内分泌代謝内科 備忘録

カリウム異常

カリウム異常についての総説
Am Fam Physician 2015; 92: 487-495
 
低カリウム血症および高カリウム血症はカリウムの摂取、排泄、細胞内外カリウムの移動の変化によって起こる、よくある電解質異常である。
 
利尿薬の使用と胃腸からのカリウム喪失が低カリウム血症のよくある原因であり、腎臓病、高血糖あるいは薬物の使用が高カリウム血症のよくある原因である。
 
低カリウム血症 (血清カリウム濃度 <3.6 mmol/L)は入院患者の 21%、外来患者の 2-3%に認める。高カリウム血症 (成人で血清カリウム >5 mmol/L, 小児で >5.5 mmol/L, 新生児で >6 mmol/L) は入院患者の最大 10%、外来患者のおよそ 1%で認める。
 
カリウム異常は重度の場合は生命を脅かす心伝導障害や神経筋障害を来し得る。したがって、何よりも重要なことは病歴、身体所見、血液·尿所見、心電図から緊急で治療する必要があるかどうかを判断することである。緊急の治療が必要な場合とは、1. 重度あるいは症候性の低カリウム血症/高カリウム血症、2. カリウム濃度が急激に変化している、3. 心電図異常をともなう、4. カリウム異常の合併症がある場合である。
 
低カリウム血症は経口または経静脈的なカリウム補充で治療される。
 
高カリウム血症による心電図変化を認める場合は、心伝導障害を防ぐために経静脈的にカルシウムが投与される。また、急性期には血清カリウム濃度を下げるためにインスリン(ふつうは同時にブドウ糖も) やアルブテロール (albuterol, サルブタモール: salbutamol と同薬、β2受容体作動薬) 投与が好まれる。亜急性期にはポリスチレンスルホン酸ナトリウム (sodium polystyrene sulfonate) が処方される。
 
低カリウム血症でも、高カリウム血症でも細胞内外のカリウムの移動を引き起こす原因がないか考えることは重要である。なぜなら、反跳性にカリウム異常を来す危険があるからである。
 
1. 低カリウム血症の原因
 
低カリウム血症は 1. 異常な喪失、2. 細胞膜を介した移動、3. 摂取不足によって起こる。このうち、異常な喪失が原因として最も多い。腎臓は摂取不足に対してカリウム排泄量を減らすことができるので、摂取不足が単独で低カリウム血症の原因となることは稀である。ただし、入院患者では摂取不足が原因となることはよくある。
 
利尿薬の使用は腎からの喪失による低カリウム血症の原因として多い。同じ用量であれば、クロルタリドンの方がヒドロクロロチアジドよりも低カリウム血症を来しやすい。利尿薬による低カリウム血症は用量依存性で軽度の場合 (3.0-3.5 mEq/L) が多いが、腸管からの喪失など別の原因と重なれば重度となることもある。
 
腸管からの喪失も低カリウム血症のよくある原因であり、特に入院患者に多い。上部消化管からの喪失による低カリウム血症は間接的に起こり、(胃酸の喪失による) アルカローシスに反応して腎からのカリウム排泄が促進されることによる。
 
カリウムの一部は腸管に排泄されるため、慢性的な下痢は低カリウム血症の原因になり得る。この場合、高クロール性アシドーシスをともなうことがある。
 
2. 評価と治療
 
低カリウム血症の評価はまず緊急で対処するべき危険な症状や徴候がないかを確認することから始まる。
 
危険な症状や徴候とは、1. 脱力、2. 動悸、3. 心電図変化、4. 重度の低カリウム血症 (<2.5 mEq/L) 、5. 急性の経過で出現した低カリウム血症、6. 基礎に心疾患や肝硬変がある、である。
 
低カリウム血症による不整脈では、ほとんどの場合で基礎に心疾患がある。
 
治療方針が変わってくるので、早い段階で細胞内にカリウムが移動する病態 (甲状腺機能亢進症など) がないかを確認することは重要である。
 
マグネシウム血症をともなっていることを確認し、治療を開始することも重要である。なぜなら、低マグネシウム血症はカリウム補充を阻害し、低カリウム血症による不整脈を増悪させ得るからである。
 
問診では、腸管からの喪失 (嘔吐·下痢) の有無、薬剤歴、心疾患の既往を確認する。過去に脱力を経験している、甲状腺機能亢進症の既往がある、あるいはインスリンまたは β受容体作動薬を使用している場合は細胞内へのカリウムの移動が低カリウム血症の原因である可能性がある。
 
身体診察では不整脈の有無と神経所見 (脱力から上行性麻痺まである) に注意する。
 
低カリウム血症と診断するためには血清カリウム濃度をくり返し測定するべきである。血清カリウムの他には、血糖、マグネシウム濃度、尿電解質、クレアチニン濃度、酸塩基平衡を測定するべきである。
 
尿からのカリウム排泄量を評価するのに最も正確な検査は 24時間蓄尿である。正常な腎臓では、低カリウム血症の際には 15-30 mEq/L (mmol/L) を超えるカリウムを排泄しない。
 
より実用的な評価法として、スポット尿でカリウム-クレアチニン比を計算するという方法がある。>13 mEq/gCre (1.5 mEq/mmolCre) は腎からのカリウム喪失を示唆する。初期評価で原因が特定できない場合は甲状腺と副腎機能の評価を検討するべきである。
 
通常、低カリウム血症では心電図で T 波の低下を認める。さらに進行すると ST 低下、T 波の陰転化、PR 間隔の延長、U 波を認める。低カリウム血症にともなう不整脈としては洞性徐脈、心室頻拍·心室細動やトルサードポワンツ (torsade de pointes) がある。血清カリウム濃度が低下すると心電図異常や不整脈のリスクは高まるが、高度な低カリウム血症があっても心電図異常を認めないこともある。
 
3. 低カリウム血症の治療
 
低カリウム血症治療の直近の目標は血清カリウム濃度を安全域まで上昇させて命に関わる心収縮能の障害や神経筋障害を防ぐことである。カリウム補充はより緩徐に行わなければならないかもしれないし、注意深く観察することで低カリウム血症の原因となる疾患の診断につながるかもしれない。
 
専門家の意見では、うっ血性心不全や心筋梗塞の既往がある患者では血清カリウム濃度を少なくとも 4 mEq/L 以上に維持するべきだとされている。
 
入院患者ではカリウム補充は高カリウム血症の一般的な原因なので、カリウム補充中は注意深いモニタリングが必要である。細胞内へのカリウム移動による低カリウム血症では反跳性の高カリウム血症のリスクが高くなる。
 
全身のカリウムが 100 mEq 減少する毎に血清カリウム濃度はおよそ 0.3 mEq/L 低下するので、カリウム喪失あるいは摂取不足のある患者におけるカリウムの欠乏量はおおよそ見積もることができる。たとえば、血清カリウム濃度が 3.8 から 2.9 mEq/L に低下した場合は体全体ではだいたい 300 mEq の喪失に相当する。喪失が続いているのであれば、さらに多くのカリウムの補充が必要である。低マグネシウム血症をともなう場合はマグネシウム補充も行うべきである。
 
利尿薬使用に関連する低カリウム血症の場合は、利尿薬投与を中止するか減量することが有効かもしれない。合併症の治療で利尿薬の減量またほ中止が難しい場合は、血清カリウム濃度を上昇させる作用があるアンジオテンシン変換酵素阻害薬 (angiotensin-converting enzyme inhibitor: ACEI) やアンジオテンシン受容体拮抗薬 (angiotensin receptor blocker: ARB)、β ブロッカー、カリウム保持性利尿薬の使用を検討する。
 
特に高血圧症や心疾患の既往がある、正常低値または軽度の低カリウム血症を認める場合は食事におけるカリウム摂取量を増やすことは適切である。しかし、食事におけるカリウム摂取量の増加による効果は大きくはない。これは食事中のカリウムのほとんどはリン酸と結合しているのに対し、低カリウム血症のほとんどはクロールの低下をともなっており、塩化カリウムの補充に対して最も良く反応するからである。
 
カリウムの経静脈的補充は高カリウム血症のリスクを上昇させ、疼痛および静脈炎 (phlebitis) を引き起こし得るので、経静脈的カリウム補充は重度の低カリウム血症、心電図異常をともなう場合、低カリウム血症による症状を認める場合、あるいは経口カリウム補充が行えない場合に行うべきである。
 
経口カリウム補充で急速にカリウムを補正できる。最速で補正するためには経口カリウム補充 (20-40 mmol/日) と経静脈的カリウム補充を組み合わせると良さそうである。
 
経静脈的にカリウムを補充する場合は生理食塩水 1 L に カリウム 20-40 mmol を加えたものを投与するのが標準である。通常、補正速度は 1時間あたり 20 mmol を超えないようにするべきである。ただし、緊急時には中心静脈カテーテルを用いてより早い補正が行われてきた。カリウム補正速度が 10 mmol/時を超える場合は心電図モニターを検討する。小児では、カリウム補正速度は 1時間あたり 0.5-1.0 mmol/L/kg (最大 40 mmol/L) とする。
 
カリウムはブドウ糖を含む輸液に混合して投与するべきではない。ブドウ糖はインスリン分泌を刺激し、低カリウム血症を悪化させ得るからである。
 
緊急性のない低カリウム血症では経口的にカリウムを 40-100 mmol/日で補充し、数日から数週間継続する。利尿薬の使用や高アルドステロン血症による持続的なカリウム喪失から低カリウム血症を予防するためには、ふつう 20 mmol/日の補充で十分である。
 
4. 高カリウム血症の原因
 
高カリウム血症はカリウム摂取過剰、カリウム排泄減少あるいは細胞内からの移動によって起こる。高カリウム血症の原因はしばしば複数あり、頻度の多いものとしては腎機能低下、薬剤、高血糖がある。
 
健常者ではカリウムの摂取量が増えると、カリウム排泄量が増加するので、カリウム摂取過剰だけでは高カリウム血症の原因となることは稀である。高カリウム血症では基礎に腎機能低下があることが多い。
 
4-1. カリウム排泄低下
 
腎が関わる高カリウム血症は、以下に示す過程における異常のひとつないし複数が原因となる。すなわち、1. 遠位尿細管における流速、2. アルドステロン分泌と作用、3. カリウム排泄経路における異常が原因となる。
 
遠位尿細管におけるナトリウムと水の供給不足による高カリウム血症はうっ血性心不全、肝硬変、急性腎障害、または進行した慢性腎臓病で起こる。
 
低アルドステロン血症による高カリウム血症は副腎不全 (adrenal insufficiency) や低レニン·低アルドステロン症 (hyporenemic hypoaldosteronism, 糖尿病性腎症や間質性腎炎で多い) によって起こる。
 
4-2. 細胞内からの移動
 
細胞内からのカリウム排泄促進あるいは細胞内へのカリウム取り込みの阻害するさまざまなメカニズムにより、血漿カリウム濃度は上昇する。
 
コントロール不良な糖尿病など血漿浸透圧が上昇する病態では、細胞内から水とともにカリウムが(血漿中に) 移動する。また、糖尿病患者では、相対的なインスリン欠乏あるいはインスリン抵抗性により、細胞内のカリウム取り込みが妨げられる。
 
アシドーシスでは、細胞外の水素イオンは細胞内のカリウムイオンと交換される。この代償反応はアシドーシスのタイプによって異なり、代謝性アシドーシスで最も大きな反応が起こる。
 
体内のカリウムの 98%は細胞内に存在するため、細胞のターンオーバーを上昇させるあらゆる過程、たとえば横紋筋融解症 (rhabdomyolysis)、腫瘍崩壊症候群 (tumor lysis syndrome)、赤血球輸血 (red blood cell transfusion) は高カリウム血症を来たし得る。
 
4-3. 薬剤性高カリウム血症
 
薬剤の使用は高カリウム血症のよくある原因であり、特に基礎に腎機能障害や低アルドステロン血症がある場合に多い。
 
薬剤性高カリウム血症はカリウムの排泄を阻害する薬剤が原因になることが最も多い。また、低カリウム血症の治療または予防のためにカリウムを投与した結果、意図せずに (advertently) 高カリウム血症を来すこともある。
 
薬剤性高カリウム血症の原因の半数が ACE 阻害薬であったという報告がある。また、ACE 阻害薬または ARB を開始した外来患者のおよそ 10%が 1年以内に高カリウム血症を来す。
 
うっ血性心不全の標準治療にスピロノラクトンを追加すると死亡率が低下することが示されたため、カリウム保持性利尿薬の使用に関連する高カリウム血症の罹患率は上昇している。
 
ACE 阻害薬と ARB の併用は高カリウム血症などの有害事象のリスクを増加させるので避けるべきである。
 
高カリウム血症を来すことが知られているよく使われる薬剤としては他に、トリメトプリル、ヘパリン、β-ブロッカー、ジゴキシン、非ステロイド抗炎症薬がある。
 
5. 高カリウム血症の評価と治療
 
低カリウム血症の場合と同じように、高カリウム血症の差し迫ったリスクは心収縮能と筋力への影響であり、初期評価では緊急の治療が必要かどうかを判断することに集中するべきである。
 
高カリウム血症はしばしば無症状なので、症状がないからといって重度の高カリウム血症は否定できない。基礎に腎機能障害がある患者では高カリウム血症を来すリスクが高いので、特に注意すると良い。
 
重度の高カリウム血症 (>6.5 mEq/L) は筋力低下、上行性麻痺 (ascending paralysis)、動悸 (heart palpitation)、感覚異常 (paresthesias) を来し得る。
 
慢性腎臓病、糖尿病、心不全、肝疾患は全て高カリウム血症のリスクを上昇させる。
 
臨床医は高カリウム血症を来しうる薬剤を服用していないかを把握するために薬剤歴を確認し、カリウムを含んでいる代替塩 (salt substitute) を使用していないか尋ねるべきである。身体所見では血圧と血管内容量の評価を行い、高カリウム血症の原因となり得る腎の低灌流がないか確認するべきである。低カリウム血症の (?) 神経所見としては全身の筋力低下、深部腱反射の低下がある。
 
血清カリウム濃度をくり返し測定することで、カリウムの偽性高値を発見する助けになる。偽性カリウム高値は検体採取中または採取後に細胞からカリウムが漏出することで起こる。(血清カリウム濃度の) 他に血清中の尿素窒素とクレアチニン、尿の電解質およびクレアチニンを測定し、酸塩基平衡の評価を行う。さらに高血糖がないかを確認するために血清血糖を測定し、副腎機能を調べるために血清レニン、アルドステロン、コルチゾールを測定する。
 
心電図は、1. 血清カリウム >6 mEq/L、2. 高カリウム血症による症状がある、3. 高カリウム血症が急速に進行しつつある疑いがある、4. 初めて指摘された高カリウム血症で基礎に腎疾患、心疾患または肝硬変がある場合には検討するべきである。
 
心電図所見は高カリウム血症に対して感度は高くなく、特異度も低い。したがって、心電図変化は緊急治療を開始する引き金にはなるが、心電図変化の有無だけをもって治療の決定を行うべきではない。
 
T波増高 (peaked T waves) は高カリウム血症でよく見られる初期の心電図変化である。他に高カリウム血症で認める心電図変化としては、P 波消失 (P-wave flattering)、PR 間隔延長 (PR interval prolongation)、QRS 幅の拡大 (widening of the QRS complex) 、正弦波 (sine wave) がある。
 
高カリウム血症による不整脈としては洞性徐脈 (sinus bradycardia)、洞停止 (sinus arrest)、心室頻拍 (ventricular tachycardia)、心室細動 (ventricular fibrillation)、心静止 (asystole) がある。
 
6. 高カリウム血症の治療
 
急性期治療の目標は命に関わる心収縮能や神経筋の障害を防ぐために、細胞内にカリウムを取り込ませ、カリウム排泄を促進し、高カリウム血症の原因を取り除くことである。
 
慢性的に高カリウム血症の場合は、カリウム摂取量を減らすように指導するべきである。細胞内外のカリウム再分布による高カリウム血症は一般的ではないが、この場合はカリウム排泄促進が必要ないかもしれないし、再分布の原因を取り除くと反跳性に低カリウム血症になる可能性もあるので、慎重に評価した方が良い。
 
直ちに治療を開始するべきなのは、1. 高カリウム血症による症状を認める場合、2. 心電図変化がある場合、3. 重度の高カリウム血症 (>6.5 mEq/L) 、4. 急に始まった高カリウム血症、5. 基礎に心疾患、肝硬変、腎疾患がある場合である。
 
高カリウム血症の原因が除かれなければ、再度高カリウム血症になる可能性があるので、血清カリウム濃度は密にモニターするべきである。
 
6-1. 緊急時の治療
 
カルシウムのは心筋細胞膜を安定させ、命に関わる心収縮障害を防ぐので、心電図変化を認める場合は経静脈的に投与するべきである。カルシウムの経静脈的投与は血漿カリウム濃度には影響しない。5分後の再検でも心電図変化を認める場合は、経静脈的カルシウム投与を繰り返すべきである。
 
臨床医はカルシウムの効果の持続時間は 30-60分と短いことは認識するべきである。
 
細胞内にカリウムを移動させる最も信頼できる方法はインスリンとブドウ糖を投与することである。一般には 10単位のインスリンを投与し、その後低血糖を防ぐためにブドウ糖 25 g を投与する。ブドウ糖を投与してもよく低血糖を来すので、血清血糖はモニターするべきである。血清血糖 >250 mg/dL の場合はふつうブドウ糖の投与は不要である。
 
β2 受容体作動薬であるアルブタノール吸入はカリウムの細胞内への移動を促す補助療法だがあまり行われていない。投与方法 (吸入 (inhale)、噴霧 (nebulize)、経静脈的投与) によらず有効である。アルブテロール噴霧の推奨投与量 (10-20 mg) は呼吸器疾患でふつう使われる量の 4-8倍であることは覚えておくと良い。アルブテロールをインスリン投与と併用すると、相加的な効果がある。アルブテロールのカリウム低下効果は終末期腎不全 (end-stage kidney disease) など一部の患者で減弱する。そのため、アルブテロールは単独で使用するべきではない。
 
重炭酸イオンは高カリウム血症の治療によく用いられるが、重炭酸イオンの使用を支持するエビデンスは曖昧 (equivocal)であり、効果がないかあってもわずかだろう。したがって、重炭酸イオンは単独では使用しない。特に代謝性アシドーシスをともなう患者で補助療法として使用できるかもしれない。
 
カリウムは腸管、腎臓、あるいは透析によって血液から除去することができる。透析は腎不全、命に関わる高カリウム血症、あるいは他の治療が失敗した場合に検討するべきである。透析以外のカリウム除去法は緊急治療として行うには効果発現が遅い。現在、陽イオン交換樹脂として使用されているポリスチレンスルホン酸ナトリウム (ケイキサレート: Kayexalate) は高カリウム血症の治療には向いていないが、亜急性の状況下では体内のカリウム量を低下させる効果があるかもしれない。ポリスチレンスルホン酸は便秘を来し得るので、緩下作用を有するソルビトールが配合されていることが多い。しかし、いくつかの症例報告でポリスチレンスルホン酸とソルビトールの併用と消化管損傷との関連が示唆されていることから米国食品医薬品局は黒枠警告 (boxed warning: アメリカ合衆国において処方箋薬のパッケージに記載される警告文の形式のひとつ)を行った。より最近では、ポリスチレンスルホン酸単独使用下での消化管損傷も報告されている。したがって、ソルビトール併用の有無によらず、ポリスチレンスルホン酸は、腹部手術後や便秘、炎症性腸疾患など腸管の機能異常のリスクがある場合は使用を避けるべきである。
 
高カリウム血症の急性期における利尿薬の使用を支持するエビデンスはない。しかし、特にループ利尿薬は低レニン·低アルドステロン症による慢性高カリウム血症などの治療では有用かもしれない。
 
慢性高カリウム血症を予防するためには、患者にカリウムの少ない食品を食べるように指導したり、高カリウム血症の原因になり得る薬剤を中止·減量したり、非ステロイド抗炎症薬の使用を避けたり、腎機能が正常なら利尿薬を使用したりする。
 
https://www.aafp.org/pubs/afp/issues/2015/0915/p487.html
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