「集合は京橋駅」
夜10時過ぎの京橋駅近辺は、
キャバ嬢とホスト・ボーイたちの集客の呼び声が飛び交い、
その間隙をうるおす様なストリート・ミュージシャンたちの
元気な歌声が響き渡る。
家路を急ぐ、重い足取りのサラリーマン。
路上で即興の詩作を色紙に書き付けては、
それを販売する青年。
キャバ嬢に引っ張って行かれる、少しうれしそうな
ネクタイのはだけた男。
すでに酔いつぶれて、鞄を枕に「ご就寝」の宴会帰り。
商店街から漂う「おでん」の匂いと、ホスト・ボーイたちの香水が、
交互に鼻をかすめる。
時間の流れが、ざわめいたまま止まった様な混沌の中で、
時折聞こえる京阪電車とJR京橋駅のアナウンスが、
唯一、時を刻む様だ。
「集合場所は、京阪モール、シャッター前、
スーツ姿の、バインダーを持った責任者を見つけたら、そこ」
JR京橋駅から京阪京橋駅の、この騒音の渦巻く中でも、
もう 閉店した「京阪モール」のシャッター前は、
少し暗がりになっているから、集合場所としては良い。
「バインダー、バインダー、スーツ、スーツ、あ!おった!」
”どこそこ集合” と言われると、たいがい右往左往する「斎元」でも、
それは すぐに見つける事ができた。
「なあ、たがっち、ほら、あそこ あそこ!!」と
一緒に来た田川という親友に話しかけた。
「ええ??あれが ”和解マン” ???めっちゃ、普通やん??」
と田川。 「ほんまやな・・・ちょっと・・がっかり・・というか、あれは責任者で
”和解マン” はどっか別にいてて、指示を出してるんと ちゃうかなあ?」
ポケットから何回も読んでしわしわになった「和解マンのビラ」を取り出し、
「あなたの ”想い” が ”本当” なら、必ずつながります!!
0120-783-644、なやみ、むよう、やって。ここに電話してみる??」
と「斎元」。
田川は、「おい!よしお!あれ見てみ!!ヤバそうな人!」と、
集合場所に集まりだした人だかりの一人を指差して、「斎元」の背をたたいた。
腕に獰猛な「サソリ」の派手なタトゥーの男。 目立っている。
「チンピラかな?ヒューマン・ワークスも人を選ばず、やな、
”ビラまき” やから、チンピラでもええってか?」と「斎元」。
「あっちの影にも おるで、ほら、あっちの暗がり」
田川が指差したのは、集合場所の向かい側、自転車も少なくなった
駐輪場の暗がりに、「ヘビ」が火を噴いているタトゥーの男と、
「貝がら」のデザインに裸の女が踊っているタトゥーの男。
どちらとも、夜の京橋の この雑踏の中でも目を引く程の、
派手なタトゥーだ。でも、「貝」の方の男は可愛いリュックを背負っている。
「あいつら、 ”和解マン”関係かな?なんか、ヤバそうやな・・」
自称”へたれ”の「斎元」はヤンキーやチンピラは端的に苦手だったが、
「貝」の方の男のリュックを見ていっぺんに気を引かれて 驚いて言う。
「あ!動いた!!動いた!あのリュック、中に何んか入ってんで!!」
「うわ!ほんまや!ってか、犬か?猫?・・・やったら、じぃっとはしてへんなぁ?」
と、ちょっとおもしろくなってきた田川。
「意味不明やな・・・何してるんやろ?」
「バイトやから、おれらが行っても、何んもやんちゃは せえへんやろ?たぶん・・」
「斎元」は不安を隠しきれない。 田川は一呼吸おいて、
「よっしゃ!よしお!行こ!取りあえず、集合の時間や!」
「そ・・そやな。おれは、基本、 ”和解マン” ってどんなんか、
知りたいだけやから、それだけ分かったら、”ビラ” はほっといて帰るで・・」
と、3人のタトゥーで急に弱腰の「斎元」。
「あほ!バイトやねんから、ちゃんと最後までがんばらな!!」
と前向きな田川は続けて、
「バイトもやって、 ”和解マン” も見て、しっかり稼いで、
そのまんま寝んと、本業や!!」
「・・・・まあ、言い出しっぺはおれやし・・・」
二人は「優しさ倉庫」という倉庫に勤めていた。
今晩は、以前からネットで話題になっていた「和解マン」が、
人材派遣会社のヒューマン・ワークスを使って、
”不思議なビラ” の第二弾をやる、という事を「斎元」が見つけだし、
仕事が終わってから、強行軍でやって来たのだ。
上手く「そら」の ”おれも行く” をかわした「カイ・ヘビ・Hiたかお」は、「サソリ」の後をつけて 京橋の「集合場所」に到着していた。 「Hiたかお」は、「カイ」の背負うリュックの中から、「カイさん、もうちょっとしたら、ボクの仲間の ”一の妄” が到着するんですけど、無愛想なんで、あまり気にしないで下さいね!悪いやつではないんで!」 と一応の紹介はしたが、ちょっと不安だった。 「たかおさん、OK!!たかおさんの ”お仲間” はおれにはみんな ”神様”みたいなもんやから、大丈夫ですよ!!」 と「カイ」。 とその時、「つわぁっ!!」という気合の掛け声についで、ガシャン!!という自転車の倒れる音。たて続けに「つわぁっ!!つわぁっ つわぁっ!!」
京橋・駐輪場に身を潜めていた、「カイ・ヘビ・Hiたかお」と落ち合う予定が、なかなか見つける事ができずにいた「一の妄」が、それにイラだって自転車を ”叩いていた” のだ。
皆が集ったあと、一体、何が始まるのでしょうね?
今回は、ちょっと想像つかないです(笑)
いつもなら、あ~ああいう場面なんだよねぇ、きっと…。
と、なるのですが(苦笑)
待ちきれないと奇声を上げる人もいますが、
一つの意志表示と表現方法。
何が普通で何が特殊だなんて、
人間が勝手に決めたこと。
さてさて…。
今後、何が始まるのか、スタンバイオーケーですよん。
今回から少しずつ視点を「斎元くん」に移していってます
「笑い」と「情景描写」に最近ハマってます。今回もその”ためし”なんです。純粋に「ことば」で、起こっている事柄を、どんなふうに表現できるのか、自分で書いた文面を自分で何回も読み返して、味わいながら作ってる感じです。
「におい」とか「音」とか「感触」とか。
すずさんのアドバイスで、少し短めにして行ってるおかげで、記事UPのタイミングが早いペースになって行きそうです
あと、新企画ももう少ししたらはじめてみようかと思ってるんですよ
普通に「日記」(笑)とか、「みなみくんとすずちゃんの成長日誌」みたいなもの。あと、我が家の「創作お料理コーナー」(笑)・・・
これもすずさんのblogで、思いつくままにいろんな事をされているのを見てて影響されてかもしれませんね~
本当に「おおきに!!」!!です~