い曲だということを確認できるはず。それにしても、この曲のサビは、まさに"sowin' love"のところ。繰り返し、聴く人の耳に響いてきて、いつまでも残る。
エプソン(EP-901A)プリンターを使った[自作のCD]
《SOWIN' LOVE》
I used to love to walk behind my Daddy --------(1)
As he plowed our garden every spring -----(2)
My little bare feet in the dirt would make me happy ---(3)
As we talked about what harvest time would bring ---(4)
He'd say, "Son, this whole world is like a garden ---(5)
And what you sow you're surely gonna reap ---(6)
Where bitter seeds are planted hearts will harden ---(7)
But a caring hand will make the harvest sweet" ---(8)
And he was sowin' love for the family ---(9)
He was sowin' love, he took a little extra time ---(10)
Looking forward to a bountiful harvest ---(11)
Like a good father does he was sowin' love ---(12)
[ guitar ]
How I used to love to sit and watch my Mamma ---(13)
Working with her needle and her thread ---(14)
So patiently she'd listen to our problems ---(15)
And we knew she heard every word we said ---(16)
She'd say, "Children, this old world is full of scratches --(17)
And in your life you're bound to have a few ---(18)
I guess that's why the good Lord gave us patches ---(19)
So we could start each day out feeling new "---(20)
And she was sowin' love for the family ---(21)
She was sowin' love, she took a little extra time ---(22)
Looking forward to a bountiful harvest --(23)
Like a good mamma does she was sowin' love ---(24)
Yeah they were sowin' love for their family ---(25)
They were sowin' love, they took a little extra time ---(26)
Looking forward to a bountiful harvest ---(27)
They could take good care of us, they were sowin' love ---(28)
They did it all for us, they were sowin' love ---(29)
【歌詞の解説】---仮想対象→高校生
※題名の意味するところは、もう分かったであろう。「慈愛の心を育てる種を蒔いていこう」と訴えてくるではないか。題名としては「愛の種を蒔くとき」としておく。
以下、各行に番号を付けて解説しよう。だが、この歌詞はあまり、くどくどと説明しないほうが良いのかもしれない。
(1) I used to love 「子供の頃は~が大好きだった」 used to ~「昔は~だった」
(2) As=When。 (4)のAs も同様。
(3) wouldはused toに近い用法。「小さな素足で土を踏みしめると幸せな気持ちにな
ったものだ」
(4) what harvest ~「実りの秋にもたらされるもの」
(5) He'd =He would {=(3)の用法}。is like a garden「一つの庭のようなものだ」
(6) what you sowはreapの目的語。gonna=going to。are going to =will
(7) Where=In or At the place in which。先行詞を含む関係副詞。
bitter seeds「悪い種」。will harden「無情になるものだ」。will は習性を表す。
次の行のwillも同様。
(8) 「それでも親身になって世話をすれば、甘美な実りが待っている」
(9) sowin' =sowing
(10)-(11) 「パパが特に少し時間を割いたのは、豊かな収穫を夢見ることだった。」
look forward to ~「~を期待する、~を夢見る」。Looking の前に inを補って
みるとよい。
(12) 「善良な父親がするように」。Like=As
(13) How ~「どんなに~だったことか」。watch my mamma ~ing 「ママが~してい
るのを見ているのが」
(14)「針仕事をしているのを」
(15) she'd =she would{→(5)}。problems「悩み事など」
(16) knewの次に接続詞のthatを、wordの次に関係代名詞のthatを補ってみる。
(17) 「これまでの世の中は傷だらけです」
(18) 「これからの人生で、きっと、あなたたちも少しは傷を負うことになるでしょう」
are bound to ~「きっと~する」
(19) that's why ~「そういう訳で~」。guessの次に接続詞のthatを補う。
「善良なる神が私たちに絆創膏を与えたもうたのです」
(17)から続く、この辺りの母親の言葉は、まさに William Saroyanの世界だ。
(20) start ~out「~を始める」。feeling new「新たな気持ちになって」
(25) Yeah「そうです、しかり」。they=my Daddy and Mamma
(28) took good care of us 「私たちを大事に育てた」
(29) 「彼らはそれを全て私たちのためにやった」。it =they were sowin' love
【リズムや音声上の工夫】
多少のブレはあるが、先ず大きな流れとして、「弱弱強」のリズムが骨格となっている。(1)で言えば I used to love /to walk behind /my Daddy (赤紫が強)
という具合に、最後まで「弱弱強」の組み立てになっている。
また、各行の末尾の語の音に注目。詩のほうで言う「脚韻」である。
(1) のDadd-y と(3) のhapp-y、(2)のsp-ring と(4) のb-ring、---gar-den
とhar-den、r-eapとsw-eet{完璧ではないが}
この脚韻が(13)~(20)の三番にも受け継がれている。
二番と四・五番は、ほとんど同じと見てよく、この曲のテーマを音声的に強調している。それが、サビの "sowin' love"であり、それに続くのが "took a little extra time"
の響きである。
これら、「弱弱強」の全体的なリズムに乗せて、脚韻とサビの音声が、聴く人の耳にどのようにアピールするかが見事に計算されているのだ。
脚韻の効果がイマイチ分からない人のために、三番で言えば---(17)でscratches の響きが耳に残っているうちに、(19)のpatches が(除夜の鐘の、前に突いた音の残音の如く)波のように耳に被さってくる効果である。
【この曲のダンス】
SNT - OLM , I'm Sowin' Love Line Dance - YouTube
I'm Sowin' Love Line Dance. (24-1) by Paul Overstreet