“精神の自由”の②
詩人「この新聞連載『太平洋戦争史』(*1)は、長文なわけだが、それだけではない、読み終えた後、非常な疲労感を覚えた。眩暈(めまい)がするほどだ。この感情って何だろう。そして、『歴史』って何だろう。ヒストリー(history)とネーション(nation)の関係は? と次から次に疑問がわいてきたんだ。
文明史好き「我々の民族意識が関係しているのではないだろうか。ラグビーW杯、深夜にも関わらず興奮した。サッカーでも野球でも国際試合になると、にわかファンになって、年甲斐もなく興奮する。あの独特の感情があるからなんだ」
呼びかけ人「僕は、島根の出身だけど。竹島に韓国大統領が上陸したとき、土足で我が家に上がられたような、嫌な感じがした。竹島は隠岐の島の北にあって昔、隠岐の漁師がアシカ漁をしていた。その漁の写真を見たことがある。隠岐の島は古事記にも出てくる。韓国側にも鬱陵島に近いからそれなりの歴史があるのだろうが・・・。尖閣諸島もそれぞれ歴史がある。北方領土もそうだが、領土問題のさいに受ける独特な感情は、背後にそれぞれの歴史があってネーション(nation)と関係している。そしてナショナリズム(nationalism)を刺激する。歴史って衝突の種になる意外と厄介なものなのだ」
文明史好き「若いころ買って読んでなかったヘーゲルの著作を開いてみた。そこでは歴史のとらえ方には三つあり、先ず①事実をそのまま書いたもの、次に②反省を加えたもの。そして③哲学的な歴史―――と言う。新聞連載『太平洋戦争史』は①のつもりで書かれたのだろうが、言論の自由がなかったからこんなことになったという「言論史」も含んでいるし、どんな理由があるにしろ「非人道的な残虐行為は許されない」という考えを加えている点では反省を促す②の要素もある。
山好き「先の大戦を知っている我々は、当時子供だったが、この連載記事には、あれやこれやと、考えさせられた。どうしてもひっかかったのがアメリカ人の手による歴史記述であるということ。チャールズ・ダーウィン*2の『種の起源』が出て、アメリカの思想界が進化論に大きな影響をうけ、「適者生存」という言葉が政治学や社会学に登場するようになった。ちょうど東京湾に黒船が来るようになった時期だが、発展したプラグマティズム思潮があらゆるところに影響を与えて行く。産官学が一体となって進めた大戦に勝利を収め、大変な自信を得たアメリカが、その思想のもとで書いたと言えないか。
・・・唐突で恐縮だが、自然学の今西錦司さん(1902~1992)が好んで使っている『アイデンティフィケーション(identification)』という言葉を思い出したんや」
*(1)新聞連載『太平洋戦争史』・・・1945年12月にGHQの提供(英文)、共同通信の高山健弌氏(後に東大教授)が翻訳し、6日から日本のほとんどの新聞に10日間にわたって掲載された。「奉天事件よりミズリー降伏協定調印まで」とのサブタイトルが付き、全体で約5万字。
(つづく)
竹島の日ですがここ隠岐の島町は静かなものです。
実は今日も竹島へ漁にでる湾のある久見(くみ)というところに美味しい水をくみにいってきました。
これからも宜しくお願いします。
世界人類が平和でありますように