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「もう手の施しようがありません」と余命宣告を受けたら、どうしたらいいか?

2021-10-23 13:30:00 | 日記

下記の記事はヨミドクターオンラインからの借用(コピー)です。

 末期がんの患者さんのご家族から、「余命宣告」について相談されることがあります。たとえば、こんなケースです。
 「先生、主人が担当医から、『もう手の施しようがありません、余命半年』と言われました。本当に半年しか持たないのでしょうか?」
 私の答えはこうです。
 「いや、半年ということはないと思います。まだ時間はあります。ご主人のしたいことをさせてあげてください」
 どれぐらい生きることができるかを月単位で正確に予測することはできません。ただ、患者さんから相談を受けると、「短めに話をする医者もいる」という印象を持っています。短めに言うことで、患者さんとご家族に、残り少ないということを自覚させたいからでしょう。それより長く生きたとしても、本人も家族もよかったと思うはずです。
余命宣告をする医者、しない医者
 とはいえ、余命宣告に関して否定的な医者もいます。その人がどうなるか実際にはわからないというのが、理由のひとつ。そして余命を言ってしまうと、患者さんのがんばろうという気持ち、生きる希望を摘んでしまうことを恐れるからです。暗示効果で実際にその通りになってしまうことがあります。医者の言葉は患者さんに大きな影響を与えます。見通しを知りたいと思う家族も多いので、見立てを伝えても、患者本人には言わないことも少なくありません。
 「あとどのくらい持ちますか」と聞いてくる患者さんもいます。近年、はっきりと言葉にする傾向が強くなっていると思います。
宣告された余命はあくまで「中央値」
 余命宣告は、医者の勘や経験だけで言っているわけではありません。ある程度の基準はあります。「余命1年」と言った場合、それは、生存期間の中央値が1年ということです。中央値というのは、同じ程度に進行した胃がんなら胃がんの患者の集団において、「50%の患者が亡くなるまで」の期間のことです。つまり、同じ胃がん患者が100人いた場合、50人目が亡くなった時点が胃がんの余命と考えられています。 
 その生存中央値が仮に1年だとしても、3年、5年と生きる人がいる一方で、それよりも早く亡くなる患者もいるのが現実です。そう考えると、中央値をとって「余命1年」と伝えるのも、あまりあてにならない話です。ただし、末期がんで入院中の患者さんで、主治医から「あと1、2週間ぐらいでしょう」と言われた場合は、おそらくその通りになります。病状から、かなり正確に判断することができるからです。
ズバリと厳しいことを言う医者も
 これ以上の治療に効果が期待できない、となった時、医者としても伝え方には苦労をします。難治性のがんで手の施しようがない時、ベテランの医者なら「完治は難しいですね」というような言い方をし、患者さん本人ではなく、まずご家族にそれとなく告げると思います。そうして、「先生、なんとかお願いします」と言われたら「最善を尽くします」と答えるでしょう。
 しかし、経験が浅い医者などに「完治は無理です。手術しても無駄です。持って半年です」などとあっさりと言われてショックを受けたという話も耳にします。「当て逃げのようながん告知」と言った人もいますが、まさにそんな感じでしょう。私たち医者も、ちょっとした言葉の配慮で与える印象が変わってくることを十分に理解している必要があります。
平均余命を考えに入れて医療を受ける
 国は毎年、簡易生命表を発表しています。令和元年では平均寿命は男性81.41歳、女性87.45歳となっています。正確に言うと、この数字は調査を元に統計的に出したゼロ歳時点の平均余命です。年齢別の平均余命も発表されていて、60歳なら男性は23.97年、女性29.17年と、年齢にプラスすると、いわゆる平均寿命よりもやや長くなっています。平均余命を知っても切迫感はありませんが、70歳(平均余命男性15.96年、女性20.21年)、75歳(12.41年、15.97年)と年を重ねるに従い、漫然と生きるのではなく、きちんと人生と向き合っていこうという思いが強くなります。
 日本では、手厚い健康保険制度などで、医療費負担の上限が低めに抑えられているため、「できるだけの治療を尽くしたい」と考えがちです。そのため回復の可能性は低く、苦痛を長引かせるだけのような治療すら行われてきました。
 一方、アメリカなどでは余命を示して、治療を選択するかどうか患者に考えてもらうこともあるようです。
 60歳の男性なら、がんを治療しないことで、84歳ぐらいまで生きられない、あるいはがんの症状や合併症が出現する可能性はどれぐらいあるか。こういう視点で治療を受けるかどうか決めるということです。これが85歳だと平均余命は男性6.46年、女性8.51年です。考慮に入れる期間はかなり短くなります。
時間を頭に入れて、有意義に過ごしたい
 末期がんの余命告知の話から少し離れましたが、生存期間の中央値や平均余命は、一般論なので個人にひきつければ当てにならないところもあります。しかし、どんな医療を受けるのか、あるいはやり残したことを処理する時間の目安などひとつの参考になります。
 最後は多くの人が、回復は望めず、体や心を楽にしておくのが最良の選択という状態が訪れます。それまでの時間を、こうした数字も参考にしながら、自分なりに有意義に使う方法を考えたいものです。(富家孝 医師)
富家 孝(ふけ・たかし)
医師、ジャーナリスト。医師の紹介などを手がける「ラ・クイリマ」代表取締役。1947年、大阪府生まれ。東京慈恵会医大卒。新日本プロレス・リングドクター、医療コンサルタントを務める



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