下記の記事は日本経済新聞オンラインからの借用(コピー)です。 記事はテキストに変換していますから画像は出ません
「高齢者の方にコロナで給付金が50万円支給されます。市役所の職員がご自宅に伺いますのでキャッシュカードを用意しておいてください」。東京都に住む80代の女性Aさんの自宅に今年4月、自治体職員を名乗る人物から電話がかかってきた。まくし立てるような話し方を不審に思ったAさんはすぐに電話を切り、事なきを得た。
65歳以上の被害多く
言葉巧みに安心させたり不安にさせたりしながら、現金などをだまし取る「特殊詐欺」が相次いでいる。警察庁の統計によると、2020年の特殊詐欺の認知件数(法人除く)のうち、65歳以上の被害者の割合は85.7%に達した。全体の件数はこのところ減少傾向にあるものの、高齢者が狙われるケースが目立つ。
特殊詐欺の手口は年々巧妙化している。高齢者の被害が特に多いのが、「預貯金詐欺」や「キャッシュカード詐欺盗」と呼ばれる新しい手口だ。親族や警察官、銀行協会や市役所の職員を装い「あなたの口座が犯罪に利用されている」といった名目で自宅を訪れる。暗証番号を聞き出し、カードをだまし取ったり盗んだりする。こうした手口での被害者に占める高齢者の割合は95%を超える。息子などを装って電話をかけ、銀行窓口やATMからの送金を要求する「オレオレ詐欺」も依然多い。
詐欺手口にかかわらず、足元で注意が必要なのが新型コロナウイルスを名目にした詐欺だ。Aさんの事例のように存在しない「コロナ給付金」をかたったもの、ワクチンを「優先接種」するとして金銭を要求するもの、息子を名乗って「コロナに感染し失業してしまった」と送金を求めるものなど、新型コロナに絡めた特殊詐欺は後を絶たない。行政機関がワクチン接種などでキャッシュカードや金銭、個人情報を要求することは絶対になく、こうした電話は特殊詐欺と考えて対応したい。
「自分はだまされない」にリスク
なぜ高齢者はだまされてしまうのか。立正大学の小宮信夫教授(犯罪学)は「近くに身内がいない高齢者は、詐欺犯から不安や恐怖をあおられると『急いで対応しないと大変なことになる』とパニックに陥りやすい」と指摘する。「詐欺のニュースに触れても『自分は絶対にだまされない』と過信する高齢者は多く、こうした人ほど危ない」(小宮教授)という。高齢者は在宅時間が一般的に長く、固定電話を利用する人も多いだけに、人との接触を避けるコロナ下で特殊詐欺のリスクはいっそう高まっている。
被害に遭うと経済的な回復は容易ではない。刑事裁判で犯罪収益を没収する判決が確定すれば、被害額に応じて給付を受けられる「被害回復給付金支給制度」もある。没収した被害財産をもとに給付金を支給する仕組みだが、そもそも犯人が捕まるとは限らないなど給付までのハードルは高い。だからこそ、普段から詐欺を防ぐ対策が重要になる。
では被害に遭わないようにするにはどうすればいいか。まず詐欺犯に利用されやすい固定電話機を工夫するのが一案だ。迷惑電話防止機能を搭載した電話機を使えば一定の抑止力になる。例えばパナソニックの製品では呼び出し音が鳴る前に相手に通話を録音することを伝える「警告」、着信中は迷惑電話への注意を促すアナウンスが流れる「注意喚起」、電話に出ると通話内容を自動的に「録音」するという3段階の機能がある。警察や自治体が収集した迷惑電話番号からの着信を自動で拒否するサービスにも別料金で対応する。
被害を食い止めるため、金融機関が高齢者のATM利用で振り込みや引き出しの限度額を20万円以下などに設定する例は増えている。預金者が利用上限を設定できる金融機関もあるので、日々の生活に支障のない範囲で限度額をさらに低くすることも選択肢だ。
家族と連絡密に
詐欺被害防止にはハード面の備えだけではなく、家族や友人と日ごろから連絡を取り合うなどソフト面の対策も欠かせない。ファイナンシャルプランナーの深野康彦氏は「一人暮らしなら月2~3回は子供などと電話したほうがいい。通話の長さよりも頻度が大切」と助言する。子供の声色や会話のテンポに慣れることが重要で、実際に深野氏の母親は口ぶりの違いに気付いてオレオレ詐欺の電話を2度撃退したという。
被害はないものの不安な場合は、警察の相談専用電話「#9110」や自治体の消費生活センターなどにつながる消費者ホットライン「188」で相談できる。高齢者自身の対策に加え、家族など周囲が常に気を配ることも意識しておきたい。
(阿部真也)
特殊詐欺被害128億円 上半期、9割近く高齢者
今年1~6月の特殊詐欺の被害額(暫定値)は、前年同期より4億1千万円減の128億8千万円だったことが、4日までの警察庁のまとめで分かった。過去10年で最少となったが依然高水準で推移しており、警察庁は引き続き対策を進める。
認知件数は37件減の6840件。うち65歳以上の高齢者の被害は約9割の6018件に上った。埼玉、千葉、東京、神奈川、愛知、大阪、兵庫の7都府県で4879件(71.3%)を占めた。
警察庁によると、手口別では還付金詐欺が1733件(前年同期比970件増)、おれおれ詐欺が1418件(373件増)で増加傾向。預貯金詐欺は1379件(774件減)、キャッシュカード詐欺盗は1164件(555件減)だった。
新型コロナウイルス感染拡大に乗じた給付金交付詐欺などは29件あり、計9260万円の被害が確認された。
摘発人数は1102人(72人減)で、うち暴力団関係者が11.7%の129人、少年は19.2%の212人。全体の70.4%の776人が詐取金受け取り役の「受け子」だった。
事前に電話で資産状況などを聞き出す「アポ電」は5万1874件(1790件増)あった。〔共同〕
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