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コーイチ物語 「秘密のノート」 33

2022年08月29日 | コーイチ物語 1 4) コーイチとゆかいな仲間たち 2  
 しゃがみ込んだままのコーイチはちらちらと周りを見上げた。
 周りは恐怖の軍団が囲んでいた。
「どうした、コーイチ?」
 髑髏の顔の西川があごをカチカチと鳴らしながらコーイチの顔を心配そうに覗く。
「顔色が悪いんじゃない?」
 魔王復活の呪文を唱えながら清水が言う。
「今日は楽な日だから、会社でゆっくり休むと良いよ、コーイチ君」
 テーラーと並んで銃を構えた林谷が撃鉄を起こしながら笑った。
「まあまあ、ここにいても始まらない。とにかく会社に行こう」
 青龍刀を振り回している娘に優しい眼差しを向けながら印旛沼は言った。
 うわわわわ…… どうしたって言うんだ! しっかりしろ! あれは夢なんだ! ……確かにノートは拾ったけれども…… そうだ! 
「あのう……」
 コーイチはよろよろと立ち上がり、軍団を見回した。周りは何事かとコーイチに注目する。
「ノートの事なんですが……」
 コーイチは清水を見た。清水は「何か呪い系のものかしら?」と首をかしげた。 ……清水さんでは無い……
 次に林谷を見た。林谷は「何か珍しいノートなのかい?」と興味深げな顔をした。 ……林谷さんでは無い……
 印旛沼を見た。印旛沼は「新しい手品のネタか何かかな?」と身を乗り出した。 ……印旛沼さんでは無い……
 最後に西川を見た。西川は「何だ、忘れ物か!」と冷たく言い放った。 ……やはり西川さんは関係無い……
 コーイチはまたしゃがみ込んだ。 ……じゃあ、あのノートはいったい誰が入れたんだろう。
「おいおい、しっかりしろ」
 西川がコーイチの右脇を抱え上げた。
「そうだそうだ、会社で休むと良い」
 林谷がコーイチの左脇を抱え上げた。
 二人に抱え上げられたコーイチは引きずられながら改札へ向かった。
 そんなコーイチの様子を引き続きじっと見つめている視線がある事を、コーイチ自身はやはり気が付いてはいなかった。

       つづく

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