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コロナワクチンの事実上の“強制”は必然か

2021-08-16 10:00:00 | 日記

下記の記事は日経ビジネスオンラインからの借用(コピー)です


国内では、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)向けのワクチンについて、打つことを強制してはいけないと言われている。だが、事実上の“強制”が今後生まれるかもしれない。
 実際、米国ではワクチン拒否者が解雇される事態となっている。CNNの報道によれば、Houston Methodist Hospitalの153人もの従業員が、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のワクチンを打たなかったという理由で自主退職を強いられたか、もしくは解雇されている。
 例えば、当院をかかりつけ医にしている大学生A君からの相談を紹介しよう。
 喘息とアトピー性皮膚炎を中心に、中学生の頃から当院をかかりつけにしている大学3回生のA君。学校でワクチンが打てるようになると聞いたが、幼少時に複数の薬剤で薬疹が生じたこともありできれば打ちたくない。20歳代前半なら感染してもほとんどが軽症で済む感染症に対して、登場して間もない、しかも既に20歳代が4人も死んでいるワクチンを打つのには抵抗があるという。学校に相談すると「ワクチンは義務ではなく必ずしも打つ必要はない」と言われたが、「ワクチンを打たなければ就職に不利になる」という噂がまことしやかに流れている……。
 現在、似たような相談が当院の20歳代の患者から相次いでいる。中高年に比べて若者の間でSARS-CoV-2のvaccine hesitancyはそれなりのムーブメントになっているようだ。その理由として、A君を含む当院の患者がよく言うセリフが「感染して死ぬよりもワクチンで死ぬ確率の方が高いことに納得できない」というものだ。
 数字だけ見ると、6月末までにワクチン接種後数日以内に死亡した20歳代は4人、感染して死亡した20歳代が8人で、母数の取り方や解釈の仕方によっては、ワクチンで死亡する確率の方が高いように考えるのだろう。
 他方、当院の若い患者の一部には「一刻も早くワクチンをうちたい」と訴える者もいる。中には「日本ではまだまだ順番が回ってこないから海外で打とうと思う」という者もいて興味深い。現在、米国とUAEでは、国籍に関係なく会場に行けば誰でも無料でワクチンを受けられるらしい。なぜ彼(女)らが早い接種にこだわるのかといえば、留学やワーキングホリデーに有利だと言われているからだ。その真偽は別にして、日本人を受け入れる国からすればワクチンは済ませておいてほしいというのが本音だろう。我々日本人も「海外のオリンピック関係者は来日前にワクチンを打って来てほしい」と願っているのではないか。
自主的にワクチン接種を望む人を増やすにはどうすれば?
 「ワクチン接種を強制することについてどう思いますか?」と医療者に問えば、ほとんどが「許されることではない」と答えるだろう。特に、病院長・理事長、行政に携わる医療者、公衆衛生学者、感染症専門医らがメディアに取材されたとしたらそのように答えるのではないか。
 だが実際はどうだろう。例えば、ワクチンは受けないという看護師が仮に転職活動を開始し、あなたが院長を務める病院/診療所に履歴書を持ってやってきたとしたらどうだろう。
 次に患者の視点から考えてみよう。ワクチン未接種の看護師の勤務するX病院は「ワクチン忌避の医療者が働いている」という噂が絶えない。その一方で、X病院の近くにあるY病院では、入口に「当院の従業員は全員コロナワクチンを済ませています」と掲示されているとすれば、どのようなことが起こるだろうか。
 話を再び当院の患者A君に戻そう。A君が仮に海外事業に興味があって商社を目指しているとしよう。A君が懸念しているようにワクチンを打たないと決めたことで就職に不利になることはないだろうか。
 もっとも、ワクチンを打っていなければ仕事ができないという“ルール”は今に始まったことではない。例えば、医学生や看護学生にとってB型肝炎や麻疹のワクチンは事実上の「強制ワクチン」といえるだろうし、教職者や教育実習生は麻疹、風疹のワクチンが義務になっていることも多い。ガーナやカメルーンなどアフリカのいくつかの国では黄熱ワクチンを接種しなければ入国が認められない。
 ワクチンを強制せず、自主的にワクチン接種を望む人を増やすためには、まず、SARS-CoV-2のワクチンの安全性をきちんと示すべきだろう。今後、100万人当たりの死亡率は麻疹やインフルエンザと変わりありません、ということが実証できれば反ワクチンの流れは縮小していくのではないだろうか。
 もう一つ、社会にとってどうしても必要なのは「特効薬」だ。日本を含む幾つかの国や地域ではインフルエンザワクチンに反対する意見が根強いが、インフルエンザワクチンを接種しなくてもそれほど厳しい非難を浴びることはない。その理由の一つは抗インフルエンザ薬があるからではないだろうか。要するに、インフルエンザはCOVID-19に比べると治癒しやすく、たいした感染症ではなくなっているわけで、その大きな理由は特効薬があるからだ。
 SARS-CoV-2ワクチンの安全性が確立し特効薬が登場するまでは、ワクチン未接種者への行動制限を求める声はなくならないだろう。海外渡航のみならず、今後は国内旅行、レストランや劇場、コンサート会場などでもワクチンパスポートのような話が出てくるのではないか。就職に向けてのワクチン接種の是非はこれから深刻な社会問題となるだろう。
 その差別に立ち向かうために我々医療者は何をすべきなのか。名案は思い浮かばないが、「外部への問題提起の前にまずは身内から」というのが僕の基本的な考えだ。だから、まずはvaccine hesitancyの医療者の気持ちを理解することから始めようと考えている。
谷口 恭(たにぐち やすし)氏
太融寺町谷口医院
1991年関西学院大学社会学部卒。商社勤務を経て、2002年大阪市立大学医学部卒。研修医終了後、タイのエイズ施設でのボランティアを経て大阪市立大学医学部総合診療センター所属となり、現在も同大非常勤講師。



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