「えびす・2」
「おまえら あほやろ?」 この「そら」の発言は、連合・本体からの最後の「指示」を、緊迫感とその後の警官隊との乱闘の覚悟に満ちて待ち構える静けさの中、先頭集団と「大行列」全体に、ことさらに響き渡った。 「大行列」からの反応がなかなか返ってこない事に苛立った「そら」は、クラクションの連呼でそれを煽る。「ビビビビビビビビビビ!!!」 そして、もう一声、大声で、
「なあ!!おまえら あほやろ?って!?」
この状況でこの唐突な問いかけ(しかも回答を求める様子の問いかけ)に、先頭集団と「族」の皆は困惑し、「1号」と側近達が どう対応するのか、見守る他ない。「1号」は側近に、「あの "不思議くん" の用件を聞いてやれ」と、冷静な声で側近に指示し、それを受けて数名の「鉄パイプ」を手にした頑強な輩が、「そら」に歩みより、こう言った。 「なあ、ボク、お兄ちゃんたち、今ごっつい忙しいんやけど、何んか用事かな?」 これに対し「そら」は、さらに苛立ち極まるクラクションで「ビビビビビビビビビビビビビビビーッ!ビーー!」と反応した後、鉄パイプの男達を無視し、"呆れたように"、全体に向けて大声で言う。
「こんだけ、ようけ(大勢)で走るんやったら、
一台、おれにくれたらいいねん?!」
「大行列」のあちこちで、「ププッ」と噴出す様なざわめき。鉄パイプの男達は「おいおいボク、何を訳のわからん事を・・・」と言いかけた瞬間、「そら」は " もはや待てぬ " といった具合に一気に急発進し、スクーターの後輪が暴れてスリップするほどの無理な加速で、鉄パイプの男達を弾き飛ばすか、ひき殺す勢いで突っ込んだ。 とっさに鉄パイプで身構える男達を、「そら」は、完全に無視して、「大行列」の中央、「1号」たち側近の方に突入する発作的な走りだ。 あわてた側近たちがスクーターごと取り押さえにかかったが、なかなか「そら」はすばしっこく小回りが効いていて、それをずっこけながら追い回す側近たちの動きは、必死になればなるほど どうしてもコミカルな「おにごっこ的」な動きに。 「族」の中に失笑が沸き起こり、どうしても捕まらない「そら」が、逃げながら、又、大声。
「おまえら!ぜんぜん、訳わからんで!!!」
「族たち」の中に、なぜか "のどかな笑い"が広がった。「訳がわからん」のは君やろ、という笑い。 この「アンチ・クライマックス的な空気」は、そのまま続いてしまうと、「そういうノリ」で盛り上がって行きそうな勢いだったが、「1号」のすぐ近くの側近の、携帯の着信音の控えめな響きが、ピリオドを打った。これは、「連合・本体」からの着信だ。「そら」の " ちん入 " でいったん不自然に和らいだ空気は、一瞬で消えうせた。「そら」を追い回していたコミカルにさせられた側近も、動きをやめ、それにともなって「そら」も逃げるのをやめた。「そら」はまるで、「族たち」の一員として、「連合・本体」からの、最後の「指示」を待つかのように。
「 ・・・・・・・・・・総会は無事、終了した!全てのグループの者たちに、解散の指示を!! そして、アバレロ!!」
これを受け、「1号」は「大行列」に向かい、無線ではなく肉声で、号令を放った。
「総会は終わった!!無線のチャンネルはEndに変更!!時が来た!!ただちに用意して、 " 散開 " や!!! バトルの後も、再会を誓おう!!」
一気に空気は変わり、「大行列」全体に緊張の空気と、ガチャガチャという乱闘に備えて用意する戦闘的なざわめきで溢れ、次いで再びマフラー音の大合唱。今度は無視される側の「そら」も、同じようにマフラーを吹かしてみたが、これが何の状況かは、よく解らなかった。
そして、「族たち」が思った通りのタイミングで、「大行列」の周辺地域の側道や、商店街のあちこちから、警官隊のハンドマイク・拡声器の怒鳴り声が響き渡った。
「解散しなさい!!君たちの本体の幹部は全て投降した!!あきらめて解散しなさい!!君たちの帰る所は、もうなくなった!!あきらめて、投降しなさい!!!!」 何度も同じこのフレーズを繰り返しながら、包囲の体勢を敷く無数のパトカーと白バイに、「族たち」は乱闘にありがちな雄叫びと共にバラバラになだれ込んでいく。「肉弾戦」となると、いかに「族」が鉄パイプや鎖で武装していたとしても、警官隊の鍛え上げられた身体能力の前には、やんちゃな赤子だ。罵声共々、側道の暗がりに逃走する「族たち」も多い。爆竹の破裂音がむなしく炸裂し、多くの警官隊にとり抑えられる「族」の怒号・叫び。パトカーの上に登って鉄パイプで応戦する者の怒鳴り声、そしてフロント・ガラスの砕け散る音。「族」たちか警官隊か どちらかわからぬ鮮血が、夜の163号線のあちこちに黒々とほとばしり、赤いパトライトに照らされて死傷者のありかを示す。そして一気に混戦の様相となったこのはでな乱闘は、警官隊のまさかの発砲で事態の収拾へと向う。
「発砲?!?!!!・・・・」 それは、ありえない光景だった。「うそやろ!???」ここはアメリカではない。「族」たちは皆、目も耳も疑ったが、それは間違いなく「乱射」に等しい「発砲」だ。次いで、また、そこ彼処で「発砲!!!」。もみあい、絡み合い、ひっくり返されて ぐらぐらゆれるパトカーに隠れる「族」の足元や頭上に、行く筋もの「むらさきの、矢の様なけむり」。 「催涙弾や!!」 と、誰かが叫んだ。「チャカとちゃうぞ!!催涙弾や!!!」 。 次々と容赦なく発砲される「矢のようなけむり」。混戦の中、その軍配はあきらかに警官隊に傾きだした。
「1号」と「えびす」のメンバー4人はその混乱のどさくさに紛れ、163号線から少し離れた、ドブ川沿いのうす暗い路地を、都島区・京橋方面に向けて大型バイクで逃走をはじめていた。ドブ川沿いのうす暗い路地は、その両側に民家が立ち並んでいるので、大型バイクで、しかも派手なマフラー音を響かせての逃走は、際立って目立つばかりだ。「1号」のすぐ後ろを走る「ヘビ」と言う呼び名の男が言った。「催涙弾で来るとは思わんかったなあ!!」。「おお!あれはありえへん!」とその後ろに続く「ネコ」。「今日のあいつらは、キチガイやな!」と「ヘビ」。先頭の「1号」が皆に言った。「二手に別れよう!!目立ちすぎや!!」 「ヘビ」と「ネコ」は「OK!!」という仕草だが、一番後方を走る、「カイ」という呼び名の男が叫んだ。「別れんのはいいんやけど・・・・ " あれ " どうする???」と、「カイ」のさらに後ろに続く、小さなスクーターを指差した。「ああ!" 不思議くん " か!!」と「ネコ」。「1号」が言った。「とりあえず、好きなようについてきてるんやから、好きなようにさせたら?」
大型バイク4台と「そら」は、ドブ川沿いのうす暗い路地を、さらに暗がりへと進んでいった。
最近の私の心のつぶやきと重なりました。
ほんとだね、そらくん。
お互いわけわからないよね。
周囲の空気を そらくんは どのように 受け止めたのでしょうか?
いやいや、そもそも「族」の空気が読めなかったから、そらくんの中の常識を実行するために突進したのかしら??
続きが気になります。
だからまわりの人の方が、「わからなく」なってしまう・・
ただ、そらくんのまわりには ーほんとだね、お互い 訳わからないよね!ー って言ってくれる人は、いない
即効のコメント、ありがとうございま~す
「えびす・3」が終わってちょっとしたら、
全く違った展開になるんで、お楽しみに~
それはお前だ!とすかさずツッコんでしまいました(笑)
「与一から生まれたものたち」の物語の頃、私の中でそらくんはフツーに悪いことをするフツーの少年でした。
幼く、素直で、好奇心いっぱいな。
今でもその印象は変わっていないのですが、ここまで不思議な言動をするとは思いませんでした。
まるで、そらくんは「そらだけの世界」で生きてる気がしました。
それはそらくんのルールだったり思いつきだったり発信する言葉だったり。
他に共感者のいない、周りから見れば「浮いてるような存在」なんだろうな、と思います。
でもそらくんにはそれが「いい・悪い」ではなくて当たり前の世界だから、お前ら訳わからんになるんでしょうね(笑)
そして「訳がわからん」だけだから、分かり合えないから敵、みたいな考え方をすることもなく、恐れることもなく、相手の中に踏み入ってしまえる気がします。
それはもう無意識に、堂々と(笑)
そんなそらくんを「なんだコイツ」と弾く人は多いだろうけど、引き込まれてしまう人もいると思います。
私みたいに(笑)
族の大行列、そらくんとのやりとり、警察との攻防。
スピード感とリアルさがあって、とてもカッコよかったです
時々新聞を読んでるような気になるのは実名が出るからかな?(笑)
これもまた井川さんオリジナルの書き口だと思います。
私にはないものなので羨ましい~
これから「ネコ」がどんな風に絡んでくるのか楽しみです
そして早く「Hiたかお」に会いたいです(笑)
続き、頑張ってくださいね^^
ーー「ネコ」がどんな風に絡むのか?--
「ネコ」は ”そういう絡み方はあかんやろ??”という絡み方で出てきますよ
ーー「そら」くんは「訳がわからん」だけだから、「分かり合えないから敵」みたいな考え方をする事もなくーー
そういえば、そうですね!確かにそうだ!言われてみて「その通り」だと、今、気づきました
言われてみて、初めて気づく、っておもしろいですね
ーースピード感とリアルさーー
ありがとうございます!!救われる一言です!!でも、めちゃくちゃにしんどかったです
ーー幼く率直で好奇心一杯で 不思議なコーー
一言で言われてしまいました(笑)でも、その通りです。
今はまだ、「そら」くんのロングロングトークは出てきませんが、しゃべればしゃべる程に不思議さ全開になっていきます(笑)そういう物語です。「そらくんの不思議トーク物語??」
話の途中でそらくんは15歳になるんで、だんだん、不思議ななりにも成長して行き、それなりに「恋」に悩んだりもするんです~
ーーHiたかおくんーー
この方は、これからがんばりますよ~
いろいろ考えてしまう深いコメント、本当にありがとうございま~す