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「格安スマホ業界はこれで終わり」大手3社を追いかける楽天プランの破壊力

2021-02-07 15:30:00 | 日記

下記の記事はプレジデントオンラインからの借用(コピー)です


「格安スマホにしないと損」と言われていたが…
会社にとっての死刑宣告には2種類あります。ひとつは経営破たん。経営が行き詰まって銀行の支援も得られず経営者が頭をかかえて倒産の判断をせざるをえないケースです。そしてもうひとつのケースが世の中のルールが変わって「あれ、これだとうちは生き残っていけないよね」と気づいてしまうパターンです。
写真=時事通信フォト
楽天モバイルの新プラン発表会に出席した楽天の三木谷浩史会長兼社長。携帯電話のデータ使用量が1ギガバイトまで無料、20ギガバイトの場合も1980円(税別)となり、NTTドコモなど大手3社が3月に始める新プランを1000円程度下回る
今、後者の状態にあるのが格安スマホのサービス事業者かもしれません。「OCN モバイル ONE」「mineo」「BIGLOBEモバイル」「IIJmio」「イオンモバイル」「BIC SIM」といった独立系の格安スマホサービスの市場は過去5年間で急成長しました。
少し前までは、携帯大手3社のスマホの通信料が月額で7000~8000円ぐらいかかるところ、格安スマホなら月額3000~4000円になる。あまりデータを使わないライトユーザーなら2000円ぐらい。だから格安スマホにしなければ損だというイメージがありました。
複数持ちをしている人も結構いるので契約台数だけ見ても実情はわからないのですが、世の中の調査でみると、大手3社とスマホ契約をしてメインで使っている人が75%ぐらい、格安スマホをメインで使っている人が25%ぐらいというところまで格安スマホの勢力が拡大していました。
MVNOにとって、値下げは収益圧迫に直結する
そこに出現したのが、昨年秋に誕生した菅政権の目玉政策である、スマホ料金の引き下げの動きです。NTTドコモが20GBで月額2980円という新プラン「ahamo」を発表し、あわててソフトバンクとKDDIがこれに追随する形になりました。これらの新プランはこの3月から提供を開始します。
そうなったら7GBで月額3000円といったこれまでの格安プランは生き残ることができません。3万件以上の契約数がある格安スマホ事業者は少なくとも50社以上あるそうです。それらの格安スマホ各社からもつぎつぎと値下げプランが発表されていますが、損益的にはぎりぎりのプランになるはずです。なぜならその大半が大手から借りた回線の利用料を支払ってサービスを提供するMVNOという事業形態ですから、値下げは収益圧迫に直結します。
業界の大幅再編淘汰は必至という状況の中で、今後、格安スマホの業界はどうなっていくのでしょうか。可能性をまとめてみたいと思います。
格安スマホの会社には「3つのタイプ」がある
そもそも格安スマホの会社は3つのタイプに分かれます。ひとつはUQモバイルやY! mobileのような大手の系列子会社です。LINEモバイルも今回の流れでSoftBank on LINEという新サービス名に移行して完全にソフトバンク携帯の系列会社としてのサービスに生まれ変わります。
2つめのタイプに楽天モバイルがあります。これは第四の携帯電話会社として独自回線での新規参入を模索中の新興勢力で、データ利用料無制限で月額2980円のサービスで業界に殴りこみをかけた途上にあります。全国ネットワークの敷設に1兆円を超える設備投資が必要な最中で、いきなり持ち上がった価格大幅引き下げの動きは、楽天にとっては試練といえる状況でしょう。
そして3つめの勢力が先ほど挙げたMVNOです。主にNTTドコモから回線を借りている企業が多く、それをドコモよりも安い価格帯で再販するビジネスモデルだったのですが、大本のドコモから月額2980円のサービスが始まることでの打撃が大きく、今、その存続の危機にある状況です。
約半数の人たちは、月間2GB以下しか使っていない
さて、その格安スマホ業界の未来を占う前に、そもそも読者の皆さんはご自分が毎月どれくらいのデータ数をお使いか、ご存知でしょうか? 調査によると大半の消費者は、キャリアと契約したデータ量(いわゆるGB)を使いこなせていないようです。私とその家族の例で説明しましょう。
まず私ですが、経済評論家で仕事では当然のように携帯はよく使います。外出先ではメール、ニュース、SNSのチェックは欠かせませんし、オンラインショッピングや外食のデリバリーサービスの利用もよくします。ただし動画と音楽のダウンロードは使いません。これで月間ほぼほぼ2GB以内です。わたしの両親も高齢者ながらスマホを使っていますが、こちらはほぼほぼ1GB以下です。
そして調査によると月間2GB以下しか実際に使用していない利用者は実は我が国全体で約半数にのぼります。
つぎにちょっと後出しじゃんけんっぽくて恐縮ですが、私はもう一台、サブのスマホを持っています。実はこちらをテザリング目的で使っていて、たとえば外出先の喫茶店でパソコンで作業をするときなどにはデータ契約の多いこちらの携帯を使います。動画のチェックなどもこちらの携帯でするのですが、月間の使用量は多くて5GB以内です。
私とは違ったライフスタイルのユーザーで、たとえばSpotifyなどと契約して毎日2時間音楽をダウンロードして聴いている人も、だいたい月額の使用料は5GBあたりになります。
20GB以上が必要なユーザーは25%だけ
このようなライフスタイル、ワークスタイルのユーザーはこれまで月額7GBぐらいの契約が必要だったわけですが、このユーザー数が全体の25%ぐらい。つまり現在のデータの使い方だと75%の人は7GBか3GBの契約で十分で、20GBの容量が必要な人は人口全体の残りの25%だけなのです。少なくとも現状のスマホの使い方であればの話ではありますが。
さて、この「残りの25%の人」は実は20GBで十分かどうかはわかりません。オンラインゲームを四六時中楽しむとか、動画ばかり見ている人はそれでは足りません。
私も実験的に自宅の光回線の代わりに楽天モバイルの無制限プランを2カ月ほど使ってみたことがあります。私の場合、データの利用量が多かったのはNetflixの視聴のせいだと思いますが、この時期は1カ月目が96GB、2カ月目が70GBを使用しました。そのうち一日は楽天の一日のデータ制限上限の10GBを超えたために動画が見られない日があった。そんな感じでした。
世の中にはこういった規模のユーザーが10%ほどいて、これはahamoの2980円の20GBプランではだめで、その上の各社6600円程度の無制限プランを契約することになります。
UQモバイルが打ち出した「3GBで1480円」
つまりざっくりとまとめると、潜在市場としては50%のユーザーが3GB以下で十分、25%のユーザーが7GBプランで十分、15%のユーザーに20GBプランがフィットして残り10%が無制限プランを必要とするわけです。そう考えるとドコモの月額2980円プランに対抗するためには、これらの、どの土俵でどう戦うかが、格安スマホにとっての戦略となるわけです。
ここで先ほど分類した格安スマホ会社の3パターンが関係してきます。最初のカテゴリーである大手キャリアの子会社系の格安スマホ会社は、20GBもいらないという75%の消費者に向けたプランに実質的に注力することになると思われます。その際の基準がこの2月からKDDI系列のUQモバイルが打ち出している3GBで月額1480円のプランになるでしょう。
「最強のプラン」を出してきた楽天モバイル
一方で2番目の勢力である楽天モバイルは、これまでのプランでは市場の10%であるデータ無制限需要に特化する形になりそうでした。他社が6600円近辺の価格設定なのに対して、楽天は2980円でデータ無制限ですから、生き残りやすいのはこのハイエンド市場ということになります。
実際は「それでは生き残りは難しい」という判断でしょう。1月29日に楽天は新しい料金プランを発表しました。それはデータ容量無制限で2980円という現行プランは維持しつつ、20GB以下の場合は自動的に1980円、3GB以下なら980円、1GB以下は無料になるという新料金です。これは市場が一番大きい3GB以下ユーザーにとってほぼほぼ最安値プランになるはずです。
しかも発表では「使用量に合わせて料金が引き下がる」ということなので、これまで契約を多めに設定しすぎていた大半のユーザーにとってもこれが最良のプランになります。つまり楽天携帯は大手3社対抗について最強のプランで対抗する姿勢を見せたことになるのです。
最大の弱点は「基地局が建設中なこと」だが…
そう考えると、一番生き残りが難しいのが三番目の勢力であるMVNO勢です。ahamo発表後、関西電力系のmineoは5GBで1380円、1GBで1180円の新価格を発表しています。それ以外のMVNO勢も基本的な考え方は同じで、UQモバイルよりもお得な価格を打ち出すことでなんとか需要を引き留めようと考えていたようですが、楽天の価格変更で雲行きがあやしくなってきました。
ただ楽天の最大の弱点は基地局がまだ建設中だということです。無制限プランが適用されるのは自宅が楽天の基地局につながる消費者だけであって、そうでない場合はKDDIの基地局経由での月額5GBプランになるというのが楽天携帯の弱点です。
楽天携帯の基地局はまず東京23区に集中して建設が始まり、結果23区ではそれぞれ3桁の数の基地局の建設が完了しています。実際、都内で利用する分にはまずまず楽天モバイルは快適です。
一方で直近の総務省の電波利用ホームページで確認すると、同じ東京でも武蔵野市の基地局数は9、立川市が11とまだ建設途上の状況です。横浜も神奈川区84、西区79、鶴見区65あたりの建設ペースはいいのですが、相模原市の基地局は3区合計で6、藤沢市は5、逗子市は3といった具合で、場所による差が大きいという加入者にとってのリスクが存在しています。
とはいえ楽天モバイルの基地局の増強が進めば進むほど、この弱点は解消されるわけで、格安スマホの第三勢力にとっては楽天の存在は時限爆弾のように重たくなっていくことでしょう。
ひとつの産業を消し去ろうとする流れ
そうなったとき、格安スマホの最後の砦となるのがバンドルサービスということになるでしょう。たとえばヤマダ電機のy.u mobileの場合、家族で使うシェアプランに動画配信サービスのU-NEXTの月額利用料に加えて、動画や書籍のレンタルに使えるポイントまでついてきます。つまりU-NEXTのユーザーだったらy.u mobileに入ったほうがバンドルでお得になるわけです。
同様に電気代やガス代が安くなるなど、格安スマホ各社は親会社のサービスなどとのバンドルを通じた生き残りの可能性は残ると思います。今回の再編で新規の加入は3月末で停止が決まりましたが、LINEモバイルの提供してきた月額プラス480円でLINE、Twitter、Instagram、Spotifyなど主要SNSサービスのデータが契約容量にカウントされないデータフリープランは、格安スマホの会社としてはよい着眼点の差異化プランだったと思います。
とはいえ50社すべてが生き残るというのは現実的には難しいでしょう。私の予測ですが最終的に生き残れるのは実質的に数社ぐらいになってしまいそうです。これが国の推進する政策の余波なのだとはいえ、格安スマホというひとつの産業を消し去ろうとする大きな流れ自体はもう止めることはできないのではないでしょうか。



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