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日産、「大赤字決算」に見えた再建へのハードル

2020-11-20 18:41:07 | 日記

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「真っ赤か」の悲惨な数字だった。
日産自動車が11月12日に発表した2020年度上期(4~9月期)決算は、売上高が3兆0926億円(前年同期比38%減)、営業損益が1587億円の赤字に転落した(前年同期は316億円の黒字)。早期退職費用や新型コロナウイルスによる操業休止期間の固定費を特損に計上し、最終赤字は3299億円にまで膨らんだ。
日系自動車メーカー各社の上期決算を見ると、コロナ禍からの販売回復の勢いに歴然とした差が出ている。トヨタは7~9月の世界販売台数が前年同期の8%減にまで戻り、ホンダは1%増と大健闘を見せた。一方、新型車が乏しい日産の7~9月は前年実績を17%下回り、販売回復が他社より遅れている。
コロナ影響下でも6293億円の純利益(最終利益)を稼ぎ出したトヨタ自動車をはじめ、ホンダ、スバル、スズキは上期決算で黒字を確保した。日産、三菱自動車、マツダの3社が赤字組だが、中でも日産の損失額は断トツに大きい。同社は年間でも巨額の赤字(営業損失3400億円、最終損失は6150億円)となる見通しだ。
にもかかわらず、内田誠社長はオンライン方式で行った決算会見の席上、「構造改革は着実に進んでいる」「取り組みの成果が上期の数字に出ている」と、再建への手応えを何度も口にした。
その根拠となっているのが、第2四半期(7~9月)の赤字縮小だ。コロナで需要が消失した4~6月は営業赤字幅が1539億円だったのに対し、7~9月は48億円にまで赤字幅が縮小した。主要市場での新車需要回復に加え、固定費削減などの構造改革効果が大きい。
日産は今年5月、再建に向けた事業構造改革計画(新4カ年の中期経営計画)を発表した。販売台数に対して過剰な生産能力の削減を掲げ、上期中にインドネシアでの生産を終了。各地で人員削減も進め、「第2四半期(7~9月期)の固定費は前年同期より12%減った」(アシュワニ・グプタ最高執行責任者)。
ゴーン流「拡大路線」の大きなツケ
さらに内田社長が上期の成果として何度も言及したのが、「販売の質」というフレーズだった。「われわれはかつてのような過度な販売をやめ、販売の質を上げることに注力している。その取り組みの成果がようやく数字に表れ始めている」(内田社長)。
「販売の質」とは1台当たりの採算性を指す。その質(=採算性)の低さこそが、現在の日産が抱える最大の問題だ。
日産はカルロス・ゴーン元会長の下、2010年代に拡大路線を突き進んだ。新車の開発投資を絞って生産能力増強を優先する一方で、ディーラーに値下げ原資となる販売奨励金を大量に支給して、薄利多売で目先の台数を追った。中でもその最前線が、市場規模の大きな北米だった。
が、こうした拡大戦略はやがて行き詰まる。
新車の開発を疎かにしたことで、前回のモデルチェンジから年数を経た車齢の古い車ばかりになってしまったからだ。その結果、奨励金を増やして店頭販売価格をさらに下げないと売れない「負の連鎖」に陥り、かつて高収益を誇った北米事業は急激な収益悪化をたどった。過度な安売りでブランド価値も大きく毀損した。
日産の内田誠・社長兼CEOは決算会見の場で、「改革は着実に進んでいる」と何度も口にした
拡大戦略が破綻した日産は、過度な安売り体質から脱却して販売を健全化すべく、「台数」から「採算性」重視への転換を宣言。特に安売りがひどかった北米市場などで販売奨励金の削減に取り組み、アメリカでは第2四半期(7〜9月)の1台当たりの奨励金が前年同期より5%減り、平均販売価格が3%上昇したという。
しかし、健全化にはまだ程遠い。アメリカの調査会社オートデータによると、現地における9月の日産車の1台当たりの販売奨励金は平均4499ドル(約47万円)。以前より減ってはいるが、その絶対額はいまだにトヨタやホンダの2倍近い。製品ラインナップの多くを車齢の古いモデルが占めるがゆえに、他社よりも安売りせざるをえないのだ。
製品ラインナップを大幅に刷新
コロナ禍からの販売回復、そして真の意味で「販売の質」を高めるためには、値引きに頼らなくても売れる魅力的な車の登場が欠かせない。
日産は5月に公表した改革計画の中で、「今後18カ月内に世界で12の新型車を投入する」とし、ラインナップを順次刷新する。また、世界で69あった車種を2023年までに55以下に減らし、その分、今後は1車種当たりのモデルチェンジの間隔を従来よりも短縮する考えだ。
日産が9月に発表した「フェアレディZ プロトタイプ」。来年度に市場投入する
すでに日本では6月に新型コンパクトSUVの「キックス」を発売、北米でも主力のミドルSUV「ローグ」を10月にモデルチェンジした。主力のコンパクトカー「ノート」も今年度内に刷新する。さらに来年度には、世界で新型EV「アリア」の販売を開始し、「フェアレディZ」などのモデルチェンジも控える。
焦点は、これらの新型車が消費者に支持されるかどうか。投入する新型車の多くは世界的に人気が高まっているSUVだが、このカテゴリーは他メーカーも続々と新型車を投入しており、販売競争は激しい。
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昨年度に続き、今年度も巨額赤字が避けられない日産は、来年度(2021年度)に3年ぶりの黒字化を目指している。構造改革計画では、最終年にあたる2023年度の目標として売上高営業利益率5%の達成を掲げており、途中地点の来年度は利益率2%の実現が目標だ。
「相次ぐ新型車投入で下期は関連先行費用が嵩むが、その成果を来年度(2021年度)の黒字につなげたい。固定費の削減を着実に進める一方で、今後は新型車で稼いでいく」と内田社長。製品ラインナップの刷新によって、安売り体質から脱却できるかどうか。日産の経営再建の成否は、これから続々と登場する新型車の競争力にかかっている。


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