与一から出て来た生き物の記録

奇妙な生き物。早朝の自宅ガレージ奥の「与一」の中から、様々な働きをする者たちが生まれています。その有様と効能の記録です。

そらの物語24 「挑発」

2010-04-06 12:30:38 | そらの物語


「挑発」


 


 


「よ・・もき???よ?」


「はい。よも清といいます。突然のお電話、すみません。そちらでお世話になっております、Hiたかおの仲間の一人でございます。カイさんの携帯電話ですね? 突然に失礼かとも思ったのですが、急いでおりましたので、こちらに電話してしまいました。」


「・・・・・・あ・・・は、い、そうですが・・・」 と答えながら、「Hiたかお」に「誰?この人?」という仕草の「カイ」。


「あなたの、すぐそばに、Hiたかおがおりますね? 申し訳ないのですが、少しかわって頂けませんでしょうか?」


   このタイミングでその電話。 一同は ”??” という顔でその通話に集中している。 一同の向こう、京阪モール・シャッター前では100名の人だかりの中心で、未だ動揺を隠せないスーツの男を中心に、集った人々のグループ分けが始まっており、その ”ざわめき” のもう一人の中心・「サソリ」が、積み上げられたダンボール・ケースを開封している。「カイ」は一旦、携帯を手で覆いながら「Hiたかお」に小声で「よ・も・き・よ?って”人”、たかおさんの仲間???」と不審な顔だ。


「よも清さんって、いてるけど・・・ええ??なんで?・・」と電話を受け取りながら「Hiたかお」。 なぜ、「よも清さん」から?と聞きたい所だが、「カイ」に聞いても当然わからない。


「もしもし?よも清さん???」


「たかおくんですね。」 おだやかな声、間違いなく ”よも清さん” だ。 一同に向かって、なぜか頷きながら「あ・・はい!そうですが・・・」と「Hiたかお」。


「たかおくん、ご苦労様です。 FA637が例のPCの件で取り込んだままで、連絡の仕方がこれ以外なかったので、皆さんを驚かせてしまいましたね。 たかおくん、今から私が話す内容を、そこにいる皆さんにも聞こえる様に、スピーカー・ホンに変えてもらえますか?」 


「あ、はい・・わかりました・・・カイさん、これ、スピーカー・ホンってどうするんですか?」と、取りあえず、言われた通りに「Hiたかお」。 「よも清さん、OKです!」。 「ありがとう!時間があまりないので、掻い摘んで話します。まず、こちらで たった今わかった事ですが、本年・正月明けの一回目の ”ビラ配布” と、そこで今から始まろうとしている ”ビラ配布” は、全く違う、という事なのです。」


「?????????よも清さん、どういう事ですか?」


「順を追って説明します。カイさん、ヘビさんに頂いた「 ”一回目のビラ” の、雇用契約書」を調べたんです。 あれは本当に良くできた「偽造」だったんです。 書式も「ヒューマン・ワークス」のフォーマットそのままです。そこで、「ヒューマン・ワークス」に問い合わせたのですが、「オフィス・和解マン」という派遣先企業さまでの人材派遣は、1月にはしていません、との事でした。今回の大々的なポスティングが、「オフィス・和解マン」とのはじめての契約なんです。」


「ええっ???では、 ”一回目のビラ” は?誰が??」 話しを聞いていた「Hiたかお」のみならず、皆、「????」という表情。


「 ”一回目のビラ” は、誰も配っていません。どの派遣会社も動いていない、という事です。」


「??でも、大量の ”ビラ” は・・・・・」


「そうです。誰も配っていない、動いていない、なのに、 ”あのビラ” は大量に撒かれていた、という事になります。もっとおもしろい話があります。 ”オフィス・和解マン” についても調べました。 ”オフィス・和解マン” は、 ”一回目のビラ” が撒かれた後に、あわてて改名した、目的不明の宗教団体で、 ”一回目のビラ” 以前は ”和解クラブ” という団体名だったんです。 ”和解クラブ” は、 ”一回目のビラ” を受けて、 ”オフィス・和解マン” と改名しましたが、事務所は同じです。京橋駅前の「第二トリガイ・ビル」というモダンな感じの10階立てビルの4階で、ネット上での啓発活動をもっぱらとしています。ホームページやいくつものブログ・コミュ二ティーを通じて、 ”和解マンへの呼びかけ” もしくは、 ”和解マンと連携がとれた人への呼びかけ” を行っています。これが、「おもしろい」というのは、 ”呼びかけ” は毎日更新されていて、「和解マンのうわさ」や「◎×△らしい」といった類の話では盛り上がってはいるのですが、「私が和解マンです」・「私は和解マンと連携が取れています」という人物は、一回も現れていない、という事です。」


「・・・・って事は」と、頭を整理しながら「カイ」。 「・・・・って事は、その和解クラブ?オフィス和解??は、本物の和解マンを探している??」


「そうです!その通り!! そして、おそらく ”一回目のビラ” は、 ”本物の和解マン” の仕業で、オフィス和解マンは「本物が存在する」事の、何らかの確証を得ている、得ているのに、未だ、繋がる事はできていない、という事なのでしょう!!今回、今あなたたちの向こうで配られている ”ビラ” で、全てわかると思います。今、ビラの文面の内容は確認できますか?」スピーカー・ホンからの聞き取りにくい声に集中していた「ヘビ」が、「Hiたかお」の後ろから 「ヨモキヨさん、和解マンなんちゃらって会社の責任者が、おれ達の仲間の「サソリ」って奴なんッスよ!!そいつが、今、あっ!!ビラを束で配ってますよ!!ヨモキヨさん、たかおさんか、一の妄さんだったら、あの中に入っても、誰からも見えへんからGetできると思いますよ!」


「いや、サソリだけは ”見えてる” で!!たかおさんともなないろで何回も会ってるし・・」 と「カイ」。


「わかりました。 では、ケリーはそこにおりますね?カイさん、ヘビさん、ケリーを一の妄の頭から ”引っこ抜” いて下さい。大丈夫です。 ”ケリー単体” でも動けますので。ケリーにそこまで行って一枚拝借してもらいましょう。一の妄の ”X型のイガイガ” には触らないようにお願いしますね。 怪我をしますので。」


「OK!!」とケリー。少し身構える「一の妄」だったが、「ウぃっす!!そろ~っと、お願いします!!」 と従順に頭を差し出した。 「ケリー・糸3番」を ”引っこ抜く” 時、「一の妄」は少し痛いのだ。 しかし、そんな事は言っていられない。 ”小型” の生きもの、「ケリー糸3番」は、素早く動けば、ねずみくらいにしか見えない。 


 


「警告」


和解マンからの、直接の警告をお伝えいたします。


本年・秋頃、世界的な大恐慌が起こり、あなた方のお勤めの会社は全て倒産するでしょう。    その対応として、未だかつてないリストラの嵐が全国を覆いつくし、アルバイト・パート・派遣のほとんどがその対象となります。 倒産企業数は、月平均1200社に達し、本年冬頃には400万人の失業者が町に溢れ出す事となります。空前の大恐慌です。 これは、「予言」等の類ではありません。正確な情報をもとにした、「警告」です。 


信じる・信じない は、もちろん自由です。 しかし、そのような「時」が、もうすぐそこに迫っているのが「現実」であります。 今から半年後、あなたはこの ”ビラ” の意味を、平日の日中に、「求人雑誌」を手にしながら、かみ締める事となるでしょう。


さあ!心を開いて、あなたの隣人と「他人」である事をやめましょう!!「神」や「仏」は存在しません!!そう、「あなた」こそが「神」であり、「あなた」こそが「仏」であるからです!!今こそ手を取り合って、大挙・暴動を起こそうではありませんか!!多少の流血はいたし方ありません! 「和解マン」の名の下、今こそ団結する時がやって来たのです!!


「志(こころざし)」を同じくする方、もしくは、興味本位の方も歓迎します!!


まずは下記へ一報を!!!


0120-783-644(なやみ むよう)


 


「・・・・・・・・・これ・・・配るん??」 と斎元。 「なあ、たがっち、これなんか、ほら、戦争前の ”檄文” みたいやで!!ちょっとやばい目やな!!おもろいな!!」


田川も「うん、あれやな、宗教団体みたいやな!ひょっとして、これ配ったら、自動的に ”入信” とか ”入会” とかなるんかな? だいたい、あのスーツの人は普通やけど、「サソリのタトゥー」はまともじゃないな!!おれ、ちょっとワクワクしてきた!!」と興奮気味。


100名の人だかりのそこかしこから、似たようなざわめきが広がっている。 集った人の大多数が不安に満ちていたが、帰ろうとする人はいなかった。 それは、自分は「ヒューマン・ワークスという大手派遣会社のメンバーとしてそこにいる」 のであり、何かあれば「オフィス・和解マンのタトゥーの男」ではなく、「ヒューマン・ワークス」に言えばよいから。 逆に、だからこそ、このおかしな ”ビラ配り”の おかしな ”空気” を楽しんでいる気運だった。 それは、誰も入った事のない「おばけ屋敷」に入る時の、不安と期待と似ているかもしれない。


 


「ケリー糸3番」がGetしてきた ”今回のビラ” を、「カイ」が読み上げ、電話口のよも清さんに伝えた。「やはり、そうです。 これは、「挑発」です。「”和解マンに対しての挑発”です。」 と、電話口の「よも清さん」。 「カイ」が、「よも清さん、でも、これは連中が、その和解マンってのと繋がったって事じゃあ?・・・・」


「いえ、それは無いでしょう。なぜかというと、つい昨日も ”呼びかけ” は続いていますし、なにより、このポスティングの求人がタウン・ワークに掲載された日付から後も、それは同様です。 もし、このビラの内容が、本当に”和解マンからの直接の警告” であれば、彼らはもう、「和解マン」に呼びかける必要は無いでしょう。」


「あ!!そうや!!その通りですね!だって、直接話ができてるんだったら・・・そうですよ!”呼びかけ” る前に ”直接”話せばいい!」「これは、間違いなく ”挑発” です。和解マンの名前で、勝手な宗教色の色濃いビラを大々的に撒く。しかも、一回目と同じ”オフィス和解マン” を名乗り、一回目と同じ時間単価で、派遣会社まで一回目と同じ。  私がもし、”本物の和解マン” で、一回目を何んらかの方法で行ったのだとしたら、その時使った派遣会社名や時間単価までそのまま本物を使って、これだけ大々的にやられたら、ものすごく気になりますね。


さて、確認ですが、あなたがたは、カイさん、ヘビさん以外からは見えていませんね?」


「はい、そらの心模様で設定がそうなったまんまです。」


「では、向こうのサソリさんは、Hiたかおくんとは面識があっても、一の妄くんとはまだ対面していませんね?」 「はい。」


「わかりました。それではこれから ”騒動” を起こしてみようと思います。オフィス和解マンの ”挑発” を利用した ”挑発” です。 一の妄くん!出番ですよ!」わくわくしながら「一の妄」は、「ななな、なんですか!?どんな事、するんっスか? 叩きますか??殴りますか??なんでもやります!!」と、躍る心が隠せない。


「あなたは今から、サソリさんの目の前に、ものものしく現れ、”私が和解マンだ。君達のビラは何なのか?君達はウソ付きか?偽モノか?? ただちにビラ配布を中止しなさい!!” そう命令して見て下さい!」


「カイ」もついつい大人気なくワクワクしてしまい「こりゃあ見ものですね!!!まさか、 ”本物”が出てくるとは・・・・よも清さん!!あんた、すごい!!どうなるんやろう???あかん!笑いがこみ上げて来ましたよ!!」と興奮が隠せない。 「よも清さん、これって、騒ぎになって、もしかしたら、 ”本当の本物の和解マン” が出て来たりして!!」と「Hiたかお」。


「つわあっ!!」


そう一声 ”気合” を入れた「一の妄」は、100名の集団の足元に突進して行った。


  


最新の画像もっと見る

6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
え~? (すず)
2010-04-06 14:45:58
どうなってるの?
カイくんじゃなくても混乱しちゃいますね、きっと…。

自分達の仕事が何処からきているのか
はっきりしないってなると・・・。
返信する
キャラクター^^ (ことめ)
2010-04-07 20:24:43
こんばんは♪

やっと読み終えた^^;
こんなに、たくさんのキャラクター?(登場人物)
ほん~んと感心・・・よく思いつくよね~

ストーリーも誠一ちゃんらしく元気の良さ
楽しさが伝わってきました

一の妄は、100人の集団の中に突進していくって
どんな騒動になるのでしょーか??
返信する
間違えた(汗) (ことめ)
2010-04-07 20:27:21
>ほん~んと感心・・・

↑ほん~んとってなってしまいました~
ほ~~んとが正解!です。ゴメンちょ^^;
返信する
すずさんへ (井川)
2010-04-08 04:46:43
まいどで~す
お返事遅くなり すみません!!

ー混乱ー
今回、ちょっと「詰め込みすぎ」た感があります。すみませんそれに、
これ、どうしても二つに話しを別けるわけにいかなくて久方ぶりに、10000文字との格闘もあり、結局「よも清さん」に全部説明してもらった(笑)という感じです。

「和解マン」っていう、「出てこないキャラ」をリアルにするって、本当に難しいです。
簡単に整理すれば、ものすごく面白みがなくなってしまうんですよ
簡単にしてしまうと、「一回目のビラ」は「本物の和解マン」が、誰の手も借りずにやった、その「和解マン」を探している「団体(オフィス・和解~)」が、「一回目のビラ」をどうやって配ったのか分からないけども、真似てやってみて、「本物の和解マン」を挑発してみた、それに斎元くんと田川くんが知らずに参加した、で、その事全体について「生きものたち」は気づいていて、「本物の和解マン」も、「それを真似た団体」も、両方を挑発してみようとしている、という感じです。

自分の中で勝手に盛り上がってるのが、この一連のはなしの主人公は「和解マン」なのですが、実は「そらくんと和解マン」が、どうつながるのか、というトコらへんなんです
次か、その次くらいで、やって見ようと思ってます。

なんだか話しの続きの様な「お返事」になってしまい、すみません!!

即効のコメント!!本当にありがとうございました~
返信する
ことめちゃまへ (いかわ)
2010-04-08 05:16:41
ことめちゃん まいどです~!!

ーやっと読み終えた(笑)ー
すみません、長くなってしまって・・・
だいたい、自分が盛り上がってくると、「文字」が多くなり、「絵」が入れれなくなる・・・「絵」とか、「写真」とかが入れたかったのに!!

ーたくさんのキャラー
・・・多いですね
登場人物・・・確かに多い・・
でも、何気にまだまだ出てきます(お~い)いい加減にしなさい、って言われそう・・

僕の愛読書で、ロシアの作家で「ドストエフスキー」って人がいるのですが、その人の話の作り方がそんな感じなんです。僕みたいな「ど素人」が足元に及ぶ様な作家ではないのですが、ほら、「罪と罰」の人、あの人です。すごいんですよ!何がというと、「登場人物の多さ」(笑)!!!めっちゃ出てくる(大笑)!!
「出しすぎやろ!!」と突っ込みたくなるほど・・・
いろんなキャラが「出来事を語る語る(笑)語りまくる(爆笑)」
でも、なれてくると、他の作家では体験できない、ものすごいリアルな物語展開が楽しめるんです。たくさんの人の視点で「はなし」が見れるからか、一度読み出すと、やめられなくなるんです。何回読んでも、その度に違って見えて・・その影響が「大」です

長い長い「はなし」に付き合ってもらえて、本当にしあわせです~
ことめちゃん、ありがとうございます~
返信する
もっかい ことめちゃんへ(笑) (いかわ)
2010-04-08 05:22:34
あるある(笑)!!
そういう事!!
僕もしょっちゅうです!!「ことめちゃん」を
「事目ちゃん」って書いてたり(大笑)・・
僕はそれがめっちゃ多いんで、
最近は、訂正もしなくなってしまいました(笑)・・・
気にせず、行きましょうん?あかんかなぁ??・・・
返信する

コメントを投稿