風は妖介を呑み込むと、ふっつりと止んだ。ぶよぶよとして自ら発光している赤い瘤が周囲を囲む空間は、とてつもなく広かった。その上に立った妖介は、面倒くさそうに遠くに見えるドアへと振り返る。閉じられたドアは見る間に赤い瘤で埋め尽くされて行く。
「クソども、姿を変えてオレを取り囲む手に出たのか」妖介は犬歯を剥き出しにする。「クソはいくら集まってもクソなんだよ!」
妖介は『斬鬼丸』から白い刀身を立て、足元の瘤へ深く突き立てた。
瘤は女に喘ぎに似た叫びを上げ、瞬く間に霧散した。突き立てた刀身が曝された。妖介は『斬鬼丸』の刀身を消す。しかしすぐに霧散した瘤の場所に新たな瘤が湧き上がるように生じた。妖介は舌打ちをした。
「クソども・・・」
赤い瘤に姿を変えた妖魔は、幾重にもなって妖介を取り囲んでいるようだった。しかも、いかにも戦いの場のように広い空間を形作っている。刹那の快楽のみを求める妖魔には、およそ相応しくない集団行動だった。
「クソどもをまとめる大グソが居やがるな・・・」
妖介は『斬鬼丸』の刀身を立て、身構えた。
妖介の前方のやや離れた場所がゆっくりと盛り上がり始めた。中に何かを包み込んだような赤い瘤の塔が生じていた。妖介は刀身の伸びた『斬鬼丸』は水平に構えると、瘤の塔目がけて走り出した。と同時に、床面の瘤どもが大きくうねった。体勢を崩した妖介は瘤の上に転んだ。せり上がった塔は妖介へと近づいてくる。と言うより、包まれた中身が瘤を中を進んでいるようだった。
妖介はいまいましそうな表情で立ち上がる。塔は妖介の眼前で止まった。
「大グソが! 勿体つけて出て来やがって!」
妖介は『斬鬼丸』を振り下ろした。白い刀身が瘤の塔を真っ二つに割った。塔は大量の黒い霧を撒き散らしながら、左右に倒れた。やがて霧が消えた。
「馬鹿が!」
妖介は塔の中から現われたものを見て、怒鳴った。
「お嬢、エリお嬢・・・」
カンカンと力無く階段を上ってくる音と共に、力無い声がした。
通路に座り込んだまま、エリが顔を向けた。
「な~んだ、お前か・・・」エリは詰まらなさそうに言う。「何しに来たのよ!」
「何、って言われやしても・・・」階段から頭だけを覗かせたユウジは、エリの顔に視線を向けずに答えた。「多分、葉子さんのところじゃないかと思いやして・・・」
「だから、何しに来たの?」立ち上がる事もせず、エリが言う。声に苛立たしさが露骨に表れている。「今はお前と遊んでる暇は無いの! お姉さんと妖介が心配なの!」
「えっ? 朧の兄ぃと葉子さんがですかい!」ユウジは閉じられている葉子の部屋のドアをちらっと見ると、すぐに視線を戻した。「・・・そうでやすか・・・」
「え?」きつい口調でエリが言う。「どう言う意味よ?」
「いえ、なんでも・・・」言葉を濁す。「ただ、お二人とも、大人でやすから・・・」
「馬っ鹿じゃない! どうしてお前はそう変な方に考えるのよう!」エリが怒鳴った。「お漏らしユウジの癖に!」
「へい・・・」ユウジは済まなそうに頭を下げた。「これでも一応は大人の男なもんでして・・・」
「何言ってるのよ?」
「ここから、お嬢のパンツが丸見えでして・・・」ユウジがゴクリと喉を鳴らした。「服に合わせた黒、そこから伸びる白いおみ足、お見事でやす・・・」
「馬鹿が!」
何かが何かを蹴飛ばす音がし、何かが転げ落ちる音が続いた。
つづく
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「クソども、姿を変えてオレを取り囲む手に出たのか」妖介は犬歯を剥き出しにする。「クソはいくら集まってもクソなんだよ!」
妖介は『斬鬼丸』から白い刀身を立て、足元の瘤へ深く突き立てた。
瘤は女に喘ぎに似た叫びを上げ、瞬く間に霧散した。突き立てた刀身が曝された。妖介は『斬鬼丸』の刀身を消す。しかしすぐに霧散した瘤の場所に新たな瘤が湧き上がるように生じた。妖介は舌打ちをした。
「クソども・・・」
赤い瘤に姿を変えた妖魔は、幾重にもなって妖介を取り囲んでいるようだった。しかも、いかにも戦いの場のように広い空間を形作っている。刹那の快楽のみを求める妖魔には、およそ相応しくない集団行動だった。
「クソどもをまとめる大グソが居やがるな・・・」
妖介は『斬鬼丸』の刀身を立て、身構えた。
妖介の前方のやや離れた場所がゆっくりと盛り上がり始めた。中に何かを包み込んだような赤い瘤の塔が生じていた。妖介は刀身の伸びた『斬鬼丸』は水平に構えると、瘤の塔目がけて走り出した。と同時に、床面の瘤どもが大きくうねった。体勢を崩した妖介は瘤の上に転んだ。せり上がった塔は妖介へと近づいてくる。と言うより、包まれた中身が瘤を中を進んでいるようだった。
妖介はいまいましそうな表情で立ち上がる。塔は妖介の眼前で止まった。
「大グソが! 勿体つけて出て来やがって!」
妖介は『斬鬼丸』を振り下ろした。白い刀身が瘤の塔を真っ二つに割った。塔は大量の黒い霧を撒き散らしながら、左右に倒れた。やがて霧が消えた。
「馬鹿が!」
妖介は塔の中から現われたものを見て、怒鳴った。
「お嬢、エリお嬢・・・」
カンカンと力無く階段を上ってくる音と共に、力無い声がした。
通路に座り込んだまま、エリが顔を向けた。
「な~んだ、お前か・・・」エリは詰まらなさそうに言う。「何しに来たのよ!」
「何、って言われやしても・・・」階段から頭だけを覗かせたユウジは、エリの顔に視線を向けずに答えた。「多分、葉子さんのところじゃないかと思いやして・・・」
「だから、何しに来たの?」立ち上がる事もせず、エリが言う。声に苛立たしさが露骨に表れている。「今はお前と遊んでる暇は無いの! お姉さんと妖介が心配なの!」
「えっ? 朧の兄ぃと葉子さんがですかい!」ユウジは閉じられている葉子の部屋のドアをちらっと見ると、すぐに視線を戻した。「・・・そうでやすか・・・」
「え?」きつい口調でエリが言う。「どう言う意味よ?」
「いえ、なんでも・・・」言葉を濁す。「ただ、お二人とも、大人でやすから・・・」
「馬っ鹿じゃない! どうしてお前はそう変な方に考えるのよう!」エリが怒鳴った。「お漏らしユウジの癖に!」
「へい・・・」ユウジは済まなそうに頭を下げた。「これでも一応は大人の男なもんでして・・・」
「何言ってるのよ?」
「ここから、お嬢のパンツが丸見えでして・・・」ユウジがゴクリと喉を鳴らした。「服に合わせた黒、そこから伸びる白いおみ足、お見事でやす・・・」
「馬鹿が!」
何かが何かを蹴飛ばす音がし、何かが転げ落ちる音が続いた。
つづく
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