新月のサソリ

空想・幻想・詩・たまにリアル。
孤独に沈みたい。光に癒やされたい。
ふと浮かぶ思い。そんな色々。

「坂の上の雲」子規逝く(後編)・オマージュ

2025-02-19 03:20:00 | オマージュ

軒下の鐘が鳴った。
それは彼の胸を打った。
駆け降りた坂を振り返り、仰ぐ空にそれは響いた。
庭の糸瓜のその雫の尽きるまでと、微笑む深みに感慨し、彼らは世界を分かち合った。

ふわりと光った。
それは君の輪郭をなぞった。
駆けてゆく下駄の音が遠くへ、遠くへ、
またそぞろ近づくまではと、存分に声をあげてすがろうとも

君はどこへ、あの人に会いにゆけたのか
君はどこへ、ひとつ残らず写し取れたのか

時計台の鐘が鳴った。
鳥が風の渦を舞った。
これから上りゆく坂の景色もまだ見ぬうちに、君だけがあの白い雲の元へ先に行くのか。

ふわりと光った。
月水の鹿威し夜を叩き、君の御霊が月明をゆく。


鶏頭の花赤く、白き御袖に守られてなお
かりそめの世に別れ難き瞼の内に秘めたる君の道、幾許か。
況や、君の影懐かしむ陽がその場所を差し、次の世を紡ぐ者たちに宿る君の光、幾許なるものか。



       ・・・

※原作は読んでいません。
ドラマが素晴らしかったので。




コメント (2)
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