サテュロスの祭典

神話から着想を得た創作小説を掲載します。

サテュロスの祭典(2)

2022-01-01 00:02:00 | サテュロスの祭典

サテュロスの祭典


力武靖(2)


理香


力武靖さんの作品を語る時、どうしても外せないのは、理香さんと言う少女ではないかと思います。

力武さんの写真の大きな特徴は、とにかく撮影感がなく、何処か、遊びに出掛けた時の記念撮影みたいな感覚がするところ

一言で言えば、皆楽しそうな作品に仕上がっているところだと思います。

少女達も、撮影されているというより、裸で遊んでる最中、不意にカメラを向けられ、急にポーズを決めているそんな感じの写真が多かった気ます。

特に、『サバイバル』と言う、山中で少女二人にサバゲーみたいな事をさせ、ご自身もゲスト出演されてるビデオ作品に至っては、完全、遊び感覚な撮影で、自分もそこに行ってまじりたくなったのをよく覚えています。

そんな作品の中

一人、際立った煌めいていたのが、理香さんではなかったかと思います。

彼女は、力武さんの作品に最も多く出演された方ですが、どの作品を見ても非常に溌剌とされ、笑顔の眩しさが印象深いです。

また、何処かやんちゃで、悪戯っ子な雰囲気を醸し出し、近所にこんな子が一人いて、小鳥のような囀っていたら、とても楽しいだろうなとよく思いました。

それでいて、非常にプロフェッショナルなモデル少女だったのも印象に深かったです。

先にも話した通り、力武さんの作品に出演されてる少女達は皆、撮影されていると言うよりは、遊びの延長な中、彼女だけは見事な演技を披露されてきました。

全くセリフのない写真やビデオの中。

とにかく、表情と表現力が豊かで、一つ一つの作品の物語を見事に演じる姿に息をのんだものです。

しかし、彼女には暗い背景がありました。

力武さんが、彼女を見出し、モデルスカウトするのが一日遅れていたら、彼女は売春宿に売られていた

力武さんが、彼女をモデルスカウトに赴いた日、折しも、彼女は父親の手で、売春宿に売られようとしていたと言うのです。

器量の良い彼女は、多額な金で買われようとしており、もし、少女売春として売れば、その後も何かと見入りが良く、彼女の身体が売れる限り、父親は彼女を金蔓にできる。

どうしても、安易に金にできる手段として、彼女を売春宿に売りたがる父親を説き伏せるのは、至難の技であったとも言います。

それを、一度きりではなく、定期的にモデル起用する事で、父親に多額の金を渡す代わりに、売春宿に売るのを断念させました。

しかも、ただ、売春宿行きを阻止するだけでなく、叔母の自宅から学校にも通わせる事まで了承させたのだと言います。

力武さんの作品に最も多く出演されたのは、彼女である事は、前にも話しましたが

それは、彼女が随一の人気モデルだったと言うだけが理由ではなかった

彼女のそうした家庭環境の事情による部分もあったようです。

その後も、力武さんは、彼女の日常生活を何かと面倒を見、彼女は力部さんに深く感謝し、大人になった後も付き合い続けていたと言います。

にも関わらず、写真集にもビデオにも、そんな暗さは微塵もありませんでした。

いつも伸び伸びとした明るい笑顔で、笑いかけていました、

いや

今にして思えば、そんな暗い背景があったからこそ、一つ間違えればどん底の地獄の未来から救ってくれた撮影が、楽しくて仕方なかったのかも知れません。

こう話すと

力武さんがした事は、偽善欺瞞に過ぎない。所詮は、子供の裸で金儲けをしたかったから、彼女に甘い顔をして見せたに過ぎない。金儲けの為に、彼女を売ろうとした父親、ひょっとしたら、金で買って彼女の身体を弄んだかも知れない男達とやってる事は同じかも知れない。そう仰る方が、今の世の中では、大半を占めている気がします。

しかし、考えて欲しいと思います。

自分が、西村さんの立場であれば、どちらが良かったのか

売春宿に売られて、ボロボロになるまで、父親に食いつくされる人生が良かったのか

力武さんと出会い、力武さんのモデルとなる事で、売春宿行きが阻止されただけでなくて、学校にも行けた。しかも、子供の扱いのうまい力武さんのスタッフ達にとても可愛がられたし、撮影現場では、やはり同じような境遇の元でモデルを務めていた同じ年頃の友達とも出会えた。

モデル仲間の少女の中には、とても仲良くなって、一緒に何度も撮影された方もいる。

これは、僕の憶測に過ぎませんが

ひょっとしたら、自分を良い金蔓にしかみなしてなかった父親より、力武さんを父親のように見ていたかも知れない気もします。

そう考えると、自分が西村さんであったなら、どちらが良かったのか

或いは、前の記事の繰り返しになるが、それでも彼女をヌードモデルに使った事は許せないと仰るなら、他の方法で自分なら彼女を救えたと言う方がどれほどおられるか

口先で綺麗な事は幾らでも言えます。

ヌードは猥雑、児童虐待。力武さんのされた事は、単なる児童虐待、子供の商品化。

全くその通りかも知れません。

しかし、これは、僕個人の見解に過ぎませんが

僕が西村さんであったなら、力武さんに感謝すると思います。

力武さんが自分にした事が、虐待だと言うのなら、ヌードモデルと言う虐待をする事で、売春宿行きを阻止してくれた事に感謝するかと思います。商品化だと言うのなら、ヌード写真集を出すと言う商品化した事で、学校にまで通わせてくれた事に感謝するかと思います。

何より

ヌードモデルにさせられて可愛そう、何冊もヌード写真集を出されて、裸を晒されて可哀想、力武さんは最低の男だと口で綺麗事を並べ立てながら、自分を売春宿に売られる、父親に食い物にされようと言う境遇から、何も助けてはくれなかった大人達より、力武さんは何百倍も好きだろうと思います。

口先だけ綺麗事を言う大人達ばかり見てきた中、力武さんは、神様にすら見えていたような気が、僕はします。

もし、それでも、やはり力武さんが彼女にされた事は偽善であり、性的虐待であり、子供の商品化だと言われる資格があるとするなら

自分だったら、彼女をこう救って差し上げる事ができた

自分は、あの時、彼女のような少女をこのように救ってきたのだ

力武さんがモデルにされた少女の数と同じ数だけ

そう胸を張って言う事が出来る方だけではないかと思います。

ちなみに

僕は、カモノハシと言う児童買春撲滅のNPOのサポート会員に所属してます。

そのNPO団体については、皆さんも是非調べて見て欲しいのですが、非常に素晴らしい活動をされています。

そのNPO団体が活動を始めたのは、あの規制法により、力武さんが少女写真を撮らなくなってかでした。

つまり、規制法が施行されてなお、悪質な少女買春はまだまだ続いており、今なお、様々な形で少女への性的搾取は続いています。

そして、そのNPO団体が最初に関わった、売春宿から救い出された少女は、既にエイズを患い、程なく命を落とされたと言います。

その少女が最後に口にされた言葉は、学校に行きたかった

でした。

そう

あの規制法が施行されて、何年も経った後に、売春を強いられて少女の最後の言葉は、学校に行きたかった

だったのです。

その少女が亡くなる、十年くらい前

東南アジアでは、もっともっと当たり前に悪質な少女売春が横行していた頃

理香さんと言う一人の少女は、学校に行けたのです。

彼女と似たような境遇の少女達も、力武さんのモデルを務める事で学校に行き、力武さんの撮影スタッフ達に、勉強や部活、恋愛の相談など持ちかけ、年頃の少女らしい青春を謳歌していたと聞きます。

少女をヌードモデルにする事が虐待と言うなら、犯罪だと言うなら

あの時代にタイムスリップした時、そう言われ方々のどれだけの方々が、力武さんのモデルを務める代わりに、別な形で同じ青春を彼女達におくらせる事ができたのであろうか

自分ならこうできた、実際、自分はあの頃こうしていたのだ

そう言えずして、単に少女ヌードは虐待、犯罪だと言う決めつけの元に、力武さんのやった事は偽善、虐待、犯罪だと言われる方々こそ、偽善ではないか

あくまでも、僕個人の主観として、そう思えてなりません。



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