下記の記事は日経グッディからの借用(コピー)です
Q.1
ワクチンを接種したら体内に新型コロナウイルスが入り、感染してしまいませんか?
A. いいえ、新型コロナワクチンを接種しても新型コロナウイルス感染症を起こすことはありません。新型コロナワクチンは、新型コロナウイルスそのものではなく、ウイルスの一部をかたどった「模型」を体内で作らせる医薬品の一種です。ですから感染症を引き起こす心配はありません。
抗ウイルスワクチンの種類
新型コロナワクチンはウイルスベクターワクチンとmRNAワクチン(詳しくはQ2、Q3を参照)
Q.2
日本で接種が先行する見込みの新型コロナワクチン3種類について、それぞれの特徴を教えてください。
A. 日本で先行して接種される新型コロナワクチンは、すでに承認された米ファイザーのものに加え、近々承認が予想される英アストラゼネカと米モデルナのものを加えた3社のワクチンになる見込みです(2021年3月現在)。ファイザーおよびモデルナのワクチンはmRNAワクチンと呼ばれるもので、アストラゼネカのワクチンはウイルスベクターワクチンと呼ばれるものです。異なる仕組みのワクチンですが、どちらも新型コロナウイルスの一部分であるトゲの部分(スパイクたんぱく質)の情報をヒトの体に教える仕組みになっています。
日本で先行する見込みの3社のワクチンの特徴(2021年3月現在)
ファイザーおよびモデルナのワクチンは、スパイクたんぱく質の設計図をmRNA(メッセンジャーRNA)と呼ばれる物質に載せて、脂質に包んで体の中に届け、ヒトの体内で新型コロナウイルスのたんぱく質を作らせて免疫を誘導します。一方、アストラゼネカのウイルスベクターワクチンは、人間には無害なチンパンジー由来のウイルス(アデノウイルス)にスパイクたんぱく質の設計図を運ばせる仕組みです。接種するとmRNAワクチンと同じように、ヒトの体内で新型コロナウイルスのたんぱく質が作られ免疫が誘導されます。
(イラスト:串子)
ワクチンの実用化に先立って、3社はそれぞれ臨床試験を行い、ワクチンの有効性(発症予防効果)と安全性(副反応の種類や頻度)を検証しました。試験でわかった有効性は、ファイザーのワクチンは95%、モデルナは94.5%、アストラゼネカは70%でした。一見ファイザーのワクチンがもっとも優れているように見えますが、それぞれの臨床試験の対象者や条件は異なっているため、一概にそうとはいい切れません。ただ、身近なワクチンと比較すると、インフルエンザのワクチンの発症予防率は約50%とされていることから、いずれのワクチンも十分効果が高いことがわかります。
接種対象者はファイザーのワクチンは16歳以上、モデルナ、アストラゼネカのワクチンは18歳以上となっています。接種回数はいずれのワクチンも1人に対して2回ですが、ファイザーは21日間隔、モデルナとアストラゼネカは28日間隔で接種を行います。妊婦や子どもは臨床試験の対象となっていなかったことや、接種方法が筋肉注射であることは、3社のワクチンに共通しています。
ワクチンの効果はどのくらい続く? 日本製のワクチンは?
Q.3
従来のワクチンと新型コロナワクチンの違いはなんですか?
A. 従来のワクチンは、不活化ワクチンや生ワクチンと呼ばれるものが中心でした。これらのワクチンは、鶏卵などに病原ウイルスそのものを感染させて増やした後に感染力を持たないように不活化したものや、弱毒化して病原性を持たなくしたウイルスを培養して増やしたものから作っていました。このような方法でワクチンを作る場合、ウイルスの大量培養や安全な弱毒化・不活化の条件探索に膨大な時間がかかります。それが、「新型コロナワクチンの開発には早くても5年以上かかるのではないか」と流行当初に指摘されていた理由です。
従来のワクチンと新型コロナワクチンの違い
一方、新型コロナワクチンとして実用化されたmRNAワクチンやウイルスベクターワクチンの製造では、病原ウイルスそのものは使いません。病原ウイルスの遺伝子情報の一部(RNAやDNA)を用いて、ヒトの体内で病原ウイルスのたんぱく質を作らせて、免疫を誘導する仕組みです。したがって病原ウイルスの大量培養や弱毒化・不活化は不要です。このような特徴の恩恵を受けて、有効性と安全性の確保において大切な臨床試験は省略することなく、開発スタートから1年足らずで新型コロナワクチンを実用化することができたのです。
なお、mRNAワクチンやウイルスベクターワクチンは、急に出現してくる感染症に対応して素早くワクチンを開発することができ、病原ウイルスの変異への対応力も高い次世代型ワクチンとして期待され、新型コロナウイルス感染症が広がる前から開発が進められていたものです。
Q.4
急いで作った新型コロナワクチンは、危険ではないですか?
A. 迅速に新型コロナワクチンを作ることができた理由はいくつかあります。まず、技術開発自体は10年も20年も前から進んでいたものであり、いつでも将来の感染症の危機に備えてワクチンを作る準備が整っていました。その集大成が、このパンデミックという危機に直面して発揮されたと考えてよいでしょう。
また、安全性や有効性を確かめる臨床試験も、他のあらゆる新薬と同様に第1相試験から第3相試験までの安全性、有効性の厳格な審査を経ています。安全性を担保しつつ効率化を行いましたが、決して各段階のいずれかを省略して今に至ったわけではありません。
Q.5
日本の製薬会社が開発した新型コロナワクチンを打ちたいのですが。
A. 日本の製薬会社も新型コロナワクチンの開発に乗り出していますが、実用化はもう少し先になりそうです。開発を進めている会社(ワクチンの種類)は、塩野義製薬など(組み換えたんぱく質ワクチン)、第一三共など(mRNAワクチン)、アンジェスなど(DNAワクチン)、KMバイオロジクスなど(不活化ワクチン)、IDファーマなど(ウイルスベクターワクチン)となっています。もっとも先行しているのはアンジェスとみられ、第2/3相臨床試験のワクチン接種が3月初旬に完了したところです。数カ月の経過観察を経て安全性と免疫原性の評価を行う予定です。塩野義製薬は2020年12月に第1/2相臨床試験を開始しました。第一三共は2021年3月に第1相臨床試験を開始予定です。
新型コロナワクチンの開発に取り組む日本の製薬会社(2021年3月現在)
厚生労働省の資料を基に情報を追加して作成
Q.6
新型コロナワクチンの効果はどのくらい続きますか?
A. 日本の予防接種で使われている米ファイザーのワクチンについては、2回目の接種から6カ月間は有効性が維持されることが示唆されています。今後承認が見込まれる英アストラゼネカ、米モデルナのワクチンについても、2回接種後に最低でも3カ月間は十分に抗体の量が維持されることがわかっており、さらに長い期間の効果持続も期待されています(2021年3月現在)。どれほど効果が持続するかについての調査は現在進行形で行われており、今後さらに明らかになっていくでしょう。
ワクチンを接種したらマスク不要? 変異株にも効果ある?
Q.7
新型コロナワクチンを接種したらマスクをしなくてもよいですか?
A. 新型コロナワクチンは接種してから免疫ができ始めるまでに約2週間かかり、その間は効果がありません。また、免疫が体の中に作られても、感染を100%防いでくれるわけではありません。
したがって新型コロナウイルス感染症の流行が続いている間は引き続き、感染しないようマスクや手洗い、ソーシャルディスタンスの確保を継続する必要があります。今後、多くの人へのワクチン接種が進み、感染流行が収まってくれば、元の生活スタイルに少しずつ戻していくことが可能になると考えられます。
Q.8
新型コロナワクチンは新型コロナウイルスの変異株にも効果がありますか?
A. 一般論として、ウイルスは絶えず変異を起こしていくもので、小さな変異でワクチンの効果がなくなるというわけではありません。また、米ファイザーのワクチンでは、新型コロナウイルスの変異株にも作用する抗体が作られた、といった実験結果も発表されています。ただし、一部の新型コロナウイルスの変異株についてはワクチンの効き目が低下することを示唆する報告もあり、データの蓄積やワクチンの改良が進められています。
承認申請がなされた新型コロナワクチンの審査にあたっては、変異株に関する情報も含め、引き続き様々な情報を収集しつつ、適切に有効性、安全性などを確認していくことになります。
Q.9
ワクチンの副反応はどんな仕組みで起こるのですか?
A. 新型コロナワクチン接種の目的は、新型コロナウイルスの目印(たんぱく質の一部)をヒトの免疫に覚えさせることです。そのために若干の免疫反応を人工的に起こします。ワクチンは、免疫反応をちょうどよい塩梅(あんばい)で起こすことで、予防効果はしっかり出るが、副反応は少なくなるように設計されています。しかし、免疫反応には個人差があり、まれに反応が強く出すぎてしまう人がいます。そのため熱が出たり、だるさを感じたりすることがあるのです。
ワクチン接種で可能性のある副反応
他の副反応としてはアレルギー反応があります。例えば米ファイザーや米モデルナのmRNAワクチンに含まれる「ポリエチレングリコール」という成分は、化粧品や歯磨き粉などに含まれていて、日常的に触れる機会が多い物質です。そのためワクチン接種前に、すでにポリエチレングリコールに対してアレルギー反応を起こすようになっている人もいます(スギ花粉にさらされているうちに、ある時、体がアレルギー反応を起こすようになりスギ花粉症を発症するのと同様のプロセスです)。
こういった人はmRNAワクチンを接種した際に、アレルギー反応を起こしてしまうことがあります。また、英アストラゼネカなどのウイルスベクターワクチンでも、ワクチンに使用されているアデノウイルスの殻に対してアレルギー反応が起きる場合があることが知られています。
Q.10
新型コロナワクチンには、具体的にどんな副反応がありますか?
A. 新型コロナワクチンの局所反応として、注射部位の痛みや腫れ、発赤などが見られる場合があります。その他の全身性の反応として、だるさ・倦怠感、頭痛、筋肉痛、関節痛、発熱などが報告されており、基本的には2回目の方が1回目よりも頻度が高いことが報告されています。また、高齢者は若年者に比べてこうした副反応が少ないことがわかっています。いずれの場合においても、ほとんどが軽度から中等度の症状で、数日以内に改善し回復しています。痛みや発熱の症状が出た場合は、解熱鎮痛薬を使用して症状を和らげることも可能です。
ファイザーのワクチンの副反応の発生割合
出典:厚生労働省「コミナティ(ファイザー社)を接種した方へ 新型コロナワクチンを受けた後の注意点」
なお、頻度は極めてまれ(20万人に1人程度)ですが重篤なアレルギー反応(アナフィラキシー)も報告されています。このアレルギー反応は、他のどのような薬やワクチンにも起こりうるものであり、新型コロナワクチンに特有の副反応ではありません。
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