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コロナで孤立死急増、4人に1人が75歳超社会突入という地獄

2021-08-03 15:30:00 | 日記
下記の記事は日経ビジネスオンラインからの借用(コピー)です   記事はテキストに変換していますから画像は出ません

いづれか貴方もその中の一人になります。笑い事ではありません。
ここ数年、全国の自治体は「健康寿命を延ばそう!」「認知症予防に取り組もう!」を合言葉に、高齢者対象の健康教室やコミュニティーサークル活動などの「介護予防」に積極的に取り組んできた。が、コロナ感染拡大防止策でそういった活動が制限され、デイサービスなどの施設利用を控える人も増えた。
 自宅にこもりがちになれば、足腰は弱る。脳の機能や心身の“体力”も弱る。その結果として、介護が必要になったり、介護度が悪化したりしてしまったのだろう。
身体や認知機能の低下も怖い
 件の調査結果を具体的にみると、
    * 2020年4~5月に前年実績を大きく下回っていた区分変更申請の件数は宣言解除後の6月、全国で前年同月比17.9%増と急激に増加。
    * 8月は同8.3%増と鈍化したが、9月と10月は連続で19年実績を2割超上回った(21.7%増、23.3%増)。
    * 10月には要支援から要介護へと変わる申請が前年同月比30%超増えた自治体が10市に上り、「自然増ではあり得ない」という(担当者談)。
 ……ある程度は予想していたことだが、実際にこうしてグラフで見ると、正月早々ため息しか出ない。医療現場のことを考えれば感染リスクをできるだけ、徹底的に減らすことは必要だし、重症化リスクの高い高齢者を守ることも大切ではある。
 しかし、高齢者にとってコロナも怖いけど、身体機能や認知機能の低下も怖い。
 個人的な話になるが、私の母もまるで仕事のように毎日通っていた近所の都運営の交流館(体操教室やコーラス教室などに65歳以上が無料で参加できる施設)が20年の2月末から7月までクローズになり、一時期かなり認知機能が落ちた。友人とも会えず、楽しみのおしゃべりもできない。最近はやっと元に戻りつつあるけど、また緊急事態宣言が出たら、と思うとかなり不安だ。
 誤解を恐れずに正直な気持ちを言うと、「コロナ感染のリスク」より「認知機能低下のリスク」の方が深刻だと思う。
 とはいえ、たとえ独り暮らしをしていても母のように家族が近くにいれば、まだ、なんとかなる。
 一番心配なのは、家族のいない独居老人だ。
孤立した高齢者、地方のほうが多い
 もし、このまま介護が必要な高齢者が尋常じゃないペースで増え続ければ、孤独死したり、自ら命を絶つ高齢者が増えたりしてしまうリスクもかなり高いと個人的には考えている。
 実際、宮崎県で誰にもみとられずに亡くなる「孤立死」のリスクが高齢者を中心に高まっていると報じられた(2020年12月22日付宮崎日日新聞『県内「孤立死」リスク増大 コロナ禍家族や地域と交流減』)。65歳以上の独居高齢者の検視件数が、過去最多を更新する見通しであることが分かったという。
 地方は「つながり」があると考えがちだが、むしろ東京より孤立している高齢者は多く、高齢者の自殺の多さも問題になっている。冒頭の時事通信の調査では、(介護保険申請の)「新規(申請)の方が増加が緩やかなのは、支援を求めず悪化を我慢する余力があるためとも考えられる」との指摘するが、「おばあちゃん(おじいちゃん)、介護申請しましょうよ」と声をかけたり、連れて行ったりする“つながり”が欠如していると捉えることも可能だ。
 問題はそれだけにとどまらない。
 ご承知の通り、ホームなどに入所している高齢者も感染リスクを避けるために「閉じ込められる」状況が続いている。高齢者施設に入居している94歳の“友人”に状況を聞いたところ、以下のようなメールをくださった。
 「家族の面会も(2020年)2月から禁止、入所者の外出も通院以外は禁止なので、認知症が進み、廊下を当てどもなくさまよっている人が多くなっています。認知症の入所者は説明をされても理解ができないので、気の毒です。認知症じゃなくても、うつになる人も増えてきました。高齢者同士のおしゃべりも制限されているのです。
 私は毎日、パソコンとにらめっこ!なので満ち足りた日々ですが、足腰はめっきり老化しました。コロナ前は自力で歩けたのに、カートなしでは食堂にも行けなくなりました。
 毎朝、ホームの廊下を歩いているのですが……。悲しい限りです。
 でも、もっと大変なのはヘルパーのみなさんです。
 私の施設は介護度4、5の入所者が多いので、コロナ以前からヘルパーの方たちは限界に達していました。
やがて「4人に1人が75歳以上」の時代に
 そこにきて、全く終息する様子が見えないコロナです。着替え、おむつ替え、食事の介助、検温など、見ているだけで、彼女たちの活動量の多さに胸が痛んでいます。
 私の住んでいる地域ではコロナ感染者が多く、介護施設でもクラスターが発生しているので、ピリピリしています。それが2月からずっと続いているのです。
 私はホームでいろいろな高齢者(自分を含めて)を観察していますが、高齢になると、物忘れから始まって、思い込み、勘違い、そして認知症へと進んでいきます。認知症になると、暴言、暴力を振るうようになります。あなたが書いていたコラムで若い女性がおばあちゃんを殺してしまったという不幸な事件がありましたが(参考記事)、あのような暴言は普通なのです。
 ホームで働いているヘルパーたちは、手首に歯型が残るくらいかみつかれたり、殴られたり、暴言を吐かれたりしています。もうこれはどうにもなりません。
 ヘルパーは激務のうえに、収入も乏しいので、本当に申し訳なく感じています」――。
 介護問題については、コロナ感染拡大が深刻化した当初から(コロナ以前も)「介護崩壊が始まってしまった」と、とりわけ介護する人の危機をどうにか食い止めるための解決策や提言を発信し続けてきた。だが、コロナで顕在化したのは、「介護される人」の置かれた環境の脆弱さと、その視点の欠如だ。
 このままでは、もうもたない。介護という概念を根本的に変えないと、人もカネももたないと思う。
 4年前にこちらのコラムで、
 「3年後の2020年。大人(20歳以上)の『10人に8人』が40代以上になる。50代以上に絞っても、『10人に6人』だ。
 要するに東京オリンピック開催時(予定どおり開かれれば……)、どこの職場も見渡す限りオッさんとオバさんだらけになるってこと」
 と書いた。
 そして、今。4年後の2025年には、総人口の4人に1人が75歳以上になる時代の「とば口」に突入する。やがて来る「4人に1人が75歳以上」という現実は、どうしたって避けられない。
 2019年10月1日時点で、「65歳以上人口」は3589万人で、総人口に占める割合(高齢化率)は28.4%。内訳は、「65~74歳人口」は1740万人、総人口に占める割合は13.8%、「75歳以上人口」は1849万人、総人口に占める割合は14.7%。要するに、すでに75歳以上が65~74歳人口を上回っている。
 さらに、4年後の25年からは「団塊の世代」が75歳以上の仲間入りをする。75歳以上人口は1849万人から約2200万人に膨れ上がるのだ。
 「こりゃあ、大変だ!予想では介護人材が34万人も足りないらしいぞ!処遇改善などで年間6万人の確保を目指すぞ!とにかく増やさなきゃ!」と、厚生労働省はしてきた。
85歳以上人口、2035年まで増加
 しかし、「34万人」という数字はコロナ前の試算だ。
 「介護の最後のとりで」であり、唯一無二の存在である訪問介護ヘルパーさんたちが、このコロナ禍で「感染できない、感染させたくない」という不安からか、離職するケースが相次ぎ、有効求人倍率が15倍を突破(20年9月時点)。すべての職種の平均と比べるとおよそ16倍、介護職全体と比較してもおよそ4倍の高さにまでなってしまった。
 さらに、85歳以上の人口は、2015年から2025年までの10年間、75歳以上人口を上回る勢いで増加していて、2035年ごろまで一貫して増加する見込みだ(資料)。
 ついでに書いておくと、44年後の2065年には、約2.6人に1人が65歳以上、約3.9人に1人が75歳以上となる。今、50歳の人ならギリギリ、45歳ならかなりの確率で生きている可能性が高い。「一億総老老介護時代」の到来である。
 ……私は多分死んでると思うけど、体だけは丈夫なので生きてたりして。
 未曽有の超高齢社会に、日本はどう対応するつもりなのか?
 介護度の高い高齢者が増えれば介護費は膨大になる。果たして、我が国は「高齢社会」に見合った税金の使い方をしているのか?
 コロナ禍で「働き方」は大きく変わったけど、介護のあり方も大きく変える必要があるのではないか?
 コロナはさまざまな社会のゆがみを顕在化させたが、いわゆる「2025年問題」が迫る中で高齢者の介護度が悪化しているリアルが意味するのは、「介護の考え方を根本から変えよ!」というメッセージではないのか。
 日本では、施設に入るか? 在宅にするか? といった「高齢者=介護される人」の視点で語られるが、欧州では高齢者を「介護」するのではなく、高齢者に社会へ「参加」してもらう視点の取り組みが進められている。
 「福祉国家」から「参加型社会」へのパラダイムシフトだ。
 例えば、デンマークでは「リエイブルメント(Re-ablement、再び自分でできるようにする)」を根幹とする高齢者対策を徹底している。すべての地方自治体に高齢者へのリハビリ実施を義務付け(重度で複雑な機能低下のある高齢者も含む)、80歳以上の人たち全員を対象に「何も起きていなくても訪問する」という予防的な自宅訪問も実施している。
65歳以上が生産年齢に含まれない
 こういった取り組みを国全体で実施することで、「自分でできることは自分でする」高齢者を増やし、「自分だけではできないこと」は「地域の人」がサポートする社会を実現させた。「介護が必要と思われた高齢者」全体の48%が介護に先立って実施するリハビリにより改善し、ケアサービスが不要となった自治体もあると報告されている。
 また、オランダでは政府による介護保険の自治体運営への移行を進め、各自治体が「ソーシャルバイクチーム」という、専門家と全体を見渡せるチームリーダーが動かすチームをつくった。
 ソーシャルバイクチームは、高齢者の低下した認知機能や身体機能を改善するための活発な各種支援を実施している。その際、本人がリハビリをがんばればできそうなこと、家族にできそうなこと、近所・地域ができそうなこと、さらにボランティア組織に関わってほしいことなどを振り分ける。それでも難しい場合には、同じような人たちを集めてグループ活動として解決できないかを模索し、実施する。それでも無理な場合にのみ、プロのケアを用意する。
 つまり、参加型社会では「公助」が「自助・共助」の力を最大限に引き出すサポートをし、それでも足りない場合に「公助」が支えるという仕組みが徹底しているのだ。
 「人=高齢者」が持つ力を最大限に引き出すことは、高齢者の尊厳を守ることでもある。誰だって自分の足で歩きたいし、自分でできることはやりたいし、自分で決めたいし、自由でいたい。そのために税金を使い、人が動く社会をつくり出している。
 日本にもケアマネジャーはいるし、包括支援センター、地域包括ケアシステム、地域共生社会だのと“青写真”を示してきた。しかしながら、厚労省が示すイメージは「ん? これってどこの国のこと?」と首をかしげたくなるものだったり、行政が縦割りだったり、医療と介護の壁があったり、予算がなかったりでうまく回っていない。
 国のイメージと実態が乖離(かいり)していて、結局「これでひとつよろしく!」になってしまっている。
 そもそも……、「超高齢社会、人生100年時代、70歳まで働けるようにしろ!」と言ってるのに、65歳以上は生産年齢人口に含まれないっていうのも、おかしくないですか? 木ばかり見て「森=4人に1人が75歳以上」の社会全体を見ていないのだ。
河合 薫
健康社会学者(Ph.D.)


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