議案とその用い方
今回も少々長めです。
議案の種類
会議(会合)は、議案を審議(討議)するための機構です。議案が情報提供だけで議論が必要のない会議もありますが、例外的です。議案には主義案と2次的議案があります。
2次的議案はさらに、補助議案、優先議案、付随議案があります。これを図的に示すと、以下のようになります。
議案
・主義案
・2次的議案
・補助議案
・優先議案
・付随議案
以下で、各議案を説明します。
議案を提案するときは、英語では「I move ---」という決まり文句を使いますが、日本の会議ではこのような決まり文句はないと思います。私は、「私は議案を提出したいと思います。提出する議案の内容は・・・です。」という言い方がいいのではないかと思います。このような言い方をする理由は、英語のI moveと同じように、会議場にいる構成員に対して、まず、「議案を提案するんだ。」という注意喚起ができるからです。
(ア)主義案
組織として特定の決定をする、特定の意見を表明するための議案です。
(イ)2次的議案
主義案が審議中かつ表決する前に提出される主義案の変更、会議の進め方、会議の手順を正すことに関する議案です。
(イ-1)補助議案
審議中の主義案の表現を変更したり、委員会に送ったり(付託したり)、審議を先送りしたりするための議案です。
補助議案にはいくつかの種類があり、それらには優先順位が付けられています。複数の補助議案が提案されているときは、上位の優先順位の補助議案から順に審議が行われます。
(イ-2)優先議案
休憩をとるべきだ、閉会すべきだ等、審議中の議案とは直接関係しないが、会議に出席している構成員の福利厚生に関わる議案です。
優先議案は他のいかなる議案よりも先に処理されなければならない議案です。
(イ-3)付随議案
適正な手続きが確実にとられるようにする、手続き上の誤りを正す、表決が正しいものであるかを確かめるなど、議事運営の手順に関する議案です。この議案は他の議案の審議が開始される前に処理しなければなりません。
なお、上記3つの2次的議案は最もよく利用される種類の議案であり、このほかにも2次的議案はあります。2次的議案には、議論が可能なもの不可能なもの、修正が可能なもの不可能なものなどがあります。これらは別途説明したいと思います。
決定にいたるまでの諸段階
ここでは、主義案がどのように提案されて、決定(表決)されるのかを示します。
(ア)会議に出席している構成員が発言を求める
当該構成員は、「議長」と言いながら挙手をして発言を求めます。
「民主主義の文法」では、立ち上がるとしていますが、日本では挙手が慣例化していますし、それでいいと思います。
(イ)議長によって発言が許可される
議長が当該構成員に発言を許可します。このとき、可能であれば、構成員の名前を呼んで発言許可を与えることが望ましいと思います。例えば、議長が「〇〇さん、ご発言ください。」と言います。これは、会議場にいる構成員に誰が発言権を持っているかを知らしめる効果がありますし、とりわけ、複数の構成員が発言を求めているときには重要なことです。大きな会議や会合の頻度が高くなく、構成員の名前を憶えていないときなどは、座席を指定制にし、座席表によって名前がわかるようにしておくとよいと思います。あるいは、発言を求めるとき「議長、〇〇です。発言を求めます。」といって、自分の名前を言うのもいい方法かもしれません。
(ウ)議案が提出される
発言者は、「私は議案を提出したいと思います。提出する議案の内容は・・・です。」と言って、議案を提出します。
(エ)議案が支持(セカンド)される
会議場にいる誰かが、「議案を支持(セカンド)します。」と言います。この発言をする人は、挙手をしたり立ち上がったり、また、議長から発言権を認めてもらう必要はありません。
1人以上の支持(セカンド)があれば議案は取り上げられます。
もし、誰も、支持(セカンド)の発言をしない場合、提案された議案は取り上げられません。このとき議長は、「ご提案頂いた議案は会場から支持(セカンド)がありませんでしたので、議案として取り上げません。」と言って、次の議案に移ります。
支持(セカンド)が一人でいいというのは、会場にその議案を取り上げるべきだと考えている構成員が2人以上いれば、討議する価値があるとロバートさんは言っているそうです(「民主主義の文法」)。なお、私がRobert’s Rules of Order Newly Revised読んだ限り、ロバートさんは、「たった一人の思いのために、会議の時間を費やすべきでない」と考えているようです)。
(オ)議長が、議案が取り上げられることを宣言する
議長が、「支持(セカンド)がありましたので、議案『□□』は議題として取り上げます。」と宣言します。このとき、『□□』と議案を繰り返すことが重要です。これは、議案提案者及び会場にいる構成員に何が議題であるかを再確認・確認させるために重要です。
長い議案、込み入った議案は、議案提案者に書面で議案を提出させることも重要だと考えます。
(カ)討議(審議)が行われる
議長が、「それでは討議を始めてください。」と言って、討議の開始を促します。
議論は、発言権を与えられたものだけが発言し、その発言を他の構成員は遮ってはいけません。討議は例えば次のように進められます。
・構成員A:「議長、発言を求めます。」
・議長:「〇〇さん、発言をどうぞ。」
・構成員A:「私は、・・・」
発言の終了があいまいな場合は次のように言うことがあります。
・議長:「〇〇さん、以上でよろしいですか?」
発言権のある構成員(ここでは構成員A)の発言が終わっても、発言を求める者がいない場合、次のように言うことがあります。
・議長:「他にご意見のある方はいらっしゃいませんか?」
会議場に出席している構成員が討議(審議)の継続を望んでいる場合、討議(審議)は継続されるべきです。即ち、議長が会議場にそれ以上の意見がないと判断する場合、あるいは、討議(審議)短縮や、討議(審議)終了の表決がなされている場合を除いて、討議(審議)は継続されるべきです。
(キ)議長が議案の可否を表決により問う
討議(審議)が終了したと判断される場合、あるは議(審議)短縮や、討議(審議)終了の表決がなされている場合、議長が表決に移行する旨宣言し、表決を行います。以下、声による表決を例に進め方を例示します。
①議長が声による表決に移る旨を宣言する
「それでは、これから声による表決に移ります。」
②議長が議案を反復する
「表決する議案は『▢▢』です。」
これは①と一緒にし、「それでは、これから議案は『▢▢』に関する表決を声による表決により行います。」でもいいと思います。
③「この議案に賛成の方は、『賛成』と言ってください。・・・賛成の数を把握する・・・。ではこの議案に反対の方は、『反対』と言ってください。・・・反対票の数を把握する・・・」
(ク)議長が表決の結果を会議場に報告する
例えば、「表決の結果、反対多数により当組織は、〇〇を実施しないことになりました。」
主義案を規定する規則、留意事項等
(ア)規則
・発言を許可されている構成員の発言を遮ることはできない
・議案が委員会からのものでない限り、支持(セカンド)が必要である
委員会は委員長を含め2名以上で構成されますので、委員会からの議案は複数の構成員が議論を望んでいると考えることができるためです。
・討議可能である
・修正可能である
・可否の決定には、過半数の表決が必要である
(イ)留意事項
・議案が長かったり複雑であったりする場合、議長は議案の書面での提出を求めることができる
・議案の提出者は最初の発言者になる権利を有する
・構成員は自分の提出した議案に反対票を投ずることはできるが、反対意見を述べることはできない
・議長が議案を取り上げる前であれば、構成員は自分自身の提案した議案を修正できる
・議長が議案を取り上げた後は、構成員は自分自身の提案した議案の修正議案を提案できる
・議長が議案を取り上げる前であれば、構成員は自分自身の提案した議案を撤回できる
・議長が議案を取り上げた後は、構成員は自分自身の提案した議案の撤回議案を提案できる
(ハ)議事規則に違反するものとして議長が除外すべき議案
・法律や規約と矛盾するもの
・同日に同一議題を繰り返すもの
・すでに採択された議案と矛盾するもの
・組織の活動範囲や活動目的を超えるもの
・委員会決定と矛盾するもの、あるいは、単に委員会決定を繰り返すもの
・引き延ばしを狙っているもの、不正確、取るに足らないあるいは馬鹿げたもの、非礼なもの