与一から出て来た生き物の記録

奇妙な生き物。早朝の自宅ガレージ奥の「与一」の中から、様々な働きをする者たちが生まれています。その有様と効能の記録です。

そらの物語22 「和解マンの”まえぶれ”」

2010-03-24 10:38:57 | そらの物語


「和解マンの ”まえぶれ” 」


 


 


集合場所に駆け寄る「斎元」と田川は、20名~30名程の、


今 集い始めた人たちの中に、共通して流れる意識があるように感じた。


ー 和解マンって、どんなん?? -


集合場所の「京阪モール・シャッター前」のバインダーを持った


スーツの男は、集い来る人々の人数を何度も数えては


携帯電話で誰かとやり取りをしている。


「なあ、よしお、ここに集まって来てる人たちって、


おまえみたいに、 ”和解マン” ってキーワードが 


どうしても気になって来て見たってパターンが多いんとちがうかなぁ?」


「うん、あそこの3人組みの女の子達も、そんな話ししてるみたいやわ」


高校生くらいから、20代、30代、40代、集う人の年代はバラバラだったが、


意識のどこかに ”和解マン” というキーワードを焦点にしている


人が、少なからずパラパラといる様に思えた。


確かに、「時給1600円」を焦点に集う人の方が大多数だろう。


しかし、 ”和解マン” が云々という ”ひそひそ話し” が、


そこかしこから聞こえて来る事も確かだ。


人だかりの中心にいるスーツの男に歩み寄った「斎元」と田川は、


「電話しました、斎元です。」 「田川です。」と、


自分達が来た事を告げると、スーツの男はバインダーをボールペンで指差し、


「ええ~、さいもと、さいもと、あ!斎元さんと、田川さん、ですね。


お疲れさまです。」と、バインダーの名簿にマルを付けた。


「現場の責任者が来るまで、まだ時間がありますから、


もうしばらく、この近くで待っていて下さい。」


と言った。スーツの胸には「ヒューマン・ワークス誰々」のネームプレート。


 


少し離れてたばこに火をつけて「あれは、ヒューマンの役員やな・・・」


と「斎元」。


「現場責任者ってのが ”和解マン” ??かな?」


田川もたばこに火をつけた。


「斎元」たちがたばこをふかしている反対側の駐輪場で、


「ガシャン!ガシャン!」という物音。 それは自転車が横転する音だが、


通りの騒音のうちの一つにしか聞こえない程、ここは賑やかだ。


「おいおい、も~やめてや・・チンピラさん!」


迷惑そうに「斎元」。


「さっきのタトゥーのおっちゃんやな、リュックの・・・」


田川が思い出したように「リュックの”中身”・・出てきたかな?」


と「斎元」とは違う所に意識が向く様子。


「ここからやったら遠くてわからんな、リュックの中身・・」


とリュックもチンピラもどうでもいい「斎元」。


「とりあえず、何んも悪させんと、帰ってくれたらいいねん!とりあえずな!」


「 ”騒ぎ” を起こしてくれても おもろいかも!」


「いや!いらん いらん!!」


 



 


「そら」は「カイ・ヘビ・Hiたかお」を見送った後、うとうとしていて、


何んの気なしにふっと目覚めて、思い出した。


「あ!おれ、シャワーしてない・・」


と ぱさぱさの髪をかきあげて、その手をにおって見る。


「・・・・・くさくはない、でも、はいろかぁ、な」


言いながら「なないろ特設」の、浴槽のないシャワー室の鏡の前。


「んっ???  ”お”  ”れ”  んん???」


鏡に映った「そら」の、寝起きで赤い ”かた” のついた頬に、


大きな黒いマジックの文字で ”おれ” と書かれてある。


しばらく考えて、頭に浮かんでくる言葉を打ち消すように、


「いやいや・・ ”おれ” は ”おれ” やろ??


なんで、 ”おれ” に ”おれ” って書いてあるんや??


”おれ” は ”おれ” って分かってるから、 ”おれ” なんて書かんでも、


だいじょうぶやろ・・・・な、なんでや??しかも、めっちゃ でかい字!!」


一瞬、ハッとして、「あっ!!ネコ!!ネコやな!!ネコにやられてる!!


舌打ちしながら腕に目を落とすと、


「ああっ!! ”手” もやられてるで!! ”も行く” ・・・・・??


 ”も行く” ??って何や? ”おれ・も行く” や!!つなげとるで!これ!」


鏡の前で、ぼそぼそと語る「そら」の足元で「ゆきりん」がクスクス笑っている。


「あはは!!そらくん!それ、そらくんが自分で書いたんだよ!!


”おてて”に書いた字が「おれ」だけ”お顔”に付いちゃったのね~!!」


「ええ?? ”おれ” が ”おれ” に??」


「そうそう!カイさん達と一緒に行くって、忘れないようにって!!」


「あっ!ああっ!!!


 


1分後、 「なないろ」の廃材置き場で、「そら・ゆきりん・ぽち」の


出動の気配に満ちた、スクーターのエンジン音が響いていた。


 


 


 


 


 


 


 


 


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2 コメント

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すずさん!おはよ!! (井川)
2010-03-26 05:05:01
妹さんの旦那さん、困った方ですね~(笑)
でも、子供とお風呂に入るのが至福の瞬間の僕も、最近は出勤時間が早朝で帰りがけっこう遅くなるパターンが多く、「寝坊」を避けるため、取りあえず「寝る」。で、起きれたら、朝に「お風呂」、みたいな感じが多く、結局入れずにお仕事といういっぱいいっぱいの感じが多いです
何日も・・・はさすがに気持ち悪いですね
頑張っても3日かな

そうそう、そらくんはHiたかおくんのアドバイスで「手」に「おれも行く」って書いといたんですね。それがうとうとしている間に「おれ」という字だけが顔についていた、という、ちょっと可愛げのあるエピソードでした ちょっとわかりにくかったですね
もともとの原稿はいくつもの話しがだだ~っとつながっているんで、書いている僕は分かっているんだけど、それを分割してUPした一個の話しだけを読むと、分かりにくい、ですね
今、こそっと、手直しを入れました(笑)

ー和解マンー
どんな人なのか? だいたい「人」なのか、何んなのか??という所で楽しんでもらえれば、という和解マンです(笑)。
ちょっと、ミステリアスな感じにできれば、と思っています 

最近、僕の時間的な問題で、なかなかそちらに伺えていない中でのコメント、本当に痛み入ります。
”めっちゃ”ありがとうございます!!
気になってお邪魔できてもコメ置いて帰るゆとりが・・う~んって感じの近頃です。 とりあえず、決算期の今のドタバタを乗り切った暁には、また「がっつり・ねっとり(笑)」と伺いますので、よろしくお願いしま~す

ありがとうございます~!!!!!
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こんにちは (すず)
2010-03-25 11:26:07
面白いことを思い出しちゃった。
私の妹の旦那は大の風呂嫌い。
何日も風呂に入らなくて平気な人です。
ここへ(私の両親の家)にも何度も夜中にやってきて、
何度勧めてもなかなか風呂に入ろうとせず、
夜中の2時過ぎに風呂にやっと!入ってくれるひとでした。
一応、「お客」を迎えている私たちは、この方が風呂に入って床につくまで、寝ることすら出来ず、甥っ子の子育て中、大変迷惑していました。とてもとても疲れて・・・。

新婚の妹夫婦がアパートで暮らしていたとき、あまりに風呂に入らない夫だからと、寝ている時にマジックでいたずら書きをしたそうです。
恥ずかしくて仕事へ行けないでしょ?
だから風呂にようやく入ったのだとか…・。

笑い話ですよね。

そらくんの場合は、忘れないように書いたんだよね。
頑張ってるね!
和解マンって、どんな人なんだろう。
大変興味をそそられます。
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