与一から出て来た生き物の記録

奇妙な生き物。早朝の自宅ガレージ奥の「与一」の中から、様々な働きをする者たちが生まれています。その有様と効能の記録です。

そらの物語40 「邂逅・後篇」

2010-08-01 13:57:15 | そらの物語


 


40


「邂逅・後篇」


 


 ・・・・ そら ・・・・


か ・・・。


濡れた”さつき養護学校の学生証”にも、”療育手帳”にも、そう書いてある。


「おいおい、その携帯、ヤバいんとちゃうか??」 と田川。


無意味に、濡れた自分のTシャツで「そら」の携帯を拭きとる仕草をしてみて、


「水没は・・・・」と言ってパチッと携帯を開いてみる「斎元」。


「免れているっぽい!、一応、液晶はついてる」。


「斎元」は「そら」の携帯をすぐ閉じて”はっ”として、もう一度パチッと開けてみる。


「あほ!!よしお!余計濡れるぞ!それに、人の携帯、勝手に・・」。


「あっ!!!・・・」。


携帯の”待ち受け画像”を見た「斎元」が思わず声をあげた。


 


「こ・・これ・・・・!!」。


「えっ?何?、どした?」と田川。


「斎元」はいったん田川の不審な面持ちに目をやり、もう一度”待ち受け画像”、


そして、何か言おうとして、「いや、なんでもない・・・」。


「何?何??何???」 興味シンシンの田川。


「何んでもないって!それよりも、早よ、どっかに”避難”しよ!!」。


今、心に浮かんでいる事を、そう言って上手くごまかすのに、この雨は好都合だ。


二人はあわてて手短に”避難”できる、商店街のアーケードへ向けて走った。


ー何かを投げかける様な瞳ー


ー妙になれなれしい、話し方ー


ーこの”待ち受け画像”ー


そして、


おれを、つれていって


走りながら、これら全てが「斎元」の中で、一本の線につながろうとしていた。


ー  ・・これって・・・・・・  


 


 


 


一方、”難”を逃れた「1号」達は、身を隠す為、京橋駅前の「水滸伝」に入り込んでいた。


「1号」は肩。 「カイ」は両腕。 「ヘビ」は背中。


みなそれぞれに負傷した身体を引きずって、あまり欲しくもないアルコールをオーダーしていた。


「Hiたかお」と「ゆきりん」と「ぽち」は無傷だったが、座敷席の角に3人並んで陣取って座り、


一連の乱闘について、もめていた。


「たかおくん、最低!!めっちゃ最低!!」と憤慨して「ゆきりん」。


「たた・たかおくん、ななな・殴るって事は・・は、よも清さんに、おお、怒られるよ」と、


めずらしく「ぽち」も怒っている。 「ぼぼ、暴力は・・きき・禁止!!」。


「しゃあないやろ!!あの場合!!”ヤらな、ヤられる”って場合!!だいたいおれは、ああいう場合、黙ってじいっとするのは・・・無理や」。


と「Hiたかお」。 「たかおくんなんて、キライ!大っキライ!!」。


「はっはっは!もめないもめない!」と「カイ」。 「ゆきりんが正解だし、ぽちも正解!!たかおさんも正解です!!でも、ここで、”もめる”事は間違いですね!!」。 「カイさん、そうやけど、その通りやねんけど・・でも、やっぱり、あたしはたかおくんが殴ったのは、許せないよ!!」。と納得のいかない「ゆきりん」。「そそそそそらくんは?そ・そらくんは、ど・どうしたんかなあ?どこなんかなあ?」と、案外機転のきく「ぽち」は、言い出したら止まらない「ゆきりん」の関心の矛先を自然に変える。


「ヘビ」が「それが、さっきから電話してんやけど、6号もネコもつながらん!」と応じた。


「1号」が「まあ、大丈夫やろ。ネコも6号も、逃げ足はごっつい早いから」。


「おれもそう思う!そのうち連絡あるわ!心配ない!ところで・・・」と「カイ」。


「これから先、どうするか・・やな」。


「うん、問題はそれや」と「ヘビ」。「なないろには帰らん方がええわな、1号?」。


「今日は・・な。」と考えながら「1号」。 


 


この居酒屋での短時間の話し合いで、


「Hiたかお」・「ゆきりん」・「ぽち」は寝屋川へ、「1号」・「カイ」・「ヘビ」はバラバラに解散し、


明日、どこかで落ち合う事となった。 


話し合いの中で、「Hiたかお」は特に、”サカナ”という人物に興味シンシンで、


根掘り葉掘り「1号」に質問した。


興味シンシンだった理由は、「そら」の過去の友人関係についての認識が


何もなかった事もあるし、「サソリ」の今後の動向を考えると、


「そら」の安全の為には必要な情報だと感じたからだ。


 


 


「そら」と「斎元」は 繋がりつつあったが


私たちがそれを知るのはもう少し後になる


今回のこの事件をうけて 私たちは


「えびすメンバー」の安全をも考える必要があるとの認識にたち 


「一の妄」の「サソリ」捜索を 24時間体制のさらに警戒度の高いレベルとした


この日「Hiたかお」が聞いた”サカナという人物とその息子”についても


「はたらき協議会」での格好の議題となるだろう


 


「はたらき協議会」へ向けての さまざまな動きは


いよいよ内実を備えたものとなりつつある


現時点ではバラバラに起こってきている出来事が


まもなく”一本の線”でつながる日が近いのだ


 


 


商店街のアーケード下に”避難”した「斎元」と田川は、身震いしながらも、


起こった出来事を整理せずにはおれない心境だった。


「よしお、今の子って、おまえが詩に書いてた子やろ」。と田川。


「え?誰が?」。”うわの空”の「斎元」。 「誰がっておまえ、今の子の話し以外、


他に何があるねんな!(笑)」。 「あ、ああ(笑)、そうやなあ、え?なんで分かるん??」


「いや、そらぁ分かるやろ!おまえと、あの子の空気っていうか・・まあ、”男のカン”(笑)」。


「そんな”カン”ってあるん(笑)?」。「はっはっは!取りあえず、どうすんの?


電話置いていってるから、連絡はいろいろ付けようはあるな。返してあげなあかんし。


それって、手帳?」。 「うん、”療育手帳”って読むんかな?障害のある子?かな?」。


ー 返してあげな・・・ -


そう思う「斎元」は、真剣な顔になろうとして、しかし、ちょっとニヤけ気味だ。


フッと又、脳裏をかすめる”「和解マン」の説明書き”


”足下ニ泉アリ”という事を忘れなければ・・・・・


ー”足下”・・・おれの足元・・・、おれが、今、しなければならない事?ー


「ああっ!!会社に電話せんままやった!!」。


「ああ!よしお!ホンマや!!どうすんねん?明日、めっちゃ行きにくいぞ!」。


「するっ!!今、する!!」。


ピッピッピッピッ・・・・・


即座に会社の電話番号をプッシュする「斎元」。それを見て田川は、


今日一日、あれだけ”電話する勇気”がわかずにウジウジしていた「斎元」を思いだし、


ちょっと吹きだしそうになった。


「あ、もしもし、斎元ですが、はい!そうです!!あっ!す、すみませんでした!


はい!大丈夫です、明日は、はいっ!行きます!全然、行きます!!


はいっ!がんばります!!」。


田川は「くっくっく!」と笑いをこらえている。


「おいっ!たがっち!!明日、寝坊とかできへんから、帰ろ帰ろ帰ろ!!早く!!」。


 


”避難”したにもかかわらず、びしょ濡れのままの田川。その袖を引っ張る「斎元」も、


同じくびしょ濡れのままで、”精気”に満ちている。


 


 


 


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4 コメント

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お知らせ&次回予告 (井川)
2010-08-01 14:44:25
長い話し、お付き合いくださって、ありがとうございました!!
「斎元の章」から始まった、ひと固まりのエピソードは今回で完結です。

次回「そらの物語41」からは、お盆明けか、9月イッピくらいに、あっちこっちリニューアル(笑)して再スタートする予定です。
次回は生き物たちの「はたらき協議会」よりスタートします。”よも清さん”中心に、「大調査」のための、生き物たちの体制の組み換えが行われます。
「はたらき協議会」以降、その取り組みと同時進行で、「そら」くんと「斎元」くんの関係も急ピッチで進んでいきます。
「斎元」くんの務める「優しさ倉庫」の大きなエピソードにも入り、ちょっとミステリアス(?)な雰囲気にもなるかと思います。

物語全体としては、半分は過ぎた、という感じです。ただ、途中で脱線しなければ、あと半分(笑)という事です。

今、「生き物たち画像」は、「かみねんど」の「生き物たち人形」であふれています(笑)。
イラストと合わせて、「生き物たち人形」もバシバシ載せていきますので、お楽しみに~

このBlog自体は「お休み」ではなく、しばらく、「そらの物語」以外の事でやりたかった事をやっていきたいと思ってます。ので、今までと変わりなく、遊びにいらして下さいませ(笑)~

暑い夏。
めっちゃ、暑いし・・・
すぐそこで、せみがわあわあ鳴いています(笑)。

皆さま、どうか楽しい夏をお過ごしくださいませ

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お疲れ様でした (ココ)
2010-08-04 23:56:17
ここまでの長い、本当に長い連載、なのに一話目と何ら変わらない情熱を以って書き続けていられること、めっちゃスゴイ才能だと思います

お話の内容もどわーっと色んな事が混じり合い、色んな人が出てきて迷彩柄のよう…(笑)
この「そらの物語」に詰め込んだエピソードを紐解いたら、20個くらい別のお話が出来るんじゃないかなと思います

そのくらい紆余曲折山あり谷あり盛り上がりにほっこりまったり、色んな要素が盛り込まれていて、楽しいです。

めちゃめちゃ楽しいです!


このこんがらがった状態がこれから一本の道筋になっていく。
透明になっていく。
果たしてどんな終結に向かっていくのか…

その前にまだ半分の道のりがあるみたいですが(笑)

わくわくしながら、続きを待っています。

毎日毎日「あほかー」と叫ぶほど暑いです
お体には気をつけてくださいね
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言い忘れ (ココ)
2010-08-05 00:00:28
斎元さんがそらくんの待ち受けを見つけた時の写真。

これを見てそらくんはきゅんきゅんしていたのね

と思うと、可愛くてたまりません

斎元さんも嬉しくて仕方なかったでしょうね


こんな愛情の伝わり方もあるんだなーと感心しました

井川さんスゴイのです!
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お久しぶりです~!! (ココさんへ(お返事))
2010-08-06 05:51:36
お久しぶりのコメント、ありがとうございます~
「一話目」からの長~~~い、お付き合い(笑)、本当に本当にホント~~~~~に、ありがとうございます~!!
よくよく考えると「そらの物語以前」からの、このblog自体を立ち上げて間なしから、要所・要所で勢いをつけて下さってるんです
それこそ、「ココさんと共に」今まで走ってきた(大笑)と言っても言い過ぎではないくらいに・・・重ねて感謝しております~!!

うん、楽しいです(笑)自分も楽しいです(笑)今、ちょうど「そらの物語」の一話から順番に読み返しつつ、最終話までの全体をまとめたりしていました。ここに来てくださる方々の中にも、わかりにくい物語を読み解くのに「ココさんって人のコメント」を参考にしている方もたくさんいるんじゃないでしょうか?
「ココさんの見かた」で「見る」という感じで。そうすると、「ああ!なるほど!そういうふうに読むのかぁ!!」みたいな感じで(笑)。
ココさんのコメントを読んで、記事自体を書いてる本人が「ああ!なるほど!!」ってやってる時もあったりして(笑)

ー「そらの物語」を紐解くと・・ー
まだUPしていませんが、いくつかできているんですよ。もともと「そらの物語」のエピソードにしようと思ってたけど、それをやりだすと長くなってしまいそうなので、単独で小さな一個の話しとして、いつか発表しましょう・・ってやつが
あらかたできているのが3っつあります。
一つが「分解・えら子」のはなし。もうひとつが「”よよ”は迷子(仮)」ってはなし。この「”よよ”は迷子」ってはなしは、この夏にUPできそうです
もうひとつは、何話か続きものになりそうなはなし、「ロボット・そごう(笑)」って話し(笑)。
何?”そごう”って??(笑)
これは、だいぶん先になりますがお楽しみに~!!

それにしても、本当に「あほか!!」という暑さ
こちらも干上がりそうになりながら、なんとかやってます~
”うめぼし”と”みず”がおいしいです(笑)
この暑い暑い夏、お互い熱く熱く乗り切ろう
(笑)

お久さのコメント、ありがとうございました~
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