二時間程して皆が戻って来た。タケルとタロウは大量の荷物を持っていた。両手に抱えきれない分は手提げ部分を腕に通し、それでも持てない分は手提げ部分をひもで結んで振り分け荷物のようにして肩に担いでいた(これはチトセのアイデアのようだ)。女性人は皆、チトセを含め小さくておしゃれな紙袋を各自持っていた。チトセは不思議そうにその紙袋を持ち上げて見ている(実は各自の買い求めた下着が入っている。チトセは三人娘に選んでもらった)。
ナナの指示のもと、タケルとタロウはリビングに荷物を運び、衣服は男女それぞれに分け、食料はリビングに併設されているキッチンへと運ぶ。タケルもタロウも手慣れたもので、コーイチが手を出す前に終わっていた。
女性陣は衣服の入った袋や箱を持って二階に上がる。二階にも風呂があり、そこは女性専用にするようだ。男性陣は一階の風呂を使用する。
「ボクとタロウさんは服のサイズが分かったから、ちょうどのものが買えたけど、コーイチさんとケーイチさんは、ひょっとしたらサイズが違っているかもしれないねぇ」
タケルはそう言って、大き目の紙袋をコーイチとケーイチに渡した。
「ありがとう、たぶん大丈夫だよ」コーイチは礼を言う。袋の中には、下着、ソックス、ジーンズのようなズボン。長袖のTシャツのような服が入っていた。「なるほど、未来の服一式ってわけだね」
「ははは、そんな大層なものじゃないよ」タケルが笑う。「デパートの特売品さ。女性陣はデパート内のテナントショップで、あーでもないこーでもないって選んでいたけどね」
「そうそう」タロウはうなずく。「待っている時間の方が長かった……」
「逸子さんもそうなんだよね。散々お店を見て回って、結局は最初のお店で見たものにするとかさ」
「ナナもそうだな。女性はいつの時代でも、そう言う点では変わらないようだね」
「……タロウ君」ケーイチがいきなりタロウに話しかけた。「お願いがあるのだが……」
「……なんでしょう?」突然の事にタロウは思わず身構える。「……ボクで出来る事なら……」
「その着ているつなぎ、譲ってくれないかな? 何となく動き易そうだし、汚れても平気そうだし。研究者向けの気がするのだよ。サイズ的にぴったりな感じだし」
「でも、ボクはずっと着っ放しだったから……」
「洗えば良いだろう? 」
「……分かりました、風呂の間に洗っておきます。……タケルさん、洗濯機はありますよね?」
「あるなんてもんじゃないよ、最新式のが鎮座ましましているよ。どんな衣類でもその洗濯機に入れれば、染みも汚れも落ち、新品同様に折りたたまれた状態で仕上がって来る。ボクも何度か使わせてもらったから、機能に問題はないよ」タケルは言う。「じゃあ、風呂の準備をしてくるよ」
タケルは、勝手知ったる他人の我が家と言った感じで準備をしに行った。
風呂は一人毎に湯が張り変わった。贅沢なものだとコーイチは思ったが、この時代では当たり前の事なのだろう。自分の常識で判断してはいけないと改めて思うコーイチだった。
男性陣全員の風呂が終わり、着替えも終わり、リビングのソファに座っていた。ケーイチは青いつなぎを着て満足そうだ。残りの三人は、同じズボンで、コーイチは黄色、タケルは緑色、タロウは茶色の色違いの同じ型の服を着ている。そこには特売品感がにじみ出ていた。女性陣はまだ現われない。色々とあるのだろうとコーイチは思った。
「食事の用意はどうなっているんだい?」ケーイチが言う、お腹がぐうと鳴っている。「とりあえず、何かあると嬉いのだが……」
「女性陣が作るって張り切っていて……」タケルが言う。タケルのお腹も鳴った。「すぐに食べられるものは無い状態で……」
「特に逸子さんが張り切っていましたね。久々にコーイチさんに食べてもらえるって言って」タロウが言う。「アツコは料理はあまり得意ではないんですよね……」
「ナナもそうだよ」タケルが言う。「現役の時は仕事一筋だったから、腹が減ったら出来合いのものを買って食べていたよ。台所には調理器具一式が揃っているけど、使ったのを見た事が無い」
「じゃあ、逸子さん待ちって事だね……」コーイチが言う。コーイチのお腹も鳴った。「空腹は最高の調味料だそうだから、待つことにしよう……」
男性陣の空腹が限界に達した頃、ようやく女性陣がわいわい言いながらリビングに入って来た。
逸子は白いTシャツに膝上までの丈のジーンズ、アツコはピンク色の短いキュロットスカートに薄緑色の半袖のブラウス、ナナは足首まである丈の長い花柄のワンピースと、女性陣は皆、服装が違っていた。
「……あれ、チトセちゃんは?」コーイチが心配そうに言う。「また、着物を着たのかな?」
「ふふふ……」逸子が含み笑いをする。「チトセちゃん、入っておいで」
ドアをそうっと開けてチトセが入って来た。コーイチと同じ格好をしている。活発そうな女の子と言った印象で、とても昔の子とは思えない。
「チトセちゃんが、どうしてもコーイチさんと同じが良いって聞かなくってね」逸子が言う。「もっと可愛らしいのを薦めたんだけど、頑なでね。だから、こうなりました」
チトセは恥かしいのか、顔を真っ赤にして下を向いている。
「せめてもって言う事で、ヘアバンドはさせてもらったわ」ナナが言う。黒い艶っとした髪に赤いヘアバンドが似合っていた。「ね? 可愛いでしょ?」
チトセは下を向いたまま、とことことコーイチのそばに歩み寄った。
「うん、似合っているよ、チトセちゃん」
コーイチの言葉に顔を上げ、安心したようににっこりとするチトセだった。
つづく
ナナの指示のもと、タケルとタロウはリビングに荷物を運び、衣服は男女それぞれに分け、食料はリビングに併設されているキッチンへと運ぶ。タケルもタロウも手慣れたもので、コーイチが手を出す前に終わっていた。
女性陣は衣服の入った袋や箱を持って二階に上がる。二階にも風呂があり、そこは女性専用にするようだ。男性陣は一階の風呂を使用する。
「ボクとタロウさんは服のサイズが分かったから、ちょうどのものが買えたけど、コーイチさんとケーイチさんは、ひょっとしたらサイズが違っているかもしれないねぇ」
タケルはそう言って、大き目の紙袋をコーイチとケーイチに渡した。
「ありがとう、たぶん大丈夫だよ」コーイチは礼を言う。袋の中には、下着、ソックス、ジーンズのようなズボン。長袖のTシャツのような服が入っていた。「なるほど、未来の服一式ってわけだね」
「ははは、そんな大層なものじゃないよ」タケルが笑う。「デパートの特売品さ。女性陣はデパート内のテナントショップで、あーでもないこーでもないって選んでいたけどね」
「そうそう」タロウはうなずく。「待っている時間の方が長かった……」
「逸子さんもそうなんだよね。散々お店を見て回って、結局は最初のお店で見たものにするとかさ」
「ナナもそうだな。女性はいつの時代でも、そう言う点では変わらないようだね」
「……タロウ君」ケーイチがいきなりタロウに話しかけた。「お願いがあるのだが……」
「……なんでしょう?」突然の事にタロウは思わず身構える。「……ボクで出来る事なら……」
「その着ているつなぎ、譲ってくれないかな? 何となく動き易そうだし、汚れても平気そうだし。研究者向けの気がするのだよ。サイズ的にぴったりな感じだし」
「でも、ボクはずっと着っ放しだったから……」
「洗えば良いだろう? 」
「……分かりました、風呂の間に洗っておきます。……タケルさん、洗濯機はありますよね?」
「あるなんてもんじゃないよ、最新式のが鎮座ましましているよ。どんな衣類でもその洗濯機に入れれば、染みも汚れも落ち、新品同様に折りたたまれた状態で仕上がって来る。ボクも何度か使わせてもらったから、機能に問題はないよ」タケルは言う。「じゃあ、風呂の準備をしてくるよ」
タケルは、勝手知ったる他人の我が家と言った感じで準備をしに行った。
風呂は一人毎に湯が張り変わった。贅沢なものだとコーイチは思ったが、この時代では当たり前の事なのだろう。自分の常識で判断してはいけないと改めて思うコーイチだった。
男性陣全員の風呂が終わり、着替えも終わり、リビングのソファに座っていた。ケーイチは青いつなぎを着て満足そうだ。残りの三人は、同じズボンで、コーイチは黄色、タケルは緑色、タロウは茶色の色違いの同じ型の服を着ている。そこには特売品感がにじみ出ていた。女性陣はまだ現われない。色々とあるのだろうとコーイチは思った。
「食事の用意はどうなっているんだい?」ケーイチが言う、お腹がぐうと鳴っている。「とりあえず、何かあると嬉いのだが……」
「女性陣が作るって張り切っていて……」タケルが言う。タケルのお腹も鳴った。「すぐに食べられるものは無い状態で……」
「特に逸子さんが張り切っていましたね。久々にコーイチさんに食べてもらえるって言って」タロウが言う。「アツコは料理はあまり得意ではないんですよね……」
「ナナもそうだよ」タケルが言う。「現役の時は仕事一筋だったから、腹が減ったら出来合いのものを買って食べていたよ。台所には調理器具一式が揃っているけど、使ったのを見た事が無い」
「じゃあ、逸子さん待ちって事だね……」コーイチが言う。コーイチのお腹も鳴った。「空腹は最高の調味料だそうだから、待つことにしよう……」
男性陣の空腹が限界に達した頃、ようやく女性陣がわいわい言いながらリビングに入って来た。
逸子は白いTシャツに膝上までの丈のジーンズ、アツコはピンク色の短いキュロットスカートに薄緑色の半袖のブラウス、ナナは足首まである丈の長い花柄のワンピースと、女性陣は皆、服装が違っていた。
「……あれ、チトセちゃんは?」コーイチが心配そうに言う。「また、着物を着たのかな?」
「ふふふ……」逸子が含み笑いをする。「チトセちゃん、入っておいで」
ドアをそうっと開けてチトセが入って来た。コーイチと同じ格好をしている。活発そうな女の子と言った印象で、とても昔の子とは思えない。
「チトセちゃんが、どうしてもコーイチさんと同じが良いって聞かなくってね」逸子が言う。「もっと可愛らしいのを薦めたんだけど、頑なでね。だから、こうなりました」
チトセは恥かしいのか、顔を真っ赤にして下を向いている。
「せめてもって言う事で、ヘアバンドはさせてもらったわ」ナナが言う。黒い艶っとした髪に赤いヘアバンドが似合っていた。「ね? 可愛いでしょ?」
チトセは下を向いたまま、とことことコーイチのそばに歩み寄った。
「うん、似合っているよ、チトセちゃん」
コーイチの言葉に顔を上げ、安心したようににっこりとするチトセだった。
つづく
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます