シュタークスミス博士の大発明 9 ―あなたはわたし、わたしはあなた―

「大発明だ！」シュタークスミス博士は叫んだ。「これで研究がさらに充実するぞ」
　博士の発明したものは、等身大の姿見用の鏡のようなもので、ここに映し出された物が、その鏡の後ろから実物となって現われる装置だ。
「では実験をしてみよう」博士は装置の前に立った。鏡の部分に映し出された自分に話しかけるように続けた。「もう一人の自分か。きっともの凄い発明が次々と生み出されて行くだろうな。楽しみだな」　
　博士が装置のスイッチを入れると、鏡の後ろから、もう一人のシュタークスミス博士が颯爽とした足取りで出て来た。
「さあ、一緒に研究しようではないか！」
　博士は呼びかけたが、現われた博士はそれを無視して装置の鏡の前に立ち、スイッチを入れたった。すぐに三人目のシュタークスミス博士が颯爽と現われた。
「さあ、一緒に研究しようではないか！」
　二人目の博士が三人目の博士に呼びかけたが、三人目の博士はそれを無視して装置の前に立ち、スイッチを入れた・・・
「同じ人間だ！　考え方も同じなんだ！」
　博士がそれに気が付いた時には、博士は百人になっていた。