「ぐわっははははは!」
一際、大きな笑い声が上がった。その笑い声を残し、周りはしんとなった。笑い声の主はブサシだった。
「これはどう見てもリー・チェンの負けだな!」ブサシはすこぶる機嫌が良さそうに笑った。「だがな、オレは負けないのさ!」
ブサシは顔をサムライたちに向けた。
「おい、お前ら、あれを持って来い! 二つ用意するんだ」
ブサシの怒鳴り声で、数十人のサムライがサムライ街へ走った。それを見届けると、顔を花子に向けた。
「おう、お姉ちゃん!」花子にぐっと顔を近づける。花子はすごく嫌そうな顔をした。ブサシはお構いなしに続けた。「オレと勝負だぜ。オレが勝てば、オレが単独優勝って事だ」
「はぁ?」花子が呆れたような言う。「わたしに勝ったって、ヴァイオレットに勝った事にはならないじゃない? 単独優勝には成りっこないじゃない?」
「ほう……」ブサシはからかうように言う。「姉ちゃん、さては怖気づいたんじゃねえのか? さっきからの威勢の良さは口先だけって事なのかい?」
「……」花子むっとした顔をブサシに向けた。「……わたしが怖気づいた、ですってぇ……」
「そう言ったぜ」ブサシが、げひげひと笑った。「言い訳するってのは、サムライに有るまじき行為なんだぜ」
「でも、わたしは間違ったことは言ってないわ!」花子はブサシを睨みつける。「言い訳して、単独優勝にしたがっているのは、あなたの方じゃないの!」
「なんだとぉ!」ブサシの右手が刀の柄にかかる。「女だからって、容赦しねぇぞぉ!」
「まあ、待って下さい!」洋子が見かねて二人の間に入った。「二人とも落ち着いて下さい!」
洋子を間に置いて、ブサシと花子は睨み合っている。
「あのう……」洋子がブサシに話しかける。ブサシが洋子をぎろりと睨む。「……一つ確認しておきたいんですが……」
「なんでぇ!」
「そんな乱暴に言うことないじゃない!」
「うるせぇ!」
ブサシと花子はまた睨み合う。
「まあまあまあ……」洋子は二人をなだめる。「……で、ブサシさん、確認したいんですが、もしも、花子さんが勝ったら、花子さんの単独優勝と言う事ですよね?」
「何を言っておる!」ブサシは洋子に顔をぐっと近づける。「オレが負けるわけがない! なんたって、オレはリー・チェンのような力だけの男じゃない。『剛天流』の免許皆伝なのだぞ!」
……ちっとも話がかみ合っていないじゃないか。コーイチはため息をついた。
「あら、あなたがそんなことを言うんなら」花子は小馬鹿にしたように言う。「わたしは『十文字流』の免許皆伝よ!」
「ふん! そんな流派なんぞ、聞いたこともないわ!」ブサシも小馬鹿にしたように言い返す。「はったりか、弱小流派なんだろう?」
「そっちこそ、大きな刀をぶんぶん振り回すだけの、能無し流派なんでしょう?」
「な、なんだとぉぉぉ!」
「なによ!」
花子とブサシが睨み合う。火花散るような睨み合いにあきらめたのか、洋子はため息をつきながら二人から離れた。
「……ブサシ様、持って来ました……」
声がかかった。ブサシがサムライの方に向き直った。花子もつられて向き直った。
運ばれてきたのは、高さ三メートルは優に超える大きな釣り鐘だった。それが二つ並んでいる。ブサシは釣り鐘の前に立ち、表面をばんばんと叩いて見せた。
「どうだ、驚いたか?」ブサシは勝ち誇ったように花子に言う。「こいつは厚さが五十センチは超える」
「それで?」花子は平然として答える。「頭を丸めてお坊さんにでもなるの?」
周りから笑い声が上がった。ブサシが右手を刀の柄にかけると笑いは止まった。
「こいつで勝負だ!」
「どっちが良く鳴らせるかって勝負なの?」
「そんなんじゃねぇ……」ブサシはにやりと笑って花子を見た。「勝負ってのは、この釣り鐘を叩き斬る技で競うんだよ」
「……」
花子の表情が硬くなった。
一際、大きな笑い声が上がった。その笑い声を残し、周りはしんとなった。笑い声の主はブサシだった。
「これはどう見てもリー・チェンの負けだな!」ブサシはすこぶる機嫌が良さそうに笑った。「だがな、オレは負けないのさ!」
ブサシは顔をサムライたちに向けた。
「おい、お前ら、あれを持って来い! 二つ用意するんだ」
ブサシの怒鳴り声で、数十人のサムライがサムライ街へ走った。それを見届けると、顔を花子に向けた。
「おう、お姉ちゃん!」花子にぐっと顔を近づける。花子はすごく嫌そうな顔をした。ブサシはお構いなしに続けた。「オレと勝負だぜ。オレが勝てば、オレが単独優勝って事だ」
「はぁ?」花子が呆れたような言う。「わたしに勝ったって、ヴァイオレットに勝った事にはならないじゃない? 単独優勝には成りっこないじゃない?」
「ほう……」ブサシはからかうように言う。「姉ちゃん、さては怖気づいたんじゃねえのか? さっきからの威勢の良さは口先だけって事なのかい?」
「……」花子むっとした顔をブサシに向けた。「……わたしが怖気づいた、ですってぇ……」
「そう言ったぜ」ブサシが、げひげひと笑った。「言い訳するってのは、サムライに有るまじき行為なんだぜ」
「でも、わたしは間違ったことは言ってないわ!」花子はブサシを睨みつける。「言い訳して、単独優勝にしたがっているのは、あなたの方じゃないの!」
「なんだとぉ!」ブサシの右手が刀の柄にかかる。「女だからって、容赦しねぇぞぉ!」
「まあ、待って下さい!」洋子が見かねて二人の間に入った。「二人とも落ち着いて下さい!」
洋子を間に置いて、ブサシと花子は睨み合っている。
「あのう……」洋子がブサシに話しかける。ブサシが洋子をぎろりと睨む。「……一つ確認しておきたいんですが……」
「なんでぇ!」
「そんな乱暴に言うことないじゃない!」
「うるせぇ!」
ブサシと花子はまた睨み合う。
「まあまあまあ……」洋子は二人をなだめる。「……で、ブサシさん、確認したいんですが、もしも、花子さんが勝ったら、花子さんの単独優勝と言う事ですよね?」
「何を言っておる!」ブサシは洋子に顔をぐっと近づける。「オレが負けるわけがない! なんたって、オレはリー・チェンのような力だけの男じゃない。『剛天流』の免許皆伝なのだぞ!」
……ちっとも話がかみ合っていないじゃないか。コーイチはため息をついた。
「あら、あなたがそんなことを言うんなら」花子は小馬鹿にしたように言う。「わたしは『十文字流』の免許皆伝よ!」
「ふん! そんな流派なんぞ、聞いたこともないわ!」ブサシも小馬鹿にしたように言い返す。「はったりか、弱小流派なんだろう?」
「そっちこそ、大きな刀をぶんぶん振り回すだけの、能無し流派なんでしょう?」
「な、なんだとぉぉぉ!」
「なによ!」
花子とブサシが睨み合う。火花散るような睨み合いにあきらめたのか、洋子はため息をつきながら二人から離れた。
「……ブサシ様、持って来ました……」
声がかかった。ブサシがサムライの方に向き直った。花子もつられて向き直った。
運ばれてきたのは、高さ三メートルは優に超える大きな釣り鐘だった。それが二つ並んでいる。ブサシは釣り鐘の前に立ち、表面をばんばんと叩いて見せた。
「どうだ、驚いたか?」ブサシは勝ち誇ったように花子に言う。「こいつは厚さが五十センチは超える」
「それで?」花子は平然として答える。「頭を丸めてお坊さんにでもなるの?」
周りから笑い声が上がった。ブサシが右手を刀の柄にかけると笑いは止まった。
「こいつで勝負だ!」
「どっちが良く鳴らせるかって勝負なの?」
「そんなんじゃねぇ……」ブサシはにやりと笑って花子を見た。「勝負ってのは、この釣り鐘を叩き斬る技で競うんだよ」
「……」
花子の表情が硬くなった。
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