お話

日々思いついた「お話」を思いついたまま書く

コーイチ物語 「秘密のノート」 36

2022年08月29日 | コーイチ物語 1 4) コーイチとゆかいな仲間たち 2  
 階段をのろのろと上がる。足が重い。気分も重い。深い溜息をつく。やっとの事で階段を上りきった。
「コーイチ君、やっぱり今日は変よ。帰りに大魔王ガイロデンデのお祈り集会に行ってみましょうか!」
 清水が楽しそうに言う。
「それよりも、今日一日我慢して、帰りに例の無国籍レストラン『ドレ・ドル』で新作料理でも食べようか!」
 林谷がワクワクした口調で言う。
「いやいや、世界的なマジシャン、ミスター・ジョーンズのショウの方が良いよ!」
 印旛沼が力強く言った。
「その前に、吉田課長の定例会議だ!」
 西川が苦々しく叫んだ。
 ……あぁ、吉田課長…… 僕のせいで、課長の運命は風前の灯だ……
 コーイチはまたへたり込みそうになった。
 課長が撃たれる、魂が切られる、四肢が切り離される、宇宙人に連れ去られる…… うわぁ! ダメだ、どうしても頭から離れない! 
 コーイチは立ち止まり周囲を見回した。皆も釣られて立ち止まり周りを見る。……吉田課長は街にあふれ返ってはいないな……
 コーイチは空を見上げた。皆も釣られて見上げる。……まだ、宇宙人の来襲は無いようだ……
 とぼとぼと歩き始めた。
「おいおい、どこへ行くんだ!」
 しばらくして、後ろから西川の声がした。コーイチは立ち止まり、振り返る。
「会社はここだぞ!」
 四人がそろって一つのビルを指差している。
 ぽかんとした顔でそれを眺めていたコーイチは、はっと我に返り、ぽつんと言った。
「また、行き過ぎた……」

       つづく

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